守護者



昨日は確か、獄寺の家でお泊まり会が行われたはずだった。
ツナと山本と、何故か雲雀まで参加しての酒盛り。
この年の男が集まったら始まるのは、恋バナ。
しかし、全員が獄寺に惚れているのだから、3人は必死に口説いていた。
ただ獄寺は、殺気以外にはとても鈍かった。
だから3人の気持ちは、全くといっていい程、本人には伝わらなかった。
そんな奇妙な酒盛りだった。


ここは、自分のベッドで微かに目を開けると、見慣れた天井が見える。
まだ完全に目は覚めていない。
傍らにある温もりが、もう1度優しい眠りの中へ誘う。
獄寺は睡魔に負け、また眠りについた。


そして、何時間か経ったのち、獄寺が二日酔いで痛む頭を抱えて目を覚ますと、心地良く眠りを誘っていた温もり達が自分を囲うようにそばにいる事に気付いた。
自分の相棒である瓜が胸の中に、山本の相棒である次郎が背中を陣取っている。
そして、首の後ろに感じるモフモフしたたてがみは、ツナの相棒であるナッツだろう。
頭のてっぺんあたりに遠慮がちにいるのが、雲雀の相棒である恥ずかしがり屋のロール、頬を優しくつつくのはヒバード。
そして天井を音もなく静かに飛んでいるのは、小次郎のようだ。
獄寺は、自分のこの状況が掴めず、昨夜の事を思い出そうとしたが、しこたま飲んだ口当たりの良いワインのせいで、全然思い出せない。
だが、身体の向きを壁側から部屋側にかえた瞬間、思わず頭痛も忘れて飛び起きた。

なんだ、この惨状…!

1人用の小さな机の上には倒れたグラスに空になった酒瓶。
もちろん床にも無数に転がっている。
だが、もっと驚いたのは、床に転がる男達。
ツナに山本、雲雀なのだが、皆、顔に鋭い爪でひっかかれた傷痕が無数に散らばっていた。
上から何も被るでもなく転がっている3人がどうしてこんな風になったのか、獄寺の記憶にはこれっぽっちもなかった。

「昨日、一体何があったんだ…」



昨日、1番先に酔いつぶれたのは獄寺だった。
手で目を擦りながら「眠い…」と呟き、1人ベッドに潜り込んだ後、ツナと山本と雲雀の目がキラリと光った。
獄寺の隣で寝ちゃえ!3人共がそう思った。
1番早かったのは、山本だった。
獄寺の被っている布団の端を捲り、隣に滑りこもうとした瞬間、トンファーが風をきった。
「わっ」
「ちょっと君、そこは僕の場所だよ」
山本のいつもの優しげな表情が、一瞬でキツくなる。
「雲雀こそ、何言ってるのな」
山本をベッドから引きずり出した雲雀と、山本が一触即発の睨み合いをしている間に、ツナがゆったりと獄寺の横に入ろうとする。
それを目ざとく見つけた2人は、有り得ない程の連携プレーで、ツナをベッドから引きずり落とした。
「油断した間に何やってるの、君…」
雲雀の目が獲物を見つけたように爛々と光り、山本の冷たい視線がツナを射抜いた。
「いくらツナでも、譲れねぇのな」
「でも、獄寺くんは俺の右腕なんだから、俺が横にいるのが当然でしょ」
ツナは強気で言い放った。

3人が睨み合いを続けているとも知らず、獄寺は気持ち良く夢の中。

誰も止めるものはいないと思っていた3人に、思わぬ伏兵がいた。
そして、3人の顔に伏兵の凶器が飛びかかったのだ。

「にょああ!」

バリっと小気味良い音がして、痛みと驚きに3人は膝をついた。
その後、遊んでいると勘違いした次郎が、3人の背中の上をダンダンと飛び跳ねた。
主人に逆らえないロールと、臆病者のナッツは加わらなかったが、主人を助ける事もしなかった。

ぴょんといつもの定位置である獄寺の胸元で丸くなった瓜に続き、自分達の主人から大好きな獄寺を守るかのように取り囲むボックス兵器達。
動物に優しい獄寺は、ボックス兵器達に取ってもアイドルなのだ。
そして、獄寺のベッドの中だけは、平和な夜になった。


まさかそんな自分の隣争奪戦があったとは知らない獄寺は、床に転がっている3人を眺めて呆然とするしかなかった。

まさか、自分の貞操がボックス兵器達によって、守られたとは思いもしないまま。




Happy end…?







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -