童話 | ナノ
後日談


領主様が居なくなって一人残された少年は、男娼を館に呼んで愛人にしておりました。

「…俺の何がいけなかったわけ?」

ですがその愛人に、真剣な顔で詰問されて、困っています。
少年の手紙を無視したり、言葉遣いが乱暴だったり、冷めた態度をしていたり。
主従関係を無視したその強気な態度。
“買って”いるのは自分なのに、なんて苦笑が漏れますが言える訳ありません。
だって、少年はそこが気に入って男娼を買ったのですから。

「いや、ただ、俺には勿体ないなーって…」
「……」

しどろもどろにそう言えば、男娼は押し黙ります。
嘘だけど、ごめんね。なんて、少年は言いません。

「分かった」

短いやり取りの最後に、男娼の言葉。
お金を渡して、彼とはバイバイ、売買です。

三ヵ月、少年にしては持った方です。
自分には勿体ない。決して嘘ではありませんが、けどそれは最初から分かってた事です。

強いて言うなら、少年がどれだけ歪んだ愛情でも、男娼がどれだけノーマルな愛情でも。
それでも一緒にいたいと思うほどの愛情が冷めただけ。
俗に言うマンネリなのでしょう。




「あの子がほしい」

人身売買なんて酷い事するなんて。
そう思ったとしても、少年には関係ありません。
需要と供給があるそれは、少年みたいなおかしいやつには必要です。
暗く俯くみすぼらしい青年を見つめて店主にそういえば、「畏まりました」と、従順な一言。

節操なしと影で言われている事事なんて知っています。

けれど別にいいのです。
少年だって寂しくて、誰かに傍に居て欲しい時があるからこんな事をしているのです。
けれど、愛なんて不確かなものは自分が与えるもの意外信じる気になれないから、こうやって“買う”のです。

かつての領主が愛してくれたように。
優しく愛でて、お金を払い、飽きたら金を渡して捨てればいいのです。

「きみはいつまで持ってくれるかな」

がらんどうの眼と眼を合わせ、「よろしくね」。
せいぜい自分を、満たしてほしいと願った少年。

1人の死体を地下に飾った領内で。
独り愉しく暮らしましたとさ。



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