仲直りのキス



5月の爽やかな晴天と気持ち良い風。
本日はお出かけ日和。
ディーノはデートと言い張り、獄寺はただの買い物と言い張りながら、2人は陽気に誘われて街に出てきた。
少しはデートっぽくと、獄寺の腰に腕を回そうとする度に睨まれ、腕を力いっぱい叩かれる。
そんな不毛な戦いを続けながら服やアクセサリーを買い、なんやかんや言いながらも楽しくブラブラ歩いていた。

「なぁ、腹減らねぇか?」
密かにお揃いの時計に目を落とすと、午後2時になっている。
「何か食べるか」
「あ、あそこにカフェがあるぜ?」
「他に探すの面倒だし、そこでいい」
2人は目の前にあるカフェに入る事にした。

4人掛けのテーブルで、向かい合わせじゃなく隣に座るディーノに、「お前、あっちに座れ」と獄寺が言うと、「何でせっかく隼人と一緒にいるのに遠くに座るんだよ」とディーノは当然のように答える。
「この馬鹿!」
と叫ぶが、自分の声の大きさが注目を浴びてしまった事に、獄寺はしまった!と後悔する。

それでなくても、友人にも兄弟にも見えない、ましてや日本人にさえ見えない男2人組みなのだ。目立たない訳がない。これ以上目立たないようにと、大人しくメニューと睨めっこしていた獄寺に顔を近づけ、1つのメニューを一緒に見ようとするディーノに、獄寺はイラっとしこっそり膝を抓りあげた。
「痛っ!…もう隼人は悪戯っ子だな」
そう言ってヘラヘラ笑うディーノに、獄寺は本気で家にまで帰ろうかと思った。

「お前、ウザイ」

「ウザイって、酷いな…俺はただ隼人と仲良くしたいだけなのに」
「ふざけんな!」
「ふざけてなんかないぞ!隼人は何でそんなに嫌がるんだ!」
いつの間にか言い争いを始めた2人だったが、そんな時、隣の席のカップルがド派手な喧嘩を始めた。

「あんたのそういう無神経な所がムカつくのよ!」
「はぁ?俺がこんなに我慢してやってるのに」
「我慢してやってる?それはこっちの台詞よ!」
「お前…!」
とうとう女の方が、男を放り出して帰ってしまった。
男もさすがに気まずくなったのか、すぐに店を出て行く。

ぽかんとその様子を見ていたディーノと獄寺は、お互い顔を見合わせて目で合図する。

俺達はああなりたくないな、と。

他人を見て冷静になった2人は、顔を寄せ合ってメニューを再び見る。
それからは、和やかな雰囲気のまま遅めのランチを楽しみ店を出た。

ディーノと獄寺は、家路をゆっくり歩く。
「隼人が恥ずかしがり屋なの俺が1番わかってるはずなのにごめんな」
「いや、俺もせっかく気分良く出掛けてたのに悪かった」
「じゃあ、これで完全に仲直りな」
ニカッと笑ったディーノに、獄寺はそっぽを向く事で返事した。

「仲直りのキス…」

ディーノがそう言った瞬間、獄寺の目がつり上がり「また喧嘩するか?」と指をポキポキ鳴らした。

「じゃあそれは部屋に着いて2人きりになってから、な」
ディーノが耳元で囁く。

獄寺はディーノの顔を押しやってから、早足で歩く。
慌てて追いかけるディーノ。
きっと部屋に着く頃にはディーノは追い付き、夕焼け色に染まった部屋で仲直りのキスは実行されるだろう。
素敵な休日の締めくくりに。




Happy end






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