プロローグ@
ここに2018年1月の禁止制限リストがある。

禁止
エンシェント・フェアリー・ドラゴン

制限
SPYRAL GEAR-ドローン
SPYRAL-ジーニアス
ダンディライオン
BF-隠れ蓑のスチーム
ファイアウォール・ドラゴン
SPYRAL RESORT

準制限
同族感染ウィルス
トーチ・ゴーレム
影霊衣の術士 シュリット
マスマティシャン
ローンファイア・ブロッサム
スケープ・ゴート
汎神の帝王
盆回し
神の警告

無制限
海皇の竜騎隊
増殖するG
ブラック・ホール
未来融合-フューチャー・フュージョン

まずは環境トップの《SPYRAL》が規制になった。デッキのぶん回しの核となる3枚が制限になった。大きく弱体化したが、工夫次第ではまだ戦えるバランス調整となった。

《エンシェント・フェアリー・ドラゴン》の禁止、《盆回し》の準制限からフィールド魔法系デッキへの規制も入ったが、これも《SPYRAL》で悪目立ちしたためである。

《ローンファイア・ブロッサム》や《ダンディライオン》、《マスマティシャン》が制限となったのは、新規カードの《アロマセラフィ−ジャスミン》と相性が良すぎたためだ。環境が《植物リンク》だらけになるのはいただけない。

ただ城前的に一番驚いたのは遊作のエースであるにもかかわらず一発で制限となった《ファイアウォール・ドラゴン》である。基本的にコナミはそういった暴挙は避けるものと思っていたが、ループパーツが大嫌いなのだ。主人公補正だけではどうしようもなかったようである。ただ、たしかに《ファイアウォール・ドラゴン》は強すぎた。ほかのリンク4モンスターを並べなくてもことたりる、勝ててしまう、そんなモンスターだった。多様性はすでにない状態だったのは事実だ。これでファイアウォールを並べまくる脳筋リンクが出来なくなり、より幅広いリンクモンスターを使った展開ができるようになるだろう。

《SPYRAL》と新たな環境の頂点のになりそうだった《植物リンク》に規制が入ったことで、新制限後は群雄割拠の良環境になりそうな予感がする。蓋を開けてみないとわからないが。

どのみちリンクモンスターのカードプールが増えたことでどのデッキもリンク召喚を絡めた戦い方ができるようになり、《ファイアウォール・ドラゴン》が制限になったことで凶悪なリンクソリティアもしばらくは出てこないだろう。ほとんどの人が一安心な最中、どんより雲を背負いながら景気の悪い顔をしている青年は開口一番に悲鳴をあげた。


「スパイラルがしんだ」

「まーたやってるよ、城前。好きだね」


見せて、と手を伸ばす少年に力なく雑誌をわたす。月間遊戯王と名高い某雑誌である。パラパラとめくった遊矢はわあというほかない。

「毎回言ってるよね、城前」

「うるせえ」

「そんなに嫌なら買わなきゃいいだろ、その雑誌。手に入るのは城前だけなんだから」

「無茶言うなよ、知ってるんだよワンキル館は!禁止制限改定の時期はいつも早く帰してもらえるんだ」

「だから早いこと帰るんだ、21日に?」

「そうだよ!」

「よくやるよね、その二重生活」

「うるせえ。つかなんでいるんだよ、遊矢。自分の次元に帰れ」


城前は軽く遊矢をにらんだ。

デュエルモンスターズ資料館は今までにないほどに盛り上がっている。次元転送装置が手に入り、OCG次元と定期的につながることができるようになり、城前は定期的にデュエルモンスターズの新規テーマや制限改訂などを持ち込むようになっていた。OCG次元での仕事や生活をやめる気はないので、今のところかつてより頻度はだいぶ落ちたが月一のエキシビジョンマッチや大会に加温出す広告塔としての仕事はアルバイトという形で続けている。


「ほんとなんでいるんだよ、遊矢。またデュエルしたくなったのか?」

「それもあるんだけどさ、それより大事件が起こったから慌てて来たんだよ、オレ!」

「え、なんかあったのか?」

「力になってくれるのは嬉しいんだけどさ、今回の犯人はもうわかっちゃってるんだよな。お前だよ、城前!」

「え、おれ!?」

「そうだよ、城前だよ!ワンキル館で色々研究するのは構わないけどさ!ルールとかまで導入するならちょっとは影響考えてくれよ!おかげでこっちはもろに影響受けるんだから!」

「え、どれのことだよ?心当たりがありすぎてわかんねえ」

「マスタールール4だよ!!オレたちの時代にまでルールが適応されちゃったもんだからアクションデュエルの普及に支障をきたしてるんですけど!!」

「うげっ、まじかよ!?」

「城前の次元の新しいルールなんだろうけどさ、試すにしてももっと慎重にやってよ!今はワンキル館内部だけかもしれないけどさ、20年後この施設での大会はすさまじい規模の大会にまで成長するんだ!聖地化するんだよ!そんなとこでマスタールール4なんて導入されてたら真似するところが増えるのはあたりまえじゃないか!!」

