If Story

▽ side美智*


前回の呼び出しの二日後。美智たちは葵を新しい遊び場に招待した。応接室という名のそこは、外部からの来客がある時に使われるもの。つまり、ほとんど利用されることはない。

「ここはね、ほら、ソファがあるから」

痕が残るのを嫌がる葵を抱くには、自習室の机上や固い床では不便だと、二回の経験を通して学習した。だからこの場所を選んだと告げれば、葵は複雑そうな顔で革張りのソファセットに視線を投げた。

「鍵手に入れるの苦労したんだよ。だから昨日は会いに行けなかった。ごめんね」

美智が現れなくてホッとしていたに違いないが、葵は小さく首を横に振ってみせた。従順な仕草はもう反射的なものなのだろう。

「これからはいつでもここで遊べるからね」

目の前で部屋の鍵をちらつかせながら早速ソファへと誘えば、やはり葵はいい子についてくる。

「でも明日から中間だろ?しばらくは無理じゃね?」
「あぁ、そっか」

向かいのソファに腰掛けた彰吾からの指摘で、確かにと納得させられる。美智にとって学内の試験は取るに足らないイベントだから特に意識していなかったが、葵と遊ぶには不向きな期間だ。

一日の試験は午前中で終わってしまうから、昼休みというチャンスはないし、放課後すぐに迎えの車で帰宅する葵を捕まえるのは難しい。

「試験勉強していくって言って午後も学校に残ったら?」

背後から抱え込むように膝に乗せ、制服を脱がす美智の手は拒絶しないのに、葵を束縛する相手への言い訳は拒んでみせる。予想はしていたが、首を横に振る葵にがっかりするのは否めない。

「あぁ、携帯ちゃんと持ってきたんだね」

ベルトを外し、スラックスを下ろそうとしてポケット中の塊に気が付いた。朝声を掛けた時に言いつけていたのだ。

葵はどうして嘘がバレたのか、なんて愚かな質問はしてこなかった。ただ静かに頷き、そして今も大人しく美智に携帯を取り上げられる。そのまま向かいの彰吾に放り投げられる粗雑な扱いを受けても、文句一つ言わない。

「葵、パスワードは?」

彰吾の問い掛けに対しても、すんなり四桁の数字を答えてしまう。それでも勝手に操作し始めた彰吾のことが気になるのか、葵の視線はそこから離れなかった。

「ん……んんっ」
「冷たい?ごめんね」

染み一つない清潔な靴下だけを身につけた葵の両脚を抱え、その狭間にローションを纏わせた指を這わせると、びくんと大きく体が跳ねた。その拍子に細い髪も揺れ、美智の首元をくすぐってくる。

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