ピンポンピンポンと何回もチャイムを押され、はぁとため息をつき仕方なく水風呂から上がった。
「ハル君おはよー!」
玄関を開けてやれば、へらっとだらしなく笑う幼馴染みがいた。
「また水に浸かってたの?ハル君本当に水大好きだね」
俺の姿を見て顔を赤らめたり恥ずかしがったりする様子は微塵も見られずへらりと言った。
「何しに来たんだよ」
「迎えに来たんだよ!」
何故か仁王立ちをしてふんっと鼻を鳴らす名前に呆れるほかなかった。
「…まだ6時も回ってないけど」
「あれ、学校って7時からじゃ…あれ?違った?」
「………はぁ」
本当、昔から全く変わらず抜けている。
「ご、ごめんねハル君…」
「別にいい」
「良かった!じゃあお邪魔しまーす」
「っおい、」
勝手に入るな、という言葉を聞かず名前はずかずかと入って行った。
またため息をつき、仕方なく家の中に戻る。
「水着エプロンって新しいね!」
「……」
俺が鯖を焼く隣で名前は俺の格好を見て目を輝かせた。
無論、無視する。
「二つあるって事は…私も食べていいの!?」
「………さっきから腹の音がうるさかったから、仕方なくだ」
「えええ鳴ってた!?」
恥ずかしー!と腹を押さえて頬を赤らめる名前を可愛いな、と不覚にも思った。
すぐ後、ピンポンとチャイムが鳴った。
「私出てくるよ!」
「ああ」
名前は小走りで駆け、途中止まり「ふふっ」と小さく笑う。
「何だ」
「いやー、結婚したらこんな感じなのかなと思って」
「っ!?」
また小走りで駆けていく名前の後ろ姿を見送りすぐ鯖に視点を変えた。
身体中、特に顔が熱くなったのはきっと鯖を焼いている熱気のせいだ。
不意打ちすぎる。
(おはようハルって、またそんな格好!?)
(まこっちゃん驚きすぎだよー)
(逆に名前は何で平気なの!?)
(だってずっといるんだからハル君の体なんて見慣れてるよ)
(……色々誤解生むような言い方やめろ)
*
本命は凛ちゃんです(