青空ファンタジー



1


「わ、わからん……」


「あ?それさっきやったろ、このばか」




とある日の休日。本当はゆっくり寝てお菓子食べてご飯食べて寝る(おいこら)つもりだったんだけど、ふと思い出ちゃったんだ。そう、明日はね、テストなんだよ。しかも私の大っ嫌いな宿敵数学。



ってことで、急遽(羊羹を出汁にして)ユウを呼び出した。彼は家が近所で昔から仲が良く、更に言えば先生お墨付きの私の家庭教師。頭いいし顔もいいから女子には相当モテるし、憧れる男もいる。が、中身を切り開けば冷徹口悪男である。(口が裂けてもこんなことは言えない)




「だからな、ここはこの公式使って当てはめんだよ」


「ほほーうなるほど」


「って言いながらどこ向いてんだ!ノート見ろノート!」


「いや、なんでこの顔にみんな引っかかるのかと人類最大の疑問に取り組んでおります」



「どあほが。んなこと考えてる暇あったら問題解け」





次はあほと言われました。いつものことですね、はい。






「で、どうやるんだっけ?」






はぁ、と重い溜息をつき、神田は再びペンを握る。その横顔は誰が見ても惚れるぐらいに整っている。って見てる場合じゃないんだった。






「ここはこの公式を使う。んでこの値を代入して式を展開…」







宿敵数学を戦うこと1時間。私にとっては1時間も戦っていたことにびっくりだ。休憩とおやつも兼ねて羊羹とお茶を出してくれば、微小に変化するユウの表情。これは喜んでいるのだ。





「……………」


「この羊羹、あれだよ?ユウがこの前言ってた和菓子屋の」


「…あぁ、駅裏の」


「そこそこ!」


「でかした」


「なにが」



買ってきたの、うちの母ですけど。ユウくん大好きな母がユウの為に買ってきたんですけど。なんて言えないけど、母にはユウが喜んでたと報告しよう。



ブブーと機械的に振動し始めたのは私の携帯だ。画面を見てみれば1通のメール。私の携帯にメールだなんて珍しい。いつもは女子からのふざけたLINEとやらが飛んでくるのに。



メールボックスを開けてみれば差出人はクラスの藤沢くん。確かサッカー部の子。何の用事だろうかと思いメールを見、私は固まった。そう、文字通り固まったのだ。いやまて、落ち着け、動け、そして見られる前に携帯を消すんだ。




「何固まってんだよ。誰からだ?」


「く、くくくくくらすのともらち!」




どもった上に噛んだ!まさか噛んでしまった!




「あ?何隠してんだよ」




と言った瞬間に携帯を取り上げられた。いや待て、お前に携帯を見る権限はないはずだ。って、見られたらたまったんじゃない!




「ちょ、ユウ返し「前から好きでした付きあっ」って何読んでんだばかやろー!!!」




がばっと携帯を取り返しに飛びつくもあっさりと避けられ、私はユウの膝の上へと落下。軽く鳩尾入った。おえ、くるし。







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