「あ、あ、あーそういうことか!ごめんごめん、そこまで考えてなかったぜ」

「そんなことだろうとは思ってたよ!ていうかそもそもマスタールール4、なんだよこのルール改定!」

「あーうん、おれたちの次元でも相当両賛否あったから気持ちはわかるぜ」

「じゃあなんでリンク召喚だけ導入しようとしないんだよ」

「なんでってそりゃ半年もたったらマスタールール3のやり方が思い出せないっつーか」


目をそらす城前に遊矢は盛大にため息をついた。



遊矢お怒りのマスタールール4と今までのマスタールール3の違いは以下の通りである。

まずはリンクモンスター・リンク召喚の登場。そして6つ目のモンスターゾーンとして、エクストラモンスターゾーンが新設された。それにともない従来のモンスターゾーンがメインモンスターゾーンに改称された。重要なポイントはエクストラデッキからモンスターを特殊召喚する場合、原則としてエクストラモンスターゾーンにしか出せないという点だ。ただし、リンクモンスターのリンクマーカーが指し示しているメインモンスターゾーンであればエクストラデッキからの特殊召喚が可能となる。ちなみに「エクストラデッキからの特殊召喚」にはペンデュラム召喚や正規手順以外の特殊召喚も全て含まれる。


次がペンデュラムゾーンが魔法&罠ゾーンの右端・左端との兼用になったことだ。これらには通常の魔法・罠カードを出す事も、ペンデュラムモンスターを魔法カード扱いで発動する事もできる。なお左右両端の魔法&罠ゾーンは、ペンデュラムモンスターが置かれている場合、または「ペンデュラムゾーンにペンデュラムモンスターを置く」場合にのみペンデュラムゾーンとして扱われる。
よって、右端の魔法&罠ゾーンに発動している永続魔法が《揺れる眼差し》で破壊されるような事はない。
メインデッキ、サイドデッキ、エクストラデッキの枚数制限はマスタールール3と同様で変化はないが、エクストラデッキを構成するモンスターとして、新たにリンクモンスターが追加された。


融合召喚・エクシーズ召喚等の正規の方法以外でエクストラデッキのカードを特殊召喚する場合も、エクストラモンスターゾーンかリンクマーカーの向いたメインモンスターゾーンへ特殊召喚を行うことになる。一方で、これらの種類のモンスターであっても、エクストラデッキ以外からの特殊召喚や戻す場合、エクストラモンスターゾーンは使用できない。リンクマーカーの向いたメインモンスターゾーンがない場合も、エクストラモンスターゾーンのエクシーズモンスターにエクシーズモンスターを重ねてエクシーズ召喚する事は可能だ。シンクロ召喚・融合召喚も同様に、素材とすることでエクストラモンスターゾーンが開く場合には行うことができる。また、片方のエクストラモンスターゾーンから素材にし、空いているもう片方のエクストラモンスターゾーンに特殊召喚する事もできる。エクストラモンスターゾーンのカードが《PSYフレームロード・Ω》・《亜空間物質転送装置》等の効果で一時的にフィールドを離れた場合、メインモンスターゾーンに戻る。エクストラモンスターゾーンのモンスターのコントロールが変更された場合、メインモンスターゾーンに移動する。一時的に移動し元の持ち主へ戻る場合も、そのまま持ち主のメインモンスターゾーンへ移動する。エクストラモンスターゾーンのモンスターを対象に《ポジションチェンジ》の効果を発動できない。


RUM等でメインモンスターゾーンのエクシーズモンスターに重ねてエクシーズ召喚扱いで特殊召喚する場合、エクストラモンスターゾーンに特殊召喚するモンスターを出し、その上でエクシーズモンスターとエクシーズ素材をエクストラモンスターゾーンに移動させて重ねる。


従来可能だった運用が根本的に見直しとなる、という点では生け贄召喚導入というごく最初期のものに続く2回目であり、非常に大きな変更である。生け贄召喚は第1期中に早々に見直され、黎明期のごく短期間でのルール変更であったことを思えば、実質的には初の大規模変更と言える。新エキスパートルールは第2期に入りエキスパートルール時代にはなかった処理が多数生み出されたための整備がほとんどであった。
マスタールール以降は、シンクロ召喚等の追加システムや、アドバンス召喚のような用語変更程度で、基本的な仕組みはそのままだ。先攻ドロー廃止等の細かなものはあれど、基本的にこれらのルール変更は「変更」というよりも「追加拡張」に近かったのである。エクストラモンスターゾーンに関するルールの変更は大きく、既存のデッキの多くが影響を受けるルール変更となった。


