「っう〜寒い…」


はぁと息を吐くと、真っ白になって広がった。今日はここ最近で一番の寒さだ。

少し離れたところから学校まで歩いてくる私にとっては、かなり厄介な相手。足が霜焼けになるし、手がかじかむし、鼻水が出てくるし。学校に着く頃には、耳が寒さで真っ赤になる。

もう少しで校門というところで、後ろから車の音。振り返ると光がちょうど車から降りるところだった。


「おっはよーー!ナマエ!」
「…はよう光…」
「なんだよ朝からテンション低いなぁ…」
「光が高すぎるんだよ。こんな寒いのに…」


ため息を吐くとやっぱり息は白くなった。手袋をはめているのに、指先も寒さで痛くなってきた。

車内と外の温度差の関係だろう、光は少し火照った顔で私の隣に並んだ。そういえば馨がいないけど、どうしたのかな。
光に聞いてみると、ちょっと体調が悪くて遅れて来るらしい。光と馨は今まで風邪ひくのも一緒だったのに、珍しいこともあるもんだね。

それを光に言ったら、まぁ…そりゃ人間だからね。と答えになっているようないないような曖昧な返答をされた。


「それよりさ、ナマエは寒がりなのになんでわざわざ歩いて学校来てんの?車回せばいいのに」
「……少しは歩かないと健康に悪いでしょ?」
「ジム行けばいいじゃん」
「私は自然な空気が吸いたいの」
「ふーん。理解できない」
「理解されなくて結構」


ふいっと光から顔を反らして、手袋の上から息を吐く。そんな私の様子を光は少し上から見下ろしていた。なんだろう?今日の光はどこかいつもと違う気がする。


「そんなに寒い?」
「そんなに寒いよ。光は寒くないの?」
「全然」
「じゃあ暑がりなんだね」
「違うけど、」


けど、なんだろう?
光は何か思い詰めた様子で唇を結んでいる。私が見上げていることに気がつくと、ニィと口の先を上げた。

あ、これはなにか企んでる顔だ。光と馨との付き合いが長い私は、何度も双子のイタズラの餌食になっている。小さい頃はよく引っ掛かったけど、もうそうはいかない。光が何を言ってきても相手にしない!!


「…じゃあ、俺が暖かくして差し上げましょうかお嬢様?」
「あー…ハイハイありがとう。光のおふざけはも、」


いいから。
という続きは言えなかった。というか、言わせてもらえなかった。
え?ちょっと待っ…何、この状況。どうなってんの?


「どう?暖まった?」
「……………………………………※*☆●ーーーー!?!?!」


目の前に超どアップで映った光に、自分が何をされたのか徐々に脳が理解していく。確かに唇に感じた暖かい感触。それは、つまり、そういうこと、で。
全て理解したところで、どこにそんな体温があるんだというくらい顔が熱くなっていく。周りの生徒に見られているのがわかって、恥ずかしさで余計に。


「ば、馬鹿じゃないの!?ここここ公衆の面前で、きっき、う、ぁ!!!」
「キス?」
「わあああああああ!!!!言うなああああ!!!」
「自分だって言おうとしてたじゃん」


光の口を塞ごうと暴れてみても、光は私を面白そうに見てひょいひょい避ける。

どうしてこんな展開になった!私は寒かっただけで、、そう!これは光のイタズラなんだよね!?それか、ホスト部の営業の延長か。そうだよ!光は私の反応見て楽しんでるだけなんだよ!
真っ赤になった頬を押さえて混乱していると、光は暴れている私の腕を掴んで耳元でささやいた。



「言っとくけど、俺本気だからね」



しばらくそこに呆然と立っていたのに、さっきまでの寒さは微塵も感じなくなった。





(告白上手くいった?光)
(馨…どうしよう今なら恥ずかしさで死ねる)




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