青空ファンタジー



風邪をひきました


「へっくち!」



季節は夏から秋への変わり目。どうやら私は風邪を引いたらしい。さっきからくしゃみは止まらないしなんだか頭もぼうっとするような気がする。



「……へっくち!」

「あらあら、風邪でも引いたの?」

「どうやらそうらしいですリナリーさん」



それにしても可愛らしいくしゃみをするのね、ルイて。


なんて言いながらも自分のカーディガンを私の肩にかけてくれるリナリー。なんて優しいんだ…!

でもそんなことしてリナリーに風邪でも引かれたらそれこそ大問題だ!(原因が私に貸したカーディガンなんてコムイに袋叩きにされる!!)



「大丈夫だよ、リナリー。これでリナリーが風邪を引いたら意味ないから部屋から取ってくる」


ついでに婦長の所にいって薬も

と立ち上がろうとしたときになにかが肩にかかる。上を見上げれば真っ赤な髪が目に入った。何か、はラビのパーカーだったらしい。



「これでも着とくさ」

「ラビが風邪引く」

「これぐらいで風邪なんて引かねえよ」

「でも…」

「お言葉に甘えて借りたら?ルイ」

「リナリーもそう言ってるし、な?」

「じゃあ…お借りします」



そういや、何か顔赤くね?

そう言い彼はぐっと顔を近づけてきた。前髪をよけ額と額がぶつかり、余りの近さに目を瞑る。…なんだ?この状況。恋人同士みたいではないか。



「…熱あるさ。リナリー薬持ってきてくんねえ?水も一緒に」

「わかったわ」

「俺はこいつを部屋まで運んでくるわ」

「え、ちょ…っ!!」


次の瞬間にはふわりと抱き抱えられた。目の前にはラビがいて背中と膝裏に回された腕、視界の高さからして、これは俗に言うお姫様抱っこだ。



「ラビ降ろして!歩けるから!」

「だーめ」

「目立つし恥ずかしいし、降ろして!」

「だからだめさ〜」

「お、重いし、ね?ラビ、ね?」

「あのなあ、」



ふう、とため息を吐き立ち止まる足。じっと翡翠の目に見つめられれば、吸い込まれるように逸らせない。どくどくと脈打つ心臓。なにこれなにこれ。



「重くないし、全く。それにな、好きな女の子にはとびっきり優しくしたいの、俺。風邪なんて引かれたら心配になるけど看病したいんさ。…一緒にいれるとか思っちゃったりしてるけど。だからさ、ちょっと俺の恋心に付き合ってくんね?」



何も言えなくて真っ赤な顔のままこっくりと頷けば満足したように微笑んでまた歩き始めた。


これはもしや、今まで何も気付かなかった私もかなりの鈍感ではあると思うけど流石にこれは気付く。でもどう受け止めればいいのだろうか。告白された?どうしたらいい?


「あの、ラビ…」




「返事は、ルイの風邪が治ったら聞かせてさ」










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