Clap







「帰らないのか」

「なにが?」

「実家、あるんだろ」

「……あんなの実家とはいわねえよ」

城前は泣きそうな顔をして言う。

「おれの記憶をもとに再構築した人たちを本物と思い込めってか?どんだけ残酷なんだよ」

カイトはため息をつく。

「もし帰る方法がわかったら、帰るのか」

「当たり前のこと聞くんじゃねえよ、ばあか」

城前はカイトの家に居候している。城前は実家がハートランドから遠いため、カイトの父親が城前の父親と知り合いということで下宿しているといった方がただしいだろうか。世界が再構築されたあとは、そういうことになっている。今の城前には帰る場所があるのだ。


だがなんだかんだと理由をつけて城前は実家に帰ろうとはしない。未成年である。城前の家族はよくある反抗期だとしていつもカイトの家にご迷惑をかけてと電話をかけてくる。金はちゃんともらっているし、城前は学校も私生活もちゃんとしていると報告はされていた。


城前の気持ちもわからなくはない。帰る場所があるのとないのは違う。彼らは城前の家族であり今までの人生を作ってきた人々だ。さすがにないがしろにするのはどうかと思う。ただ再構築された世界で突然出現した人たちと城前克己として生きろと言われた時点ではいそうですかも難しいだろう。


「嫌だ、嫌なんだよ。ただでさえ薄れてきてる記憶をこの世界の人たちで上書きすんの。おれの生きてきた28年がなかったことになって17年からスタートするの。理不尽すぎるだろ、なんだそれ。諦められるわけねーだろうが」

カイトは城前の主張する世界や記憶がただしいのかわからない。

「嫌だ、嫌なんだよ。ただでさえ薄れてきてる記憶をこの世界の人たちで上書きすんの。おれの生きてきた28年がなかったことになって17年からスタートするの。理不尽すぎるだろ、なんだそれ。諦められるわけねーだろうが」

カイトは城前の主張する世界や記憶がただしいのかわからない。

ただ早く諦めればいいのになと思うのだ。外堀は埋められた。城前のいう世界に帰る方法は潰えて一年になる。なかば意地だ。諦めきれないのは意地でしかないのだ。さっさと諦めてこの世界に馴染む方向に向けばいいのにと口が裂けてもいえないが、カイトはそう思っている。

あと12年、あと12年たてばさすがに城前は諦めるだろうか。城前のいう空白を新たな記憶が埋め尽くしたとき、城前の言い訳はひとつ使えなくなるわけである。先は長い。

(それまで俺はこいつの愚痴を聞き続けることになるんだろうな、きっと)

憂鬱でもあり、ほかに打ち明けられる奴がいない城前に対する哀れみや同情でもあり、優越感でもある。カイトはまた肩をすくめて城前の話に耳を傾けることにしたのだった。


×
SSが簡単に作れる
BL専門チャットノベル
- ナノ -