Happy Birthday Levi 25/12/2019
04 ケーキを焼く方法
非情で冷酷、人類最強、鬼神、悪魔、怪物…
喩えられるのは人ではなかったりする。
今、私を抱く優しい手。私の仲間の命を糸も容易く葬った、手。
かつての敵国。その国のキング。リヴァイ・アッカーマンの手だ。
なまえは一国の姫君である。この国の王は3人の子どもに恵まれた。ガラス細工のように大切に育てられるべき宝。侍女達にとっては手を焼くことばかりなのだが…。
第一王女である姉はお淑やかで優美。第二王女のなまえはその真逆だった。見た目が麗しいのは明白だったが、物心ついたころから、華やかなドレスやジュエリー等には興味を示さなかった。彼女にとって、家臣である兵達と戦について学ぶことの方が有意義で、趣味はたまに山や森に出かけ狩りをすること。剣舞を習い、屈強なる兵士と手合わせを重ねて育った。兵法ですら国随一の軍師から教わり、何重にもなる心理戦には心を踊らされ、戦の魅力に取り憑かれてしまったのだ。その頃になると、両親である王と王妃からは産む性別を間違えたと飽きられていた。立派な王子になっただろうに、と。
だから、婚約者を紹介されても、男勝りな性格から破談になることばかり。当たり前のように第一王女には相手が決まった。
これでいい。しっかりと次期王となる人間はいる。弟がいるのだからなまえは自由に生きていたかった。男兄弟がいると、女は楽だ。そのうち国を離れ、政略結婚をさせられる。それまでの間、好きなことをしてもいいだろう。早かれ遅かれこの命はお国の為に捧げる運命なのだ。
無理を承知で戦への参加を父上に申し出ると、あっさりと許可を出されて拍子抜けした。家臣たちは危険だからと猛烈に反対したが、なまえに好きにさせろと王が言えばそれまでだった。皆の心配を他所に、次々と武勲をあげるなまえ。王族でありながら、遂には大軍を率いる将になっていた。
裏で怯えて、表に出てこない王。
「儂は王だ。儂の代わりはいない。兵士の代わりはいくらでもいるだろう。戦に出ようなどと、お前は変わっている」
そう笑い飛ばしていた父の顔は忘れもしない。あの場にいたのが、家族である私だけで良かった。
王と違い、前線で剣を振り、仲間を鼓舞して回る姫君。小さな背中が与える影響は計り知れず、戦場でこれだけ力になることはない。守るべき国の象徴が、共に血と汗を流し戦っている。死なせてなるものかと、兵達の力は漲るばかりだ。
負けを知らないなまえが初めて両膝をついた。
彼女の喉に刃の切っ先を突き立てるのは、戦をしてはならないと噂される武力最強と名高い国のキング、リヴァイ・アッカーマン。
別国と戦の最中、何故か横槍をいれてきたのだ。「なまえ様の命だけは」と懇願する兵達。彼等の言葉に耳を傾けたのかなんなのか。情けをかけないと有名な鬼神が、敵将の首を跳ねずに和解を申し入れた。
条件はたった一つ。なまえを妃として迎え入れる。それだけ。
所謂、政略結婚。
生贄に等しい。
これほど強大なバックはない。と、父上はとびつき、あっさりと承諾した。なまえが戦に出ると申し入れた時と同じように。迷いなどなく。敵国の下になっても構わない。武力最強と言われる国と繋がりを持てば、これからは他の国から攻められることは随分と減り、安全になるだろう。
一国の主として、正しい判断なのだ。きっと。
しかしなまえにとっては違う。