特に、マスタールール以降のデッキはエクストラデッキから素材を並べて大量展開を狙う等エクストラデッキの活用を前提としたものが大部分であり、それらの多くが大打撃を受けている。一方で、マスタールール以降であっても《真竜》や《帝王》等のようにエクストラデッキをほぼ使わないデッキや、新エキスパートルール時代の、大量展開が得意でないためにマスタールール以降の環境に適応できていなかったデッキは、ほぼ影響がなく相対的に強化されたと言える。


また、カードの位置や一時的な除外等、モンスターゾーンの活用のために評価が見直されたカードも非常に多い。《フュージョン・ゲート》で複数体の融合モンスターを並べたり、1ターンに多数のシンクロ召喚を行ったりという戦術は、リンクモンスターを間に噛ませる必要が生じた。リンクモンスターを経由しても、リンクマーカーで稼げる数には限度があり、展開手順に工夫が必要となる。


《シューティング・スター・ドラゴン》のようにエクストラデッキから素材を並べる必要があるものもハードルが上がっている。特に《シンクロン》や《オッドアイズ》などのマスタールール以降にアニメや漫画等で登場した所謂キャラデッキの多くはエクストラデッキから素材を並べる必要があるものを前提とした構築や戦術が多かった為、従来の運用からの大幅な変更を余儀なくされている。


ペンデュラム召喚を戦術に据えたデッキ、特に《イグナイト》などの「能動的にペンデュラムモンスターをどんどんエクストラデッキに送り、ペンデュラム召喚でそれらを大量展開し次の戦略に繋げる」系列は根本的に破綻してしまった。リンクモンスターを用意しなければ大量展開ができないのだが、そもそも大量展開ができない時点で効率的にリンク召喚を含む各種展開がこなせない。なんとかリンク召喚できても、次のペンデュラム召喚までリンクモンスターを維持せねばならず、またリンクモンスターを複数体展開すればその枠の分だけペンデュラム召喚できるモンスターの体数も減ってしまう。


「まだ、遊矢は大丈夫だろ、《オッドアイズ・フュージョン》使えるんだし。《セフィラの聖選士》とかさ」

「ワンキル館はいいよ、試運転だけだし。それが外にもれちゃったからおれたちの時代が大惨事なんですけど!」

「あー、ごめん。それについては謝るわ。館長に話通しとく」

「気をつけてくれよ、もう」


遊矢はためいきだ。特殊召喚以外の活用がある場合は、エクストラデッキ肥しもまだまだ活用できるといえるが、遊矢のようにペンデュラムゾーンと魔法&罠ゾーンの共有化によって、永続魔法・永続罠とペンデュラムモンスターを併用するデッキは影響を受けた。特に宝玉獣は、ペンデュラムモンスターと《宝玉の氾濫》の両立が困難となり、従来の運用からの大幅な変更を余儀なくされている。


十二獣やRUMのような、1体を次の素材にしつつ展開できるギミックは、エクストラモンスターゾーン1つでやりくりできるため価値を増した。また、レッド・デーモンのように、エクストラデッキからの1体にメインデッキのモンスターを組み合わせ進化するものも、1つの枠でもやりくりできる。


《スターダスト・ドラゴン》・《PSYフレームロード・Ω》のように自力で一時的に場を離れメインモンスターゾーンに移動できる能力の価値が増した。逆に、後続の素材等にしつつメインモンスターゾーンに蘇生するという動きができない、エクストラデッキ以外から出せないもののデメリットは増すこととなる。


エクシーズモンスターは一時的にでも場を離れるとエクシーズ素材が0になってしまう。このため、融合モンスター・シンクロモンスターに比べメインモンスターゾーンへ移動する手段が限定され、やや弱体化している。


「遊矢たちの時代に影響でないよう気をつけるとしてだ、それだけか?」

「なんだよ、冷たいなあ。久しぶりなのにそれだけ?」

「いいだろ、おれは次のプロジェクトで忙しいんだよ」

「え、なにか考えてるのか?」

「ひみつ」

「ていうか環境デッキ死んだんだからまたオッドアイズ 使いなよ、城前」

「いやーペンデュラム きついっすわ」

「マスタールール4発信源がなにいってるんだよ!」

「ぶっちゃけ4月から弄ってない」

「裏切り者ー!」

「失礼な、これから弄ろうとしてたんだよ」

「え?」

「やっといろんなリンクモンスターが出たんだ。デッキ調整が捗るぜ」

「!!」

「あ、食いついた」

「あたりまえだろー!どんなカード!?」

「再現するまでオアズケだ」

「えええっ!?いいだろ、少しくらい!」

「みたいならスピードデュエルに付き合ってくれよ」

「え゛」



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