「どっかに連れてって、って、九条川が言ったんです」
 ぽつりと、まるで独白のように彼女は唐突にそう言った。置いてあったグラスに石膏のように色の悪い肌で包まれた指をぶつけ、久留米は自嘲的に笑う。肌の色を裏切らずどこかぎこちない動きでその指はそのままグラスを倒し、注がれていた透明な水がテーブルを伝い、重力に逆らうこともせず床に滴り落ちる。
 本来ならば手なり布なりでそれをせき止めなければいけないのだろうけれど、生憎今の私にそんな余裕があるはずもなく、彼女から目を離すことができずに床ばかりが水に浸されていく。でも、それも致し方ないというものだ。だって、ここに来て初めて
彼女が九条川さんのことを話したのだ。目を離せるわけがない。
 私は極力なんでもない風を装って中身が全てぶちまけられたグラスを起こし(勿論その間も久留米から一時だって視線は外さなかった)、ゆっくりと瞬いた。
「どこに?」
 疑問符がついているというのに語尾の上りが小さい。
 疑問というよりただ単にその言葉を落としただけの私には目もくれず、久留米はぽたぽたとテーブルから落下し続ける水を薄ぼんやりと見つめている。きっとその目は水など映しておらず、もっとずっと、遠くのものを見ているのだろう。
「連れてって、っていうより、あれは逃げようって意味だったんでしょうけど」
 それだけ吐き出して、久留米はまたうっそりと口を噤んだ。こちらの疑問など知らんふりで、彼女はじっと、視線だけで水を蒸発させようと躍起になっているかのごとくただただ透明な水を凝視し続けた。
 こうなった彼女はもう何を話しても何を訊いても無駄だ。そのことはこの一ヶ月で嫌というほど分かっている。
 軽く首を振ってようやく久留米から視線を外す。
 少し逡巡してから、私はいつものようにカルテに「異常なし」とだけ記入した。


 久留米がこの精神病院に転がり込んできた、というより放り込まれたのは一ヶ月前のことだ。なるべく極秘に、情報が漏洩しないように警察に連れて来られた彼女は、人間が持つべきものを母親の胎の中にでも綺麗に包装して置いてきたかのように浮世離れしていた。
 決していいとは言えない、それこそ冒頭で述べた、石膏のように今にもひび割れそうな肌色で肉塊を包んだ彼女は、初めて見る精神病院を興味深げに見つめてから、なんだか外見だけは普通の病院と変わらないんですね、と意外そうに笑った。
 その笑みはどう見ても、この年頃の女の子が日常でするそれと全く変わらなくて、うすら寒いものを覚えたのを今でも覚えている。
 この、一見普通の、普遍的な女子高生でありそうな彼女が人を一人殺して、尚且つその死肉を貪ったなどと誰が信じるだろうか。こんな、どこにでもいそうな、普通の見てくれをした女の子が。
 そう、見てくれだけは、外見だけはそうだ。この病院と同じ、外見だけはどこにでも転がっていて、誰かに石ころのように蹴り飛ばされてどこかに飛んで行ってしまいそうな風体。
 だがその内面は世間とは絶対相容れない。そのことを自嘲して、彼女はこの病院を笑ったのかもしれなかった。
 久留米が事件を起こしたのは、私の病院に来る一年前のことだった。私が住んでいる国、県、町で起こった、距離的にはとても身近な事件。
