指先から伝わる君の温もり
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「君も物好きですよねー」

ボクの髪に優しく触れるその温もりに、目を閉じながら小さく呟く。

「どうして?」
「だってボクの髪なんて弄っても別に楽しくないでしょうに」
「あら、そんなことないわよ?金とピンクの髪なんてそうそうお目にかかれないじゃない。それになにより、レインの髪ってさらさらしてて触り心地いいのよね」
「まあ撫子くんが楽しいならボクも構いませんけどねー……っ痛!ちょ、痛かったですよー」

不意に髪をぐいと引っ張られて、思わず撫子に抗議する。あまりの痛さに少し涙が滲む。

「ご、ごめんなさい。……泣くほど痛かった?」
「撫子くん、面白がってません?」
「そんなこと…ないわよ?」

少し笑みを含んだ声で問われて、じと目で彼女の方を見れば、慌てて真面目な顔をしようとしていたが、目元や口元はどうしようもなく緩んでいて、笑っていたのは隠しようもない。

「ほら、前向いて。そろそろ出来上がると思うわ」
「?何が出来上がるんですー?」
「ふふ、出来上がってからのお楽しみ、よ」

とても楽しそうな笑顔に、若干の不安を覚えないでもなかったが、撫子の指先がもたらす優しいぬくもりに、レインは大人しく前を向いて目を閉じた。

* * * * * *


「レイン」

ボクの名前を呼ぶその声に、何時の間にか眠っていた僕は目を開ける。

「おはよーございますー。どうやら眠っちゃってたみたいですねー。すみません」
「別に良いけど。もしかして普段あまり寝れてないの?」
「おや、どうしてそう思うんです?」
「だって随分ぐっすりと眠ってたんだもの」
「まあ、キングは人を酷使しますからねー。否定はしませんが」

それでもきっと、他人の前でこうも警戒せずぐっすりと眠れたのは撫子だからだろう。

「さて、そろそろお仕事に戻りましょうかー」

ずっと同じ姿勢でいたせいか、強張っている身体をぼぐすようにぐいと伸ばしていると、ドアが勢いよく開く。

「鷹斗?」
「あれ、キングじゃないですかー」
「レイン、ここにいたのか。随分探しちゃったじゃないか…って、どうしたのその髪。随分可愛らしくなってるね」
「は?何の事です?」

可笑しそうに笑みを浮かべる鷹斗の言葉に怪訝に思いながらも、先程まで撫子が触れていた髪に手をやると、その違和感に気付いた。

「……撫子くん?」

思わず問い掛けるような視線を撫子に向けたのも仕方ないだろう。

「可愛いわよ、その三つ編み。なかなか似合ってるじゃない」
「笑いを堪えながら言われてもいまいち信憑性に欠けるんですがー」
「まあまあ良いじゃないか。俺も似合ってると思うよ」

にこにこと笑顔を浮かべる二人に、呆れたように溜め息をつくと、その動きに合わせて左右の三つ編みもぴょこぴょこ揺れて、ますます溜め息をつきたくなった。




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6月のラブコレにて無料配布したフリーペーパーのSSです。個人本の原稿、間に合わなくてですね、急遽フリペに変えたのです。次のイベントでは無事個人本出せると良いなあ…



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