溺愛

「わっ!」
さらけ出したうなじにフッと息がかかり、ビクビクと身体を震わせた。
「何すんだ、この野球バカ!」
プリプリ怒る獄寺とは正反対に、ニヤニヤ笑う山本。
補習に飽きてきた山本が、前の席に座る獄寺に悪戯を仕掛けたのだ。
山本に掴みかかる獄寺の隣から、ツナがやれやれと喧嘩の仲裁に入る。
「獄寺くん、許してあげて?山本もちゃんと謝りなよ?」
鶴の一声ならぬツナの一声に、獄寺はパッと手を離し、ツナのそばに寄ると「10代目、どこかわからない所があったんですか?!」とプリントを覗き込む。
ある日の放課後、ツナと山本が補習を受けている所だった。
獄寺の後ろ髪はきゅっと結ばれていて、腕まくりした細っこい腕にはジャラジャラアクセサリーがつけられている。
暑いのか、第2ボタンまで開けられた胸元からは鎖骨が覗いていて、普段は隠されている真っ白な身体が何だか艶めいていて、誘っているかのように見えた。
そばにいるツナも山本も、思わずゴクリと喉をならしそうになった。
その瞬間。
ガラリと扉が開かれた。
ツナと山本は、扉からの痛い程の視線にビクッとして思わず獄寺から距離を取る。
そんな2人を訝しく思ったのか、獄寺が呑気そうに扉に視線を向けるとそこには学ランを肩にかけた雲雀がいた。
「雲雀、何か用か?」
「君たち、何してるの」
「何って、見たらわかるだろ。勉強だ」
「ふーん。でも、草食動物たちは教科書なんか見てるようには見えないけど?」
「あ?お前、何言ってるんだ?」
「ねぇ、隼人。ちょっとこっち来て」
強い視線に負けたように、獄寺はツナに「ちょっとすみません」と声をかけてから雲雀の元に行く。
雲雀は獄寺の髪のゴムを取り、腕まくりしていた袖はきっちり戻し、シャツのボタンは1番上まで留めた。
「いきなりなんだよ」
不満そうに口を尖らせる獄寺に、雲雀は「風紀が乱れるから」と言って教室から出ようとした。
が。
ツナと山本を見て、獲物を狙うかのように笑いながら、一言だけ付け足した。
「ねぇ、そこの草食動物たち。僕のものに手を出そうなんて考えてないよね?」
それだけ言うと、雲雀は興味をなくしたように、教室から出て行った。
ツナと山本は顔を見合わせて、はぁとため息をつく。
「獄寺くん、溺愛されてるんだね」
「あぁ、あの目本気だったのな…」
「何、内緒話してんだよ、野球バカ。まさか、10代目に俺の悪口を…」
ツナの元に走り寄ってきた獄寺に、ツナは慌てて「違う違う」ととりなす。
「雲雀さんがね…」
「雲雀がどうかしましたか?あいつ、意味のわからない事しますよね」
「獄寺くん…」
ツナはちょっとだけ雲雀に同情した。
あんなにわかりやすく妬いてるのに、何で気付かないのか。
「獄寺って鈍感なのな〜」
「何っ!俺のどこが!」
全く計算していない所が獄寺の可愛い所なのか。
これから先も、獄寺の天然さに振り回されるのは雲雀の方だと、ツナも山本もこの時確信した。


Happy end・・・





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