腐った兎 | ナノ


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「なんですか、それ」

苦笑しながら、龍硫くんは俺の背中に腕を回す。
おぉ…。
なんか、ホントに龍硫くんにぎゅうされると思ってなかったから、内心びっくりだ。

「優兎、さん」
「へ?」

俺の顔は龍硫くんの胸元に抱きこまれるような形で。
なんだか抱き枕みたいになってたから、龍硫くんの声が篭もって聞こえて、でも、あれ?

「どったの龍硫くん」
「優兎さん、って呼びたいです」

ちょこっともぞもぞして龍硫くんを見つめれば。

「なんて顔してんのー…」

こんなに切羽詰った龍硫くんの顔を見た事なかったからびっくりした。
しょうがないなぁ。

「名前はねぇ、呼ぶためにあるんだよ」

もちょっともぞもぞ。
右手を出して、龍硫くんの頭をなでてあげる。

「龍硫くん、おっきな子供みたいだねぇ」
「僕、真剣なのにひどいですよ」
「あっは。面白いねぇ」

うん、なんだか龍硫くん可愛い。
オレって、ほら、ちょっとSっけあるからぁ。
オレが優位なようなこの状況は楽しい。

「大好きだよぉ、龍硫くん」

そのままぎゅっ、と龍硫くんの胸へダイブ。
ほかほかぬくぬくな気持ちよさに、すぐに睡魔に誘われる俺は気付かなかったんだ。
龍硫くんがどんなに悲しい顔をしていたかなんて、ね。

PreV
ToP


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