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「お前の事が好きだ」





少し、時を前に戻していただきます。


ただいま放課後真っ最中。

帰宅部の方々は既に家路へと向かい、残っているのは部活動生や先生方、補習生とかだけであろうと思う。

帰宅部である私はと何をしていたのかと言うと、図書委員の仕事で遅くまで残っていた。

そして教室に忘れ物をしたので戻ってみれば。


同じクラスの櫂トシキ君がいた。


「(うわぁ…きまず…)」


彼とは一度も話したことがないので二人きりとなっているこの状況は非常に気まずい。
とりあえず早く用を済ませようと足早に自分の席に向かう。

そのときだった。


「…白河」


名を呼ばれた。
誰に、といっても一人しかいない。


「な、何?」


彼は普段、三和君以外と話している姿を見たことはない。
一匹狼タイプなのかな?と思っていた。
そんな彼が話しかけてきたのだから、もちろん緊張してしまう。


「………」


「え、と…櫂君「お前の事が好きだ」


「…は?」




そして現在に至る。





え、ちょ、え?
好きって…好意を示すときに言う言葉?
いやいやそんな。だって一度も会話したことないよ?私達。
そんな相手にいきなり好きだなんて…。


「白河?」


「あ、ご、ごめん。ちょっと混乱しておりまして…」


どうしよう。
櫂君は顔が整っていて、しかもクールという理由で女子からの人気が高い…らしい。ちなみにこれは友人からの情報である。
でも別に興味ないんだよなぁ……顔が良くも悪くも、結局性格が悪いならば嫌だし。


「…だめか」


「いっ、いや!だめとかじゃなくて…」


しまった。
シュンとしている櫂君が可哀想でつい…。


「その、ほら、私達まだお互いの事知らないからさ。だから、うん」


私の言葉に櫂君は少し考える素振りを見せる。


「……わかった」


答えが出たようだ。
櫂君は真っ直ぐ私を見つめながら、


「それならこれから知っていけばいい」


「ん?」


ありり?私の予想とは真逆の言葉言ったよこの子。


「だから、まだ返事は出さないでほしい」


櫂君の目は真剣だった。
だからだろうか。


「…わかった」


断ることができなかった。




ハジマリは突然に。





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