目を覚ますと、そこには田中がいた。
「え?」
ただいるのではない。
忍は輪姦のあといつもどおり保健室に逃げ込み、疲労のあまりベッドを一つ借りていた。
そしていつの間にか眠ってしまい、目が覚めたらそこに田中がいたのだ。
忍の寝るベッドに。
忍の隣で、田中はすやすやと寝息をたてていた。
(ベッド間違えたのかな)
でなければ田中が忍に近づくはずがない。
忍はこの副会長に嫌われているのだから。
同じベッドに寝てると言っても忍本人には指先すら触れず、空いたほんの小さな隙間に胎児ように身を丸めて眠っていた。
(よく寝てるなぁ)
思わずその傷んだ金髪に触れそうになり、慌てて手を引っ込める。
起こしてはまずい。
(こんな顔もするんだ)
いつもみたいな何を考えているかわからない無表情ではない。
それは母の隣で眠るような、あどけなく、無防備な子供の顔。
(いつもこうなら可愛いのに)
忍は口元を少しだけ綻ばして、隣で眠る田中を起こさないよう静かに部屋から退出した。
保健室の秘め事