今日は月曜日。いつも六時頃にあいつが部活動を終えて校舎から出てくる。六時というと、俺たち野球部もちょうど休憩時間で(九時までぶっ通しはさすがにキツイ)、その合間に俺は昇降口から正門の途中にある水道のところでそわそわしながら時間を潰すのだ。今日とて例外ではない。なんとかあいつと接点を作りたい、って。声掛けたい、って。でも未だに成果0。サラリーマンなら業績不振でクビになってもいいくらいのもんだ。



特にやることもないので、無意味に手を何度も洗ったりする。うはー、水が冷たくてきもちー。すっかりいい気分になっていると、向こうからあいつが歩いてきた。もう帰るらしい。

よし、ここまではいいぞ。順調だ。問題はここからだ。
あいつがこっちに歩いて来てるとわかった瞬間、水道の陰にしゃがみ込んで隠れてしまった俺自身に言い聞かせる。


今だ!早く!立ち上がって!話し掛けるんだ!言葉なんてなんだっていい!行け!行くんだ、俺!行け!行け!動け俺の足!働け声帯!















「はーい!みんなー、休憩終わりだよー!大縄跳びやるからこっちに集合ー!」


モモカンの通る声が響く。
その声に驚くのは俺一人だけ。そう、この辺りにはもう誰もいない。



あいつも。




また見逃した/(^o^)\