 しかし当時は見たことも会ったこともない女子高生が友達である女の子を殺して、あろうことか食人したというセンセーショナルな情報を沈痛な面持ちでニュースキャスターが神妙に告げたとしてもたかが知れている。へえ、そうなんだ、最近の子は怖いねー。それで終わりである。
 この職業柄おかしな人種(表でこう表現するといろいろ面倒なことになるので、実際に口に出す際には精神に異常を来たしている人たち、と称している)と会うことはしばしばあるし、むしろそういった人々を矯正または治療することが私の仕事なのだけれど、私が精神科医として働き始めたこの十年ほどで実際にカニバリズムの性癖を持ち合わせた人間を聞くのは初めてだった。
 ブラウン管の向こう側、と割り切っていたその食人狂と対面したのは、その事件が忘れられつつある半年前のことだった。見てくれだけは華奢で無邪気そうな可愛らしい女の子が、半年前、突如として大人に連れられてやってきたのだ。
 可愛らしい女の子。確かにそうだ。本当に、そう、外見だけは。
 だがそこには修正しようのないほどのずれがある。警察に渡された資料に一通り目を通して、そして目の前の、恐らく初めて訪れた精神病棟をきょろきょろと見回す久留米を見て持った意見はまずそれだった。
 殺人を犯し食人に手を出した久留米は初めて袖を通す病院服に「なんだか医者にでもなった気分です」とはしゃぎ、隔離室に通すと「本当にトイレに扉ないんですね。先生のえっち」と笑って見せた。まるで自然なくらいの、不自然な感情。
 それを見て、ゴキブリが肌の舌を這いずり回っているかのような感覚に陥る。自然な不自然。なんだこいつ。なんなんだこいつは。宇宙人を相手にしている方がまだましだ。今まで散々鬱病やら統合失調やら解離性同一性障害やら、そういったものを患った人とは関わってきたけれども、ここまで人に不快感を与える奴とは出会ったことがない。
 どうにも警察もお手上げだったらしい。
 今の時代、子供が凶悪犯罪を引き起こすのは珍しくもないがこの子は異例だったという。自分で警察に連絡して、自分で捕まりに来ておきながら事件のことはまるで貝になったかのようにだんまりだったのだ。
 その代わり当たり障りのない質問には笑顔で答える。何度も警察が脅迫じみたことをしても、彼女は殺した相手である九条川さんのことは一言たりとも話さなかった。
 終いには警察の方が気味悪がってここに彼女を放り込んだということだ。
 まあ、懸命っちゃ懸命な判断だ。精神に異常をきたした人間を真正面から理解しようとすると、自分も段々おかしくなる。感染症みたいなもんだ、精神疾患なんて。
 重度の精神疾患患者が入る隔離室の様子を見ても久留米はけらけらと面白そうに笑っているだけだった。
 社会見学にでも来ているかのようにはしゃぐ彼女は客観的に見たら異常そのものだ。テレビやラジオはおろかベッドすらないベージュ色で染め上げられた部屋に久留米はただ一言、暇になりそうですねえ、とだけぼやいた。
 いやそこなのかよ。


 カルテに鉛の芯を滑らせていた私に、久留米は自嘲めいたように笑った。九条川さんの話題を出すと一瞬で表情筋が死滅する彼女にしては異常な光景だ。なんの心境の変化があったというのか。夢に九条川さんが出てきでもしたのか?