女でありながら、戦場で頑張ってきた。周りの女達からひそひそと蔑む声が聞こえたって耐えてきた。自分が選んだ道で、好きなことをやらせてもらっていると…。
それ故性格に難有りとされた。女であることも生かせず、国に何も貢献できないと思いやっと自分の力で、存在を証明出来ていたと思っていたのに。私の力は国にあるべき力だと過信した。その価値を奪った相手に下らなければならない。
これ程の屈辱があろうか。
そんな男に股を開かなくてはならない初夜は、情けなくて、惨めで、苦痛だけ。そう思っていた。
身体を清めるための湯浴みは数人がかりで、体の隅から隅まで視姦され、磨かれた。彼女らにはない刀傷や擦り傷だらけの肌を見て笑う声が聞こえる。微笑みではなく嘲る声だ。
私にとってこの傷は、誇れる勲章。誰に褒められることもなかった私の、唯一の存在意義。温室育ちの陶器みたいな肌を想像し拝みたかったのなら、ご愁傷様と言ってやりたい。
2人で使うにしても大きすぎるベッドの上。レースの天蓋カーテンが蝋燭の灯りを吸い込んで、真っ白なシーツに淡い光が広がる。
「俺を憎んでいるんだろう?ベッドの上なんて、暗殺するにはもってこいだな」
キングがなまえのネグリジェをひん剥いた直後、挑発ともとれる声をかけた。
武器を隠せる場所なんてもうどこにもないのに。
「そんなことしませんよ。私情で貴方を殺したら、母国が疑われる。そうなれば貴方は国を焼きに行くでしょう?」
「俺は殺された後だが、おそらく俺の部下がそうするだろう。なまえがいなくなった国の武力などたかが知れているから、楽な仕事だな」
「…私は貴方に逆らったりしません。誓います。だから、母国が他の国に襲われるようなことがあったら助けにっ」
「…健気で憐れなお姫様だな」
「え?」
キングが漏らした言葉の意味がわからず、首を傾げるなまえ。答えは得られないまま、湯浴みの際に惨めな思いをした消えない傷達に、キングは優しく唇を這わしていった。
なまえの"誇り"を讃えるような、労わるような、そんな行為だった。余計なことはいいと振り払うことが出来なかったのは、彼の唇が、あまりにも心地よすぎたから。そのせいで泣き叫んで拒否する言葉は、最後まで頭の片隅にも浮かんでこなかった。
毎夜毎夜訪れる時間。
肌が触れ合い、キングの熱が身体に染み込んでいく度に苦痛だと捉えていた時間は別の意味に変わっていく。
こちらが心を開いていけば、感じ取れるものが多いにあったのだ。戦場で出会ったときのあの鋭い目。圧倒的勝者の貫禄。殺意剥き出しの視線は今や慈しみが感じられた。別の意味で食べられてはいるけれども。私自身が快楽という欲にどっぷりと埋もれている。
(なんで、心を開いてしまったんだっけ…)
「なまえ…、なまえっ」
吐息交じりに名前を呼ばれると、女の部分がひどく疼くようになってしまった。
(そうだ、私の名前を呼ぶ声が…優しすぎるからだ)
生国ですら聞いたことがない音で耳に届く私の名前。
人ではないものに喩えられる者の口から発したとは思えない、情に満ちた声。
所詮噂は噂。恐れられるが故に付けられた異名だ。本当のリヴァイ様はこんなにも…。
「っ、リヴァイ様…あっ…」
私も、貴方の下で戦ってみたかった。
城の一室で大人しく待っているだけなんて、性に合わないの。
どんな指示を出してくれるのだろう。
ピンチに陥ったとき、どう切り抜けてきたの?
どんな言葉で、仲間を鼓舞するの?
