となりで眠らせて



「おかえりなさい」
玄関が開く。
窓から車の明かりが見えて、慌てて玄関の扉を開けたらしい。
「ただいま〜。あー疲れた…」
「ご飯、食べる?」
「あー、いいや。悪いな」
「ううん。俺は先食べてたし」
「そっか」
2人は廊下を歩きながら、そんな会話をしている。
特別ではなく、これが日常。

ランボが15歳になった時から、2人は一緒に暮らしている。
色々な条件が重なって、殆ど会えない日ばかりで。
ランボが押しかけて来たのだ。
初めは帰れと言っていた獄寺も、呆れたのか案外心地良かったのか、同じ家で暮らすのが当然のようになっていた。
「隼人さん、お風呂入る?」
「面倒だな…」
「俺が髪洗ってあげるよ?ね、入ろ?」
甘えた声。
獄寺に少しでもゆっくりした気持ちになって欲しいから、ランボは獄寺に風呂を勧める。
その気持ちは獄寺に伝わったようで、じゃあと2人は風呂場に向かった。
温かいお湯に浸かった獄寺の銀色の髪に、手で泡立てたシャンプーをつけながら優しくマッサージする。
「隼人さんの髪、綺麗だね」
「お前、俺の髪に触るの好きだよな」
「うん。触り心地良いんだもん」
それに、頭に触るのを許してもらえるのって信頼されてるみたいで嬉しいし。
ランボは、そう思いながら一生懸命マッサージを続けた。
泡を洗い流し、リンスを毛先につけている間に、獄寺はコクリと船を漕ぎ出す。
疲れてるんだね、隼人さん。
自分のためじゃなく、ボスのため、ファミリーのため頑張り続ける獄寺。
どんなに忙しくても、なるべくこの家に帰ってくるのも、ランボのため。
そんな獄寺を仕事で助ける事は叶わない。
だから、ゆっくりしてもらえるように頑張る、それが今のランボの目標。
注意深くリンスを洗い流すと、ランボは獄寺を湯船から引き揚げた。
バスローブを被せて、寝室のベッドに横たわらせる。
獄寺を膝の間に座らせて、ドライヤーで髪を乾かす。
細い髪を、ランボの指が梳く。
その優しさに、獄寺は微笑んだ。

「ありがとな」
「起こしちゃった?ごめんね?」
「いや、いつもありがとな」
「俺、隼人さんの役にたってる?」
不安げな声色に、獄寺はランボの方に顔を向けた。
「いつも助けられてるぞ?でもお前はそんな事気にしなくて良いんだ」
「俺だって隼人さんの役に立ちたいんだもん!」
「お前は俺の恋人であって、家政婦じゃないんだ。そうだろ?」
「そうだけど…」
獄寺はランボの頬を包み込んだ。
「お前がいるから生きていられるんだ」
獄寺は呟いた。
「あのさ、頼み事しても良いか?」
ランボは嬉しそうに頷いた。

「一緒に寝てくれるか?」
え?
「お前と一緒だと嫌な夢も見ないで眠れるんだ」
少しだけ寂しそうにぽつりと言った。
「うん!一緒に寝ようよ」
ランボは、いそいそとベッドに潜り込んだ。
「早く、早く!」
2人は仲良く並んでベッドに入る。
こっそり獄寺の手を握ると、ランボはへへっと照れながら笑った。
可愛い恋人に、獄寺の気持ちは和む。
「ランボ、おやすみのキスは?」
「えっと、じゃあ」
ランボは獄寺の頬に1つ、瞼に1つキスを落とした。

大人のキスはもうちょっと先に。
お互いの心音が同じリズムを刻むまで、そばにいて。

そんな事を願いながら、甘く優しい夜に抱かれて2人は眠りについた。




Happy end…


人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -