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▽短い雰囲気小話



夕陽、赤い、オレンジの。

繋ぎもしない手で翳して、ああ、空が、紫。

「置いてくぞ」
「いい」

自転車の、荷台に腰掛ける自分を落とすことをしないのに、こいつは、そう言う。

明日になれば、他人かもしれなくて、線を引けば、どうにか如何様に。
昨日は、このままだった。

「彼女出来た」
「あっそ」
「別れた」
「早いな」

ずる、ずる。がさがさ、がたん。
ゆっくりな速度に足を引っ掛けて、靴底が磨り減った。

「知ってる?」
「何が」
「昨日の今日が明日で明日の今日は昨日だって」
「へぇ」

絵の具、ぶちまけた色に混ざる暗い水が、広がる。
混ざれば、変な、黒い。

「でも」
「なに」
「今日は、今日でしかない」
「全部そうだ」
「うん」

そうして、話は終わる。ことを、繰り返す。

今日の、今日。

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