童話 | ナノ
2話


必死に溺れかけながら鞠を必死に池の底から持ち上げたカエルから鞠を奪った王子様。
夕飯までに帰る事が出来てほっとしています。だって、遅くなってしまうと王様に怒られちゃうのですから。

「王子、鞠がピッカピカですがどうしてですか?」

王様は王子が持ち帰ってきた鞠を見て首を傾げます。
傷はもともと多いですからちょっとぐらい傷が増えても気が付かないのです。

「もしかしてまた兵士を召使に…!」

ぶるぶると震え始める王様に、王子様は顔を引き攣らせます。
なんと言っても王様は王子様の父親でもあり母親代わりなのです。オカン属性の王様に王子様はたじたじなのです。
どうやってこのめんどくさい会話を終わらせようかと考えていた時です。

「王様!王子様に会いたいとカエルが来ています!」

なんだか話がずれてくれそうだと王子様が微笑んだのはつかの間です。
なんでカエルがここまで来ているんだと王子様は悲しみました

「カエル…?」
「は、はぃいっ!お、王子様が池に落ちた鞠をとってくれたら私を奴隷にしてくれるって言ったから…!」

ぴょこ、と兵士の足元から顔を出したのは今日のカエルです。
王子様は焦りました。
だって、王様がひくひく顔を引き攣らせていくのが見えています。

「王子、どういう事ですか…?」
「え、あの、ええと…あ、そうそう鞠を池に落としたときにそのカエルが友達にしてくれたら取ってくれるって言ったっつーか」

しどろもどろになる王子様。
ちょっと素行が悪いところはありますが、王子様だってお母さんには頭が上がりません。

「そうなんですか?」

ちょっと考えながらカエルを見る王様。
カエルはいい奴隷になるために必死なので、ここは王子様に話を合わせる為にこくこくと頷きます。

「そうですか…どうですか、そこのカエルさん一緒に夕食を」

ふざけんなこのクソ親父!と、王子様は喉元まで声が出掛かりましたが、良い子だから言いません。
いくら王様に王子様の素行が悪い事がばれているとはいえ、お母さんの前では良いかっこしたい年頃なのです。

「そ、そんな、恐れ多い。私はどれ…いや、身長的に地べたで十分です」
「いえいえそんなことを仰らずに。カエルなのでジャンプできるでしょう?王子の横に食事を持ってこさせますので」

どうしてこんなに優しい王様からあんな王子が生まれたのだろうと、国民たちの声が聞こえてくるようです。

内心面白くない王子様でしたが、もうこうなったらなるようになれです。
カエルに視線を向けないようにして食事を進めます。

王様には聞こえないほどの声量で「放置!放置プレイきたこれぇ!」なんてカエルが言っても知らんぷりです。
王子様が食事を次々口に運ぶのをカエルがもの欲しそうに見ているのも知らんぷりです。

「食事が終わったら湯が沸いています。友人同士背中を洗ったらどうですか?」

ですが流石に王様の言葉には「なんでやねん」とつっこんでしまいましたとさ。


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