If Story

▽ 3


「葵っていい匂いするよね。甘い匂い。シャンプー?」

小柄な葵の頭がちょうど美智の鼻先をくすぐり、思わずいつも感じていたことを尋ねていた。

もしかしたら葵は美智がこのまま体を暴いてくると構えていたのかもしれない。ただ自分を抱き締めるだけの美智に戸惑ったような顔をしながらも、質問には頷きで答えてくる。

「でも肌からもするよ?」
「あの……ボディソープも、あと、入浴剤も同じ匂い、です」
「あぁなるほどね。どおりで全身からするわけだ」

初めて葵から会話らしいものが引き出せた気がする。香りの正体がわかったことよりも、そちらのほうが美智を喜ばせた。

「パパが選んだの?」

だが次の質問にはまた無言の頷きに戻ってしまった。やはり葵が言葉で回答するような投げかけ方をしないとダメらしい。

「葵は休みの日、いつも何してるの?」
「……本、読んだり」
「そう、読書が好きなんだ。他には?」
「勉強、とか」

少しぎこちなさはあるけれど、きちんと返事は出来る。美智と会話をすること自体も嫌ではなさそうだ。ただ緊張はしているらしい。胸の前に置いた手がぎゅっと握られたままなのに気が付き、美智は空いている手を絡めに向かわせる。

指先をくすぐり、力を抜かせ、そして繋いでみると、葵からも素直に美智の手を握ってきた。甘やかされるのが好きなのは、何もセックス中だけとは限らないようだ。

「勉強っていえば。今日の科目しか見てないけど、葵は成績良さそうで安心した。授業サボらせたからどうかと思ってたけど、杞憂だったね」

褒められることにも弱いようだ。葵はどこかホッとしたようで美智を見つめてくる。

「じゃあ、もっとサボっても大丈夫そうかな?」

昼休みだけでは到底足りない。さらに午後の時間を使ったとしても美智と彰吾、二人が満足するのは難しい。だから悪い遊びに誘ってみるが、葵は拒否はせずとも頷きもしなかった。正解が分からないといった顔をして困っている。

「エッチなことしたくない?好きでしょ?朝も彰吾としたのに」

彰吾の名前を出すなり、葵の肩がぴくりと跳ねる。彰吾からは結局具体的に何をしたかは聞き出せなかったが、この様子ではそれなりなことをされたようだ。

「どこ触られたの?」

前回はスイッチの入ってしまった彰吾が夢中で葵を喰らい尽くしたせいで、美智はほとんど見学に回された。そして今日も一人で葵に触れたのだ。美智だって少しぐらい葵を堪能してもいいはず。

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