「私の学校、っていうかクラス、席順が番号順だったんですけどね、ほら、くじょうがわ、と、くるめ、で私、九条川の後ろの席だったんですよ。だから授業中も、HR中も、いつでもその背中を見ることが簡単にできた。その薄い背中を、私はずっと見つめ続けていたんです。真面目に授業を受けて、先生の話を聞いていて。すごく可愛かったんですよ、あいつ」
 今までの黙秘が嘘だったかのように、久留米はつらつらと流暢に九条川さんのことを話し始めた。まるで新しい玩具を手に入れた童女のように純粋に九条川さんのことを話す久留米は、うっかりすると本当に普通の女の子に見えてきてしまってくらりと眩暈が私を襲う。
「あいつがなんで逃げたかったのか本当のことは知りません。でも九条川もいろいろ大変だったと思うんですよ。親はなんで離婚しないのか不思議なくらいの不仲っぷりだからそのことだったのかもしれないし、もしかしたら勉強だとか部活だとかで悩んでいたのかもしれない。人間関係に亀裂が入って憂鬱になっていたのかもしれないし、もっと他の、私なんかが見当もつかないようなことで俯いていたのかもしれない」
 でも、そんなことはどうでもいいんです、九条川が何に悩んで、何で苦しんで、何を憂いていたかなんて。
 久留米は朗らかににっこりと笑い、テーブルを濡らしていた指を弄っていた手をそっと宙に持ち上げた。
「九条川はあの日、私に救いを求めた。それだけで十分なんですよ。十分すぎるほどに、十分すぎる。だから、救ってやっただけ」
「救うことが殺すことだった、ってこと?」
「ええまあ」
 いけしゃあしゃあと彼女は言頷いてみせた。地球は青いかという質問に「当たり前だろ、お前馬鹿か阿呆か頭の螺子足りてる?」と言って頷くのと同じ要領で、彼女は首肯した。当然運命決定事項。それを肯定するのと同じように、彼女は首を縦に振った。
 細い首が揺れただけだというのに、それは今にもその首がぶづりと音を立てて千切れごろごろ床を転がっていきそうな不自然さを人に与える。
 ある意味これは才能だ。自然な不自然を創り出す天才。
 どこでその能力を発揮するのかと問われたら、こういうところでしかないのだろうけれど。
 久留米は再びぶちまけられたテーブルの上の水をくるくると指でかき混ぜ始め、勿体ぶったように笑いながら口を、九条川さんの血肉を貪ったその穴をがぱりと開けた。その行為すらどこか狂気じみていて、背中を蛆虫が蠢くような薄ら寒さを感じて鳥肌が全身を覆った。


 九条川は逃げたいと言った。指に指を絡めてもあいつは抵抗しなかった。だから訊いたんです、お前、死にたいのって。そしたら九条川のやつ、そうかもねって笑ったんです。
 私がこのまま殺してもいいのかって訊いたら、あいつはその笑顔のまま、あの愛らしい笑顔のまま、いいよって言ったんです。
 だから殺した。私が殺した。可憐で苛斂なあの女を殺したんです。
 先生なら知ってらっしゃると思うんですけど、首吊りとか絞殺とか、ああいった酸素と二酸化炭素の交換ができなくなって死ぬ方法って酸欠で死ぬから気持ちいいんですってね。だから夜の営み事でも首を絞めながらするだなんてマニアックなプレイが一部で流行しているんでしょうけど。
 あいつの顔は最初こそ苦しげだったけれど、段々安らかな顔になっていって私はそれだけで満足でした。だって九条川が、あんなに悩んで苦しんで憂いていた九条川がそういったしがらみから解放されていく。それだけで私は満足でした。慊焉にして本望でした。
 九条川は、最後に一度だけ私の頬を撫でて、名前を呼んで、ありがとうと呟いて、そうやって死んでいきました。首を手にやってたから分かるんですよ、心臓が、あいつの命が止まった、その瞬間が。
 その一瞬、自分が九条川を終わらせたその刹那を迎えて。私は嬉しかった。いや、嬉しいっていうのは表現が甘すぎる、歓喜狂気感激随喜有頂天絶頂、そのどれを当て嵌めても足しても掛けても希薄なほどの激情に私は襲われました。
 自分にハイポクシフィリアやネクロフィリアの性癖があったのかは知りませんが、私は嬉しかった。快感と称したほうがいいのかもしれません。とにもかくにも、あいつの人生に私が終止符を打ったという事実はとてつもないほどの多幸感を私にもたらした。私が九条川を終わらせたことも、それを九条川が甘受してくれたことも。
 九条川が私に殺される前に言いました。久留米が私の願い事を叶えてくれるから、私の死体は久留米の好きにしていいよって。
 だから私は言ったんです。お前を食べてもいいかと。
 九条川は少しだけ驚いたみたいですけど、だって、考えてもみてください。九条川が死んだら、私に殺されたら、その死体はきっと司法解剖で小間切れにされたあと、火に巻かれて灰と骨になるんですよ。
 そうなったらどうなると思います?
