いつものように連絡も入れず、臨也の家へと遊びに行く。ドアは開いていたので、きっとリビングにでもいるのだろう。部屋に入ると、案の定ソファに座る黒髪が見えた。

「臨也ー?遊びに来たよー」

そう声をかけると、臨也だと思わしき人は勢いよくこちらを振り返った。肩くらいまでの髪をなびかせて。……ん?なびかせて?肩までの髪?


「あっ、ごめんなさい!てっきり臨也だと思って…」

目の前にいる女の子は臨也みたいな黒髪に、臨也みたいな服装をしていた。唯一違うのは、スカートをはいてることぐらいかな。

「もうっ、違いますよー!甘楽ちゃんびっくりしちゃったじゃないですかー」

「えと…臨也のお客さん、ですよね?臨也は今どこに?」

「い、臨也は今ちょっと出てるんです!」

「そうなんですか(お客さんほっぽって?)。…甘楽さんは、臨也とどういう…?」

「あ!心配しないでください!別にやましい仲じゃなくて、甘楽ちゃんは臨也のいとこなの!」

「いとこ?どーりで似てるわけだ…」


その後、そのまま甘楽ちゃんと話し込んだ。ジャケットについて聞いてみると、過去に臨也がプレゼントしたものだそうだ。全然趣味じゃないけど、楽だから着ているとか。私も今後臨也から贈られたら嫌だなーとか思ったり。臨也のチャットでの名前って、たしか甘楽じゃなかったっけ?って言ったら「私の名前勝手に使って口調まで真似してるんですよー?もう、ぷんぷん!」…だそうだ。甘楽ちゃんはちょっとイタいところもあるけれど、それ以上に可愛くていい子だった。臨也がもし女の子だったら、こんな風に楽しくおしゃべりできたのかな?って冗談で言うと、なぜか甘楽ちゃんは少し悲しい顔をした気がした。


「名前ちゃんは、臨也のこと、嫌いなの?」

「え?」

「臨也はね!名前ちゃんのことすごく好きだよ!」

「えー、嘘だー。たしかに、友達としては多少好かれてるのかもしれないけど」

「違うよ!名前ちゃんが思ってるより、臨也は名前ちゃんのこと大好きなんだよ!」

「そう、なのかなあ…(甘楽ちゃんやけに必死)」

「……まあ、これはあくまで甘楽ちゃんの意見なので、また今度臨也に聞いてみてくださいよ!ね!」

「うん、わかったよ。…あ、やばい。もう帰らないと」

「そうなんですか?せっかくもっと名前ちゃんとおしゃべりしたかったのに〜。ざんねーん」

「また今度遊ぼうよ!私も、もっと甘楽ちゃんと仲良くなりたい!」

「…っ!…名前ちゃん…可愛い…」

「へ?何か言った?」

「ううん!なんでもなーい!じゃあまたね。名前ちゃんっ」


そして甘楽ちゃんに手を振って玄関へと向かう。結局臨也帰ってこなかったな。結構長く甘楽ちゃんと話してたのに。すると、目の前のドアが開いた。


「あ、波江さん。いらっしゃい」

「あら、名前ちゃん。来てたの」

「臨也今外出中みたいです。中にお客さん残して」

「お客さん?」

「はい。すごく可愛い女の子で、臨也のいとこだとか」

「ふーん…いとこ、ね…」


波江さんは意味深に微笑むと、廊下の先に消えていった。私は気になりつつも、そのまま臨也の家をあとにした。









男子禁制



(ふーん、女装しているのを見られて、そのまま甘楽になりすましたってわけ。あなたも中々の変態ね)
(…しょうがなかったんだよ。ずっと裏声で話してたおかげで喉痛い…)