きっと、貴方の背中を見ているだけで力が漲るんだろうな。
息も絶え絶えに名前を呼びながら、一際甘い嬌声を上げてなまえが果てた。反って浮いた腰の隙間に腕を差し込み、力強く抱きしめたキングは、ビクビクと痙攣らせる彼女をさらに数度激しく揺さぶった。最後に肌と肌がぶつかる大きな音がして、なまえの中でキングが達する。
余韻にどっぷりと浸ったまま2人は蕩ける視線を絡ませた。乱れた呼吸が重なる。そのまま唇を合わせるのはとても自然な流れだった。
キングが戦から無事帰還した日、なまえは荒々しく抱かれる。
何かをぶつけるように、キングはなまえに全てを注ぎ込む。
なまえには分かっている。
助けたくても助けられなかった命を嘆いていることを。経験したことのある感情だ。
私だから、分かってあげられることがある。
支えたい。
皆の前では気丈に振る舞うリヴァイ様の、弱い部分。人間味溢れる貴方を私なら包み込んであげられる。
「リヴァイ、…様っ、ぁん、…愛してる、っ」
いつからだろう。憎しみが、愛に変わったのは。いくら考えてもよくわからない。なまえにとって愛を唱えることは、生まれて初めてのことだから。今まで知らなかった温かな感情を教えてくれるのは、リヴァイ様だ。
顔に、小さく水滴が跳ねた。
紛れもなく、リヴァイ様から流れ落ちたもの。
勇しく戦う彼は、今、なまえの胸の中で小さく震えている。まるで、仲間と逸れた野ウサギのよう。
一人ではないと安心させたくて、私は何も見ていませんよと伝えたくて、なまえはキングを優しく優しく抱きしめていた。
いつかリヴァイ様に尋ねたことがある。
「王なのに、戦に自ら出陣されるのは何故ですか?貴方が死ねば、国も滅びてしまうのに」
少なくとも、なまえの知る王は出陣したりしない。したとしても後方で指示をだすだけだ。先陣をきって敵軍に乗り込むなど聞いたことがない。
「皆、国の為……俺の為と叫びながら戦っている。戦場に出て、兵を率いていたお前なら理解してくれるだろ?あの場に王がいること自体が武器なんだ」
「…そう、ですね(ああ、だからだ……この国が最強と言われる所以は)」
「大人しく、国で待っていることなんて出来ない。遠い場所で、知らない所で、仲間が死んでいくのは耐えられねぇからな。だから俺も一緒に戦う。もしその場で倒れることがあるなら、俺もそれまでの男だってことだ」
嘘偽りない言葉は、死ぬつもりなんてさらさらないと言いたげだった。
夜に見せる優しい表情はなく、壁に貼られた地図を見つめる視線は、まるで火矢のように鋭い。
---
国内はキングの生誕祭が目前とあって活気づいていた。
国民皆で、街路や外壁に華やかな装飾を施している。心待ちにしているのだ。大好きなキングがお生まれになった日だから。
(こんなに、国中から愛されている王様がいるなんて……)
なまえは与えられた立派な部屋のバルコニーから、庭を挟んで遠くに見える街を眺めていた。小さく見えるそれらだったが、遠くからでも伝わる祝賀の雰囲気は気分を明るくさせていく。
(私は、この国の方が好きかもしれない)
国全体が一つになれる。
表面上だけ整えることは簡単だが、それすら出来ない王がいるのに。我が父上がそれだった。しかしリヴァイ様は内面から皆を統一させてしまう。
嫌々だった政略結婚は、案外なまえにとっていい話だった。
今では、愛を囁いてしまうほどに、彼に夢中になっている。最強と言われる男だが、それでも生身の人間には変わりない。戦があると言われると不安が胸を覆う。万が一、リヴァイ様に何かあったら…そんな恐怖に駆られる。共に戦えるなら、こんな不安は起きないだろう。守る腕、自信はいくらでもある。
ある日、凶報が入った。
数日後にはリヴァイキングの生誕祭が控えている、そんな陽気を打ち消す報せ。
なまえの母国の姉妹国が、この国目掛けて行軍していると。
「目視ですが、歩兵1万!騎馬3万!いずれにせよ大軍です!」
そんな、と息を飲む家臣達。それもそのはず。前回の戦から、一月も迎えていない。傷も癒えていない兵がほとんどで、武器も調達している最中なのだ。
「キング!この場をお借りして言わせて頂きます!これもクイーンと御結婚なされたからでは?あの国の本来の狙いは、この戦だったのではないのですか!」
「戦場に出されるような娘が、本当に大事にされているとお思いだったのですか!」
「破談ばかりの姫ならば、生国に見捨てられていてもおかしくないではありませんか!」
どれもこれも一理ある。
そんな風に捉えられても仕方がない。このタイミングで、母国と繋がりの深い国が仕掛けてくるなんて。父上に疑いがかけられても弁解の余地すらないし、庇えば余計に疑われてしまう。その辺の駆け引きは戦に出ていたからよくわかっているつもりだ。
父上に大事にされていたのは、長女である姉の方。それから、さらに溺愛されていたのは次期王である弟だ。目の当たりにする愛の差に、辛いなんて思ったことなんてなかった筈なのに、今更なんで、落ち込んでしまうんだろう。
(…愛する気持ちをキングに教えられたから?)
