「ねえアルゴス」
「何でしょう」
夜、私は毎日の日課でナマエ様の部屋で本を朗読していた。
いつもなら読み終われば既に眠っているナマエ様の姿があったが、今日は違った。
「アルゴスは空を見たことがある?」
「空、ですか」
「うん。私は城から出たことがないから…。本では空は青くて、夜になると黒くなるって書いてあったけど、本当?」
「ええ。本当ですよ」
「やっぱりそうなんだ!」
私が肯定の言葉を出せば、ナマエ様はキラキラと目を輝かせ此方を見ていた。
「私も見てみたいなぁ…」
「ナマエ様…」
外の世界は私たちが見回っているとはいえ、危険な奴等がウロウロしている。
「…といっても、無理な願いだけどね!あはは…」
「…そんな事ありません」
「え?」
「絶対、ナマエ様にも空を見せます。私が、絶対に」
ナマエ様は困惑した表情だったが、私の言葉を聞いた後、微笑んで右手を出し小指を立てる。
「約束だよ。私、待ってるから」
「はい!」
互いの小指を絡め、小さく笑い合った。
いつか綺麗な空を。
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