魔法を信じるかい?


そばにいても、手が届かない。
遠くにいる人。
ずっと恋焦がれていたのは自分だ。
プレイボーイを気取っているのも、嫌みでもいい、気にかけて欲しいから。
ねぇ、どんな言葉を紡げば心を近づけられる?

「ごめん、悪かった」
何度も謝るレンに、真斗は冷たい視線を一瞬向けるだけで無視を決めていた。
「なぁ、真斗。お願いだからこっち向いて?」
甘く掠れる声に、思わず絆されそうになる。
喧嘩…というか、真斗が無視をするキッカケになったのはレンが女の子を部屋に
招き入れた事だった。

先日までは、ほぼ日常茶飯事だったが2人が両思いになってからは、レンもきっ
ちり女の子の誘いを断り上手い具合に女の子達と距離を取っていた。
だが家関係の知り合いと縁を切る訳にはいかない。
どうしても、と言われしょうがなく部屋に入れたのだが、これまたタイミング悪
くリップサービスで女の子に囁いている所に真斗が帰って来てしまったのだ。
真斗も、もちろんレンの事を信じてはいる。
そうでなければ付き合ったりしない。
好きだからこそ、機嫌が悪くなるのだ。
だが、ある意味鈍感なレンはそれに気付けない。

そうして、無視し続ける真斗に、レンは実力公使に出た。
真斗の腰に腕を回して後ろから抱きしめて耳元で囁く。
「愛してる。俺には真斗だけ」
背筋が震えるような甘く切ない声に、真斗はぞくっと身体を震わせる。
「なぁ、真斗は魔法を信じる?」
今度は身体を引き寄せて目を見つめて言う。
「…魔法?いきなり話題を変えるな」
「変えてないさ。言葉って魔法みたいだと思わないか?」
「は?」
「気持ちのこもった言葉は魔法のように伝わる感じがするのさ。真斗には俺の魔
法、効かないのか?」
「そうやって誰にでも魔法をかけてきたんだろう?」
「いいや。真斗以外に使った事なんてないさ。レディ達もそんな事わかってるか
ら誰も俺を本気で好きになったりしない」
「……」
真斗はいつもレンの周りに集まっていた女たちを思い起こす。
確かに、レンが自分を見る瞳とは違う気がする。
レンは皮肉を言っていても、挑発的な事を言っていても、瞳は切なげな雰囲気で見てくる。
「俺は、お前の魔法にかかってたのか・・・」
小さく呟くと、レンは小さく微笑んだ。


なんだ、気持ちは伝わっていたのか。レンは嬉しくなって、真斗をぎゅっと抱きしめた。
真斗も、抗いはしなかった。
この時、レンが望んでいたように、2人の心はきっちり寄り添っていて。
いつもと違う優しい空気の中、2人は身じろぎもせずただぬくもりを分かち合っていた。




Happy end…


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