be grieved


この間七海くんに借りたノートを返そうと、私は彼女の部屋の前まで来ていた。

「どうぞっ」

扉をノックすると渋谷さんの声がした。

「あの、七海く……!?」
「あー春歌ならまさやんとこ行ったけど?」

扉を開けると、着替え中なのか下着姿の彼女がいた。許可をもらって入ったのにこの様な罪悪感に襲われるなどと誰が予想しただろうか。
彼女は全く恥じらう様子もなく、私の顔をじっと見つめている。そんなことをしている暇があるのならば服を着たらどうなのでしょうか。

「…あの。付かぬ事をお聞きしますが、貴女には恥じらいというものがないのですか」
「ん?別に裸って訳じゃないんだしさ。あんただって見慣れてるでしょ?」
「な…なんで私が…っ!?」
「だって下着のCMとか普通に流れてるじゃないの。あんたもアイドル目指してるんだからさ、耐性付けとかないと駄目だよ?」

それはそうかもしれませんが、意中の人の姿となったらまた別の話でしょう。
それに、現在の私はHAYATOとして活動してはいますが、このように女性の下着姿を目の当たりにする様な仕事などしたこともありません。

「…今は、アイドルだとかそんなものは関係無いでしょう」
「ふーん。イッチー意識しちゃってんだ」
「〜っ…何を…っ!!」
「なーんて、冗談冗談!ちょっとからかっただけよ」

あんたがあたしなんかを好きになる訳無いもんね、と笑いながら言う彼女。その言葉に胸が疼くのを感じる。
この人は本当に恋愛感情には疎い。貴女に想い焦がれている人間なんてごまんといるだろうに、そのことには全く気付かない。
確かにそのお蔭で救われているところもある。しかし、この胸が疼くことには換わりはない。

「貴女は、もう少し自分を大切にした方が良い…」

私は無意識のうちに彼女の頬に手を掛けていた。彼女の視線が不振気に私を見詰めていることを感じる。
だが、私の言葉は止まらない。

「もし、私が貴女のその姿に欲情して襲い掛かったりでもしたらどうするつもりですか?」

自分でも何故こんなことを、と思う。だけど、こうでも言わないと彼女は誰にでも隙を見せてしまうだろう。
だとしたら、いっそ私が嫌われたとしても…
そう、自分に言い聞かせたのにも関わらず、彼女の返答は予想外のもので。

「イッチーは優しいね」

あの様な言葉をかけて、こんな風に言われることを誰が予想出来たでしょうか。
人の気遣いには敏感なのに、私の恋心は全く気付かない貴女。それが凄くもどかしい。

本当にこの人は読めない。だからこそ私は貴女をこれ程にまで求めてしまうのかもしれない。しかしこれは所詮叶わぬ想いでしかない。

どんなことがあったとしても、この気持ちを圧し殺さなければ……

私はアイドルなのだから。



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かなえさんからのリクエストでした!

初っぱなから下着ネタですみません(^^;
下着姿でも何も気にしないトモちゃんと平然を装ってるけど内心どっきどきのトキヤさんみたいな話しにしたかったのに途中で何かがずれましたよね。
しかもいつも通り片想いで終わってしまいました…もし両想いのイチャラブトキ友(←)の方が宜しければ、改めて書きますので遠慮なくおっしゃってください><

それでは、リクエスト有難うございました!!