Shall we dance?
※トキ→友(←音)
聖なる夜。現在この学園ではダンスパーティーが行われている。
そんな日に私はというと、別段一緒に踊る相手もいなかったので、壁に寄り、一人俯き思索にふけっていた。
「んっ」
突然、その声と共に真っ直ぐに突き出された白い手が私の前に現れる。顔を上げると、視線の先には同室である音也の想い人がいた。
「……何です。その手は?」
「あんた、そんなとこ一人で突っ立ってんだから踊る相手いないんでしょ?だからあたしが相手してあげようと思って」
彼女は強引に私の手を引っ張る。性格は男勝りだが、華奢なこの腕のどこにそんな力があるのだろうか。
そう思いながらも、今はそれ以上に不可解な点を彼女に投げ掛けてみる。
「……あの、渋谷さん」
「何?」
「なぜ…私に構うんです?」
「だって、あんた音也の友だちでしょ?友だちの友だちが困ってたら手を貸したくもなるでしょうが」
「…別に困っていた訳では」
今まで見たことのない笑顔で、さも当然とでも言うかのように断言する彼女。その姿が眩しすぎて、思わず視線をそらし皮肉を言ってしまった。
「も〜照れちゃって!」
しかし、それにまるで気付いていない。もしかしたら彼女は色恋には疎いのかもしろない。そうでなければ音也の気持ちだってとっくに気付いているはず……
「!?」
「……?どうしたの、顔真っ赤だけど」
私は、今、何と。
…色恋?誰が誰に対して?
音也の気持ちに気付く、というよりそれでは私が彼女に……
しかし、彼女の笑顔に自分の気持ちが寄ったのも事実。
顔が熱い。それは今までに感じたことがない程で。
色恋なんて、この学園ではタブーでしかない。今まで音也はなんて愚かな感情を抱いているのかと思っていた。
いつも彼女の話をしては楽しそうにしている彼。私には無縁だと、いつもそう思っていたのに。
私もまた、音也同様、彼女に惹かれてしまった……