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「今日別れろって言われた」
暗い顔の友人に心中で当たり前だな、と考える。
「…なんで?」
「わかんない…重いって言われたけど、自分が特別重いと思わないし」
毎日3桁を超えるメールして、目が合っただけで相手をボコボコ、お仕置きエッチと称して強姦まがいのことをしておきながら…どの口が言うんだこいつ。
「だから今日は首輪と手錠つけて家に放置してきた」
「……」
駄目だこりゃ。
はーっと溜息をつけば不服そうな顔をされる。
慣れっこだけど。
「もーなー…お前のやってること俺には理解不能すぎるわ」
「何で?好きな子相手には仕方ないでしょ?」
「俺は好きな子が幸せならそれでいいタイプだから」
「…なんかヤな言い方。それって俺たちが幸せじゃないみたいじゃん」
事実だろ、という言葉は胸に押し込んどいた。
だってしょうがないよなぁ…
「分かった。俺に考えがある」
「え?何?」
「ひとまずお前の恋人もどき開放してやれ」
「はぁ!?なんで…」
「距離を置いてから、お前の大切さを思い出させるんだよ」
「えー…いや、それも一つの手かもしれないけど…」
渋る親友に諭すように言ってやる。
「あのな、大体俺はいつも思うんだけど向こうが悪い事したときに恋人や、その周りばっかりを責めるのは良くねぇと思うんだよ。恋人を繋ぎ止め切れなかったお前にも責任はあるんだからな」
「それ、は…」
返答に詰まる親友。
単純だなぁ…まぁ、そこがこいつの良い所。
「だから、今回はお前にもペナルティがあっていいだろ」
「…でもっ」
「頭冷やせボケ」
ゴン、と頭突きをかまして黙らせる。
「…時間はかかるかもしれないけど、お前の所に必ず帰ってくるよ」
「本当、に?」
「ああ。でもお前の恋人に喋り掛けたり触ったりしない様に、俺も周りに言っとくから」
そうすれば、そこまで強い心を持ってるわけでもないこいつの恋人もどきは自分の居場所に気付くだろう。
こいつの周りにしか、居場所は無いって。
「…ありがと。俺の恋愛応援してくれるのお前だけだよ」
うんうんと大袈裟に感動する親友に俺は苦笑を溢した。
「当たり前だろ」
お前さえ幸せなら俺はそれでいいんだから。
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