 当然、骨壺に収められて、墓に納められるでしょう。
 そしたら、私と九条川はもう二度と触れ合えません。
 そしたら、私と九条川はもう二度と繋がり得ません。
 それは私にとって耐えがたい苦痛です。九条川を感じられないということは死ぬよりも苦患なことです。生きたまま頭の皮を剥がされて頭蓋骨を削られ脳みそを掻き混ぜられるようなものです。
 だから私は食べたんです。九条川を食べたんです。
 だってそうしたら、あいつを食べたら、私と九条川はずっと一緒にいられるじゃないですか。
 九条川の皮が、肉が、血が、骨が、私の一部となって一生循環し続けるんです。
 それってとっても素敵なことだとは思いませんか? 結婚や性交なんかよりずっと近くに居られる。ずっと近くに感じられる。なんて素晴らしいことでしょう!
 だから私は言ったんです、食べてもいいかって。一緒になってもいいかって。九条川は笑ってくれました。いいよって、笑ってくれたんです。ずっと一緒にいられるねって、笑って、わらって……。
 刃物は使いませんでした。そんなことできるはずもありません。九条川を傷つけるのが自分以外のものだなんて、たとえそれが無機物であろうと私にとっては気が狂いそうなほどの事象でした。だから私は、自分の爪と、自分の歯を使って、あいつを食べました。九条川を食べました。
 一人で全部その日のうちに食べられるだなんて、そんな莫迦なことはさすがに思いませんでしたよ。でも全部食べ尽くそうとして何日もかけたら九条川が腐ってしまうし、そうしたら蠅がたかって蛆虫に九条川が食われてしまうしで、私は九条川に訊いたんです。どこを食べて欲しいかって。九条川は悩むそぶりを一切見せずに、脳みそと目と心臓を食べて欲しいと答えました。それ以外は燃やしてくれて構わないと笑いました。
 だから私は、九条川を、あいつの息をこの手で止めて上げてから、まず、目をくり抜いたんです。
 先生なら知っているんでしょうけれど、目って案外固いんですね。私知らなくて。だから指を突っ込んだ時びっくりしてしまったんですよね、アハハ……。頑張って噛み砕きましたけど、顎が疲れてへとへとになったし、また飲み込むのも大変で……。
 なんで一番最初に目を食べたのかと問われれば、その答えは、はい、そうですね、私は、九条川の目が好きだったんだと思います。あの純粋な目が。不純な目が。澄んだ目が。濁った目が。私を見てくれる、あの目が。大好きだったんですよ、きっと、私は。だから一番最初に食べたんでしょう。ハハ、案外分かりやすい理由でしょう……。
 九条川の肉は柔らかくてまるで綿菓子のようだった。血は蜂蜜なんかよりずっと甘くて、皮はマシュマロみたいにふかふかだった。脳みそはメレンゲのようにふわふわと可愛らしくて、骨はどんなハーブよりも素晴らしかった。こんなにも美味ならもっと準備をしてから食べればよかったと後悔したこともありましたけど、あれでよかったんですよ。準備なんていらない。何もいらない。ただそこに、ありのままの九条川がいただけで、よかったんですよ、私は。
 心臓は、一番最後に食べました。
 まだ確かなぬくもりを持って私の掌に収まる心臓はなんだか九条川の胎の中みたいで、とても心地よかった。突き立てた歯が、差し入れた舌が、あいつの肉に包まれるのは僥倖でしかなかった。九条川の心臓は林檎のような歯ごたえで、どの果実よりも甘美だった。
 九条川の言う通りに、頭と、目と、心臓を食べた私は警察に連絡しました。九条川の死体と心中するという案も私の頭にあることにはありましたが、そんな勿体ないこと、できませんよ。せっかく食べたのに。せっかく、一つになれたというのに……。
 だから警察に電話しました。私を一番確実に生かしてくれるところに連絡したんです。
 そして、今に至るわけです。
 今でも九条川は私の中でぐるぐるぐるぐる廻り続けている。自分の血潮にあいつがいると思うだけで、私はどうしようもないほどに満たされます。
 ねえ、先生。
 私は、私たちは、自分たちがおかしいだなんてこと、百も承知なんですよ。
 自分が殺されること、食べられることを甘受した九条川も、九条川を殺して食べて満たされた私も。
 二人とも、両方、おかしいんですよ。そんなこと、分かりすぎるほどに分かっています。私たちだって、愚かであったとしても、莫迦ではないんですから。
 私たちはこの行為を人に勧める気も、この好意を誰かに理解されようだなんてことも、思っていやしないんです。当たり前でしょう。私たちの関係を理解できる人間なんていないし、いらないんです。
 先生はこのことを警察に、他人に、誰かに話しますか?
