If Story

▽ 4*


「残念、イッちゃったのは葵だけだったね」

美智はまだ彰吾にバトンを渡す気はさらさらないらしい。葵を泣かせて満足そうに笑っている。

「でも危なかった。葵はイく時も可愛く締め付けてくるから、たまんない」
「あっ、あっ……、んんっ!」

絶頂を迎えたばかりで過敏な葵を気遣うことなく、美智はその体を揺さぶり続けた。

「あーあ、負けんなよ葵。次はもっとちゃんと締め付けろ」

無茶苦茶なことを強いているのは分かっている。でも明らかに嫌がっているはずの葵が、命令には抗えないとばかりに泣きながら頷いてくるのだ。

結局、美智が満足したのは葵がもう一度自らの腹に迸りを放ってからだった。

「お待たせ」

艶のある黒髪をかきあげながらにこりと笑う男が憎らしい。でも額に滲む汗で彼の余裕のある態度がポーズなのだと分かる。だから彰吾はそれ以上彼に絡むことはなく、葵の体を抱き上げた。

「彰吾ってバック好きだよね」

葵をうつ伏せの態勢に変え、腰だけを上げさせれば、美智はそんなことを言ってくる。

正面から抱く体勢も嫌いではないし、特に意識をしたことはない。今だって特別な理由があったわけでもない。

けれど、言われてみれば、正常位よりは、背後から押さえつけ、蹂躙するようなセックスのほうが高ぶりはするかもしれない。

今も、ソファの座面に顔を押し付けて泣く葵に湧き上がるのは底知れぬ劣情。

「あぁぁっ、ん……あっ、あっ……」

美智の出したものが伝う箇所に侵入を果たすと、ようやく乾いた体が癒えていく感覚に包まれる。ずっとこれが欲しかった。

痕が残らない程度に白いうなじを啄ばみながら、ゆっくりと味わうように抜き差しを始めていく。すでに美智によって二度イカされた体は、中に埋め込んだ彰吾のモノを溶かせるほど火照りきっていた。

「葵、おいで」

美智は今回傍観者でいるつもりはないらしい。ソファに爪を立てて彰吾からの突き上げに耐えていた葵を呼び、上体を抱え始めた。

自分の肩に抱きつかせ、美智からも葵を抱き締める。キスまで送り、甘やかすような姿勢だが、彼が笑顔で告げた言葉は葵の泣きをひどくさせる。

「彰吾のこと早くイカせられたら、もう一回俺と出来るかも。だから、がんばろうね」
「させるかよ」

さっきの仕返し、らしい。でも二人が張り合うことで被害を被るのは葵だ。むしろこれも葵を泣かせるための理由付けに過ぎない。

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