腕を組んだまま、玉座に鎮座したままのキングは、黙ってなにかを思案しているようだった。
このままだと、キングとしての信頼がなくなってしまうかもしれない。私は国に帰らされるかも…リヴァイ様と離されることは、何よりも避けるべき優先事項だ。
「私に出陣の許可を願います。リヴァイ様」
坐するキングの隣に立っていたなまえは自ら名乗りをあげる。勿論、すぐさま反対の声があがった。「裏切るつもりだ」「我々を騙していたのだな」「お前など、キングに相応しくなどないわ」心ない言葉が胸にささる。皆から歓迎されていないことくらい分かっていたのに。ここまで信用されていなかったなんて。
「黙れ!…言っておくが、俺は政略結婚のためになまえをクイーンに迎えた訳じゃねえ」
だったらどうして!と声を荒げる家臣に、キングは続ける。
「あの場で、俺がこいつの首を跳ねられなかったのは…惚れちまったからだ」
「…リヴァイ様?」
「前々から興味があったんだ。俺みたいな変わり者に。なのに…一目見ただけで……あの時、心の中では俺の方が片膝をついていたんだぞ」
皆がいる前でキングがなまえの手を掬い上げ、甲に小さなリップ音を立ててキスをした。
それは家臣達を納めるための演出だったのかもしれない。そうなのだとしても、なまえは救われた。新たに誓い直した。この国を、リヴァイ様を護りたい。私のやり方で。
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凶報が入ってから1日と半日が過ぎた。
キング率いる2万とクイーン率いるたった2千の騎馬兵。この2千の騎馬は、リヴァイの直下兵だ。敵の約半数で開戦することになる。
出陣前、軍服の下に防具を着込む。寝室で、キングとクイーンがお互いに着せあった。生きて帰ってくるのだと誓いを込めて。
「リヴァイ様、御武運を」
「なまえもな」
愛を確かめるにしては些か勇しすぎる格好で、2人の影が重なる。唇を重ね、舌を絡ませ、呼吸の合間に愛を紡いだ。
リヴァイ率いるキングの軍勢が、先頭とぶつかった。
敵が投げ飛ばされていくのがなまえにも見える。キングがその場にいると解れば、軍の向きは一点集中になった。それを機に、クイーン軍が横腹を突く。2千を更に、分隊に分け、子どもの嫌がらせのように、大軍の横腹を突き続けた。危険になれば引く。そして意識がキングに向けばまた突く。地味だが、敵の注意が散漫になるには十分だ。
さすがはキングの直下兵。一人一人の力が申し分ない。はやくキングの元へと駆けつけたい意志が、振るわれる剣から伝わってくる。
「クイーン!まだか!」
「はやくしないと、キングがっ」
たしかに、猪突の勢いで攻め入っていたキング軍が足止めをされている。軍旗の数が減っているのだ。あのまま後ろと切り離されてしまったら、いくらキングといえども敵軍の中に取り残されて危険な状態になってしまう。
「分かっている!もう少し…」
その時、敵軍から大声があがった。
クイーン軍の背後を指差す者もいる。
振り返り確認するなまえは、目頭が熱くなり、胸にこみ上げてくる熱を感じていた。
---
「なまえ、何か手があるのか?」
「援軍を要請します」
家臣からの止まない野次を受け止めながら、なまえは勝機を訴えた。
あの弱腰の王様が援軍など送るものか!とまた怒号が飛んでくる。言われなくともそんなこと分かっている。だから、なまえが援軍を頼むのは…
「国王に援軍を要請するのではありません」
「なまえ、お前…」
「私と共に戦ってきた、かつての将達にです」
その場にいた皆が息を飲んだ。
馬鹿げていると思ったのかもしれない。国王の許可がなければ、勝手に軍が動いたりしないのだから。結局は国王の意に関わってくる。
「勝算はあるのか?」
「……賭けです」
「気に入った。いいだろう。なまえ、お前に兵を預ける。必要な数を言え」
「2千で構いません。そのかわり、援軍がくるまでの間、リヴァイ様に囮になって頂きたい」
「貴様、キングにもしものことがあれば、どう責任を取るつもりだ!」
待て、と制したのはキングだ。なまえに続けろとその視線で促す。
「援軍が到着しだい、預かっていた兵をリヴァイ様へとお返し致します。援軍と共に奴等の横腹を食い破り切り、敵将の首を獲るのが私の役目です」
