「お前のことが好きだ」

「嘘だ」

「愛してる」

「嘘だッッ!!」



今更そんなこと言われたって。

突然カンナの部屋に呼び付けられたと思ったら、白々しい愛のコクハク。

そんなの、俺の心に響くはずない。


はずなのに



カンナの表情があまりにも真剣だから。



「………どうしたら信じる?」

「は、信じられるはずないだろ。まぁ強いて言うなら『お前のために死んでもいい』って土下座して言ってみろよ」



土下座なんて、プライドの高いカンナができる訳がない。ふふんと鼻で笑ってみせる。


目の前の人物を誰よりも知っていた。


だから



(信じられない)



なんで、こいつは床に頭を擦り付けてるんだ?



「……こんなことで許して貰えると思ってない。だけど、お前が信じるっていうならいくらでもする」

「ば、ばかじゃねぇ、の…」

「『お前のために死んでもいい』」

「……ッッ!?」



放たれた言葉と共に、顔を上げたカンナの強い視線がこちらを射抜く。

これは、『決意』なのだろうか。

俺は言葉を続けることが出来なかった。

優しく微笑むカンナは、あの頃と同じ――…




「お前があの二人に言わせられなくても。そのときは、」




「俺が一緒に死んでやる」




夢が叶わなかったことが悲しかったんじゃない。

独りで。

俺一人だけ死んで、でも俺を殺した奴らには俺にはない未来を歩んでて。


それが無性に寂しかった。



「もう二度とお前を一人になんかしない」



立ち上がったカンナの指で目の縁を掬われて、初めて自分が泣いていることに気づいた。



「う、うわぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁんッッ」



怖かった。

生きてるか死んでるかもわからない空中をさ迷うような不安定な状況で。
刻々と迫り来るタイムリミット。

無我夢中でカンナの身体に抱き着いて、泣きまくって、息が苦しくて。


俺は生きてる。


俺は、もう独りじゃないんだ。


今まで溜まっていたものがせきを切ったように溢れ出した。



「伸二、伸二、おれ…ッ」

「俺の人生なんて、お前さえいればそれでいいって言っただろ?」

「うん…ッ、おれも、世界が終わるとき、伸二と、伸二さえいればそれでいいって思ってた…!!」

「………そっか…俺達、すごい遠回りしてたんだな」



やっと辿り着いた。


その言葉が声に出るか出ないかのうちに貪るように口づけを交わした。


互いの存在を確かめ合うように





□□□




「あ、あ…ッ…」

「たく、お前は俺と別れてから何人此処にくわえ込んだんだよ」



淫猥な水音がやけに頭に響く。

伸二の部屋で行為に及ぶのは2年ぶり。

その二年間で色々なことがあった。


アザミと付き合ったし、輪姦もされた。


全てを知るカンナの質問に答えられる訳もなく。



「しらな…ッ…伸二こそ、俺の他に何人抱いたんだよ?」



向こうだって耳が痛いはず。
質問を質問で返すなって言われるかと思ったけど、カンナは眉を少しだけ下げて笑っただけだった。



「……いない」

「え?」

「俺は、お前だけ」

「……ッッ」



下から勢いよく穿たれて、頭が真っ白になる。

伸二の熱だけが前と変わらずあっつい。


なんで

なんで

なんで


どうして俺達こうなっちゃったんだろう。


戻りたいのに。


戻れないのに。



幸せだったあの頃。




多分、今の俺も幸せだ。




君が一緒にいてくれるから




終わるなら、共に








Dearest



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