ギャリイヴ←主



遠くから眺めているのが好きだった。
ミルクチョコレート色の流れる髪も、ウサギみたいな真っ赤な瞳も、雪みたいに白い肌も。友達と楽しそうにしゃべっている時でも、先生に褒められている時でも、あまり動かない表情。可憐なように見えて、でも何かあると妙に潔くて清々しくて。

そんな君を、反対の教室の隅から眺めているのが好きだった。
話しかけたいとも、仲良くなりたいとも思わなかった。ただ見ているのが好きで、君が好きで。時折君が見せるふんわりした笑顔に、少しだけ速くなる心臓の音が心地よかった。


だけど。
週末開けたあの日、君はもう僕の知る君じゃなかった。


紫色のボサボサの髪で、布を引き裂いたような変なコートを着た大人の男が君の隣に立っていた。
普段はそんなに笑わない君が、満面の笑みでその男の人を見上げているのを見た時、心臓が握りつぶされたように痛かった。

信じられなくて、信じたくなくて、
顔を背けたかったけど、僕は凍らされたように動けなくって。

いつも、遠くから見ていた。
僕と君の距離は教室の端から端と同じくらい。
離れたままでいいと言いながら、君の隣に誰かが立つとどうしようもなくムカついて。

ただ僕は君に嫌われるのが怖かっただけなんだと、今になってわかったって。

もう、遅い。


「じゃあね、イヴ。あんまり学校に近いとワタシ変な人に見られちゃうから。また会いましょう、今度はマカロンのお店で」


静かに頭を撫でられる君は、頬にうっすらとピンクの色を乗せていて。男の人の手が離れると、少し名残惜しそうに眉を寄せた。


ああそうか。
君には好きな人ができたんだね。

おめでとう。





13.10.18

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