「俺を囮にしてか。相手も意表を突かれるだろうな」
面白い、と頷いたキングに、家臣らは従うしかない。
「ただし、死なねぇことが条件だ」
「はい」
真正面から受け止めるリヴァイ様の…キングの視線。私だってさらさら死ぬつもりはない。力強く頷いてみせると、満足気に頷き返してくれた。それだけで、やってやる、と内から熱くなってくる。
「私を疑うのも無理はありません。きっと私が貴方達の立場なら、同じようにしたことでしょう」
愛する主の身を案じて、疑心暗鬼になることは信頼たる家臣の最低条件だ。
彼等は十分すぎる程に備えている。
私は、そんな貴方達と、もっと喜びを共有したい。この国の素晴らしさを、分かち合って生きたい。
「皆さんと同じように、私も楽しみにしているんです。キングの生誕祭」
なまえにとっては初めてお目にする日だ。
この国で、この国の王を、我が夫の生誕を迎えるのは。忌み嫌われているであろう自分も民と一緒に喜び合えるその日。大事な日を潰されてたまるものか。
なまえの緩やかに弧を描いていた口元が、硬くきゅっと結ばれた。キングを見つめていた優しい目元には、鬼が宿った。家臣達の身体が知らず知らずの内に硬直する。
「そしてこれが先程の答えです。万が一にでもありはしないが。キングの命を守れなければ、私を火炙りにでも、車裂きにでも処すがいい」
---
啖呵をきったものの、少々の不安はあった。本当に、父上が裏切ったのだとしたら…。援軍は来るはずもないから。
そして、はためいている軍旗は母国を印したものが一つとしてない。
これが父上の答えだ。
全ての軍旗は、かつてなまえの為に作られたもの。なまえの私軍である。おおよそ、2万。
すぐに音響弾を打ち上げた。
キングの直下兵が、「クイーン御武運を!」と叫びながら去っていく。キングの背後から、止まってしまった勢いを盛り返す為、キングの鉾となり盾となる為に向かった。
敵軍が、こちらに気付き陣形を整えようとするが間に合わない。それ程までに、援軍の足が速い。
なまえ様、なまえ様と声がする。
「軍旗がないと締まりませんから!倉庫から引っ張り出してきました!」
「我らは貴女の兵です!」
「国王に仕えていたのではない!」
「また共に戦えること、誇りに思います!」
敵軍へと斬り込みながらなまえへの忠誠を口にする兵達。なまえにも力が湧いてくる。走り続けて斬り続けて、鈍りかけていた感覚が戻ってくる。ぎゅっと、血に塗れた柄を握り直した。言いたいことは山ほどあるが、取り敢えずは…
「よく来てくれたッ!お前たちは私の最高の部下であり友だ!後で再会の酒を交わすぞォ!」
呼応する兵達の勢いは凄まじく、クイーン軍はなまえの宣告通り、敵本陣の横腹を食い進んだ。真中後方で怯えていた敵将の首があっさりと空高くに舞う。落胆する彼の部下から、恨みの切っ先を向けられるが、再会に喜ぶクイーン軍には歯が立たなかった。
正面を斬り進んできたキング軍とも合流する。背中合わせで残党を蹴散らす2人の殺気に味方の勢いは増すばかりだ。
生国に宣戦布告、いや牽制のつもりで、そのままキングの軍は行軍する。攻め入ってきた軍を制圧しただけでは生温いとなまえが言ったのだ。
「喧嘩を売る相手を間違えたと躾ておかないと」
攻め入る先から飛び出してきた、かつてのなまえの兵達も「なまえ様の指示とあらば」と納得した。
「ねえ、リヴァイ様。貴方の誕生日プレゼントにお城なんてどうですか?」
「誕生日ケーキにしちゃ、ちとデカいな」
キングとクイーンが4万からなる行軍の先頭を闊歩する。
これからどのように、そのケーキを焼くのかと戦法を練っている最中だ。
国を守るための共同作業。
鬼神と鬼神が放つ雰囲気は、小柄な2人の背中から存分に放たれていて、始まってもない戦の勝敗は誰が見ても決していた。
今年のキングの生誕祭は、ただの祝賀だけではなく、クイーンが遂に民から本当の意味で受け入れられる日となるだろう。
-end
《Live, happy birthday !》
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