コトリ、と | ナノ


無造作に座る尚人と、俺と、鈴さん。誰も切り出せないで、時間だけが少しずつ過ぎていく。



「大輔はね」

数分経った頃。ぽつり、いつもより低く小さい声で、鈴さんが言う。

「良い子だよ」
「……、わかってる」

尚人が、俺を見て答える。
俺は、誰の顔も見れないでただ顔を隠すように俯いていた。

「やっぱり、鈴が来てたのか」
「うん、合鍵で、入った」
「………まさか、二人で来るとは、思わなかった」
「うん、二人で、居たからね」

うなだれて、話を聞いていただけの俺の肩に、鈴さんの腕が回る。そうすると微かに尚人が動いた気がして顔を上げた。

「あ、」
「大輔」

目が合うと、優しいいつもの声で、俺の名前を呼ぶ。

「……な、に」
「俺が話したら、信じる?それとも鈴が話したら、信じる?」

何の話かわからない。けれど、それは試されているんだろう。どうこの先進んでいくか、そんなことを。

でも俺はずるいから、凄く、ずるいから。

「……ふたりから、聞きたい、って言うのは、」
「俺は構わない、鈴は?」
「…ま、どっちに聞いても話は一緒だからね」

真実であるなら、答えは違わない。それなのに、少しだけずきりとした。自分が心底醜いと思った。共有されている秘密に、当たり前のことなのに、嫉妬している。
そんな顔を見られたくなくて、俺はまた、誰も見ず目線を下に落とした。

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