■時の五題■
たった百年じゃ足りない
六ヶ月後に待ち合わせ
二十四時間の空白
あと三分でできること
一秒先さえ確実じゃないから


 ■駆け引き五題■
一つだけなら妥協する
大事なことなら隠してた
必要ないなら言わないで
そんなことなら知っている
怖くないならこっちへおいで


 ■恋路の闇■
閉ざされた視界
声の届かない場所から
指先にすら触れない
罪の味も知らずに
記憶に沈めた香り


 ■シェイクスピア的五題■
人騒がせなじゃじゃ馬馴らし
間違いの喜劇ではじまる
番狂わせのテンペスト
十二夜には愛を語って
恋唄はお気に召すまま


 ★■都都逸五題■
いとし いとしと 言う心
思いだしてか 忘れてか
なぜか今宵のみじかさは
こうも逢いたくなるものか
夢と知ったら 泣かぬのに


 ★■百人一首より、恋五題■
昔はものを (43 権中納言敦忠)
忍ぶることの (89 式子内親王)
恋ぞつもりて (13 陽成院)
ゆくへも知らぬ (46 曽禰好忠)
われても末に (77 崇徳院)

 ★■李白の詩から五題■
花下に迷う (襄陽歌)
月と影とを伴い (月下獨酌)
君を思えども見えず (峨眉山月歌)
百年三万六千日 (襄陽歌)
塵と灰とを同じうにせんと願う (長干行)


 ■不思議な関係五題■
期間限定の親友
予期せぬ家族
頼れる敵対者
見知らぬ恋人
初めて会う自分


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