腐った兎 | ナノ
20
「やっぱり、今日は帰るね」
仕事が一段落。
思った以上に仕事ははかどって、多すぎる書類にも終わりが見えてきたし、会長と委員長に告げればぎょっとした顔をされた。
「…え?どったのん2人とも」
尋ねれば「いや…」と、気まずそうに顔を伏せる会長。
あ、もしかして。
「今夜はオールナイト寝かせないぞ的な?いやん会長のエッチー」
笑って言えば顔を伏せられた。
…笑えないよー会長。
「ただいまー…あれ?」
小走りで帰った部屋。
ブラックな龍硫君が怖くて内心ぶるぶると震えながらドアを開けたんだけど。
「たつるくーん?」
小声で呼びかける部屋は、なんていうか、人の気配がしない。
時刻は3時。
生徒会の仕事で遅くなった時ですら、残業している夫の帰りを待つ妻よろしくテーブルで伏せていたりしていた龍硫だから、なんだかおかしい。気がするような、何ていうか。
ざわざわと、変な気持ちになるオレの心には、羊子ちゃんの言葉。
『本当に一人っきりになったら寂しくて泣いちゃうくせに』
あは、本当笑えるよね。
他人なんてどうでもいい。
勿論、オレを甘やかしてくれる羊子ちゃんとか、羊子ちゃんに似てる申一くんは別だけど。あ、あとレを楽しませてくれる淫乱可愛い子ちゃんも大好きだけど。いやんえっちーあははーうふふー…
「…はぁ」
変にテンションあげてはみたけれど、なんだかなー…。
誰もいない部屋、は、龍硫くんと同室になってから初めてに近い。勿論オレの自室は除くけどそれでも。
「早く帰って来て龍硫くーん。寂しくて死んじゃうよー。実はオレのこと大好きでしょー?うわーんうわーん」
一人のときって変なテンションになるよね。ノリで棒読みしていたら、がちゃり。
おおっふぅ。危ないなー…ぎりぎりセーフ?
「あ、龍硫くん!」
「…え?」
帰ってきた龍硫くんには…聞かれてないはずだよね?いくら棒読みでも聞かれてたら恥ずかしーい。
「どうして、」
あ、ブラック龍硫くんが召還される前に謝らないと。
ここで龍硫君がまっくろくろすけになるなんて、めんどくさくてしょうがないもんね。
今まで仕事しててヒットポイント減ってるから余計に。
「ごめんねぇ、遅くなって。…怒ってる?」
オレの必殺上目づか…いや、止めよ。上目遣いとか、龍硫くんもオレも立ってるこの状況で言ったらなんか男として負けな気がするもん…ぐすん。
けれど、さすがオレの魅力だよね。
「…シチュー、まだ食べれますか?」
優しく、困ったような笑みを返してくれる龍硫くん。
委員長のパスタ食べてから時間は経ってるけど、この時間だからそこまで腹が減ってる訳じゃない。
でもさぁ、
「もちろん!育ち盛りの胃袋なめて貰っちゃ困るよぉ」
龍硫くんの機嫌損ねちゃ怖いからねぇ。
あーあ、オレって優しいよねぇ。
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