 それともいつも通り「変化なし」とだけ書いて目を瞑りますか?
 私はどちらでも構わないんですよ。
 今日私がこのことを先生に話した理由は、先生があまりに私のことを正当に評価していてくれたからです。自然な不自然。それ、多分私を表現する上で、一番適切な言葉だと思いますよ。その表現を用いてくれた先生への、せめてもの敬意です。
 ……と、まあ、そんなことは建前で、誰かにずっと話したかったんですよ、私は。
 罪悪感だとか後ろめたい気持ちだとか自責の念だとか、そんないい子ちゃんな理由じゃあ決してありません。
 誰かに自慢したかった。それだけです。
 先生だって、何か特別で素晴らしいものを手に入れたら誰かにひけらかしたくなるでしょう?
 それと同じです。
 それと同じことを、今日やっただけ。
 だから先生、これはただの私の自慢話です。狂った子供の怪異譚でも、おかしな女の事件談でもない、ただの女子高生の、ただの、自慢話なんですよ、先生。


「あ、そろそろ部屋に戻らなきゃいけない時間ですね」
 唐突に捲し立てた久留米は、同じように唐突に明るい声を出した。そしてにこりと笑い、満足げに肩を竦める。
 にこり。そう、完璧な笑顔だ。まさに花がほころぶような微笑。
 だというのに、それを見た人間はどうしようもないほどの不安に駆り立てられる。頭皮に爪を立て掻きむしりたくなるほどの恐慌を煽られる。そんな、不自然な笑顔。
 久留米は椅子から立ち上がると、スキップでもし出しそうな足取りで扉へと向かった。久留米の痩躯には少し大きすぎる病院服がゆらゆらとはためいて、まるでウエディングドレスのように私の視界を覆いつくす。
「久留米」
 私が呼び止めると、久留米は振り向かないままに立ち止まった。
 背中を向けたままの久留米に、私は訊ねた。
 ずっとずっと、ニュースキャスターがこの事件を沈痛に告げたあの時から、久留米が私の前に現れてから、九条川さんの終焉をその口から話された時から訊ねたかったことを、口にした。
 その質問に、久留米は音もなく振り向く。
 そして、底冷えするような凄惨な笑みを浮かべて、緩やかに目を細めた。


「そんなの、当たり前じゃないですか」


 久留米はくるりと踵を返して、今度こそ本当にスキップをして部屋を出て行った。どうしようもないほどの虚無感と疲労が伸し掛かってきて思わず大きな溜息を吐く。頭がずきずきと痛む。喉が渇いているわけでもないのに水が飲みたくて仕方がなく、ふと、久留米が水をぶちまけたテーブルを見つめた。
 額に指を当てて、しばし逡巡する。
 そして私は、書いた文字を綺麗に消してから、角ばった字で「変化なし」と色濃くカルテに記入した。
 テーブルから滴っていた水は、いつの間にか跡形もなくからからに干からびていた。























































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