Happy Birthday Levi 25/12/2019
16 12月25日のリペア
「さぁ、ウイングス対ユニコーンズの対戦、7回ウララッキー7、得点は4対3とユニコーンズ1点リード。ウイングスの攻撃。バッターは6番セカンド・ルーキーアッカーマン。ワンボールワンストライクランナー一・三塁、アッカーマンに一打出れば逆転です」
(アッカーマン…?どこかで聞いた名前だけどまさか……)
仕事から帰っていつものようにビールを引っかけながら野球を観ようとTVの電源を入れた途端実況から流れてきた名前に、忘れかけていた過去が私の脳裏にちらついた―
12月25日のリペア
アッカーマンと名乗るバッターが放った打球は緩やかな弧を描きながらライトへと伸びていきライトスタンドへと消えていった。
「打った!!打球はライトへと大きく伸びて、スタンドに突き刺さった!リヴァイ・アッカーマン逆転スリーラン!!6対4、ウイングス2点リードに変わりました!アッカーマン、ガッツポーズを決めながらダイヤモンドを駆け回ります!」
(リヴァイ…、やっぱりあいつだ)
TVからの実況のアナウンスで彼のフルネームが流れ、私は思わず右手に持っていた缶ビールから手を離してしまった。
―リヴァイは小学生時代の幼馴染で野球が何よりも大好きだった。
同じ学校で6年間同じクラスだった彼は毎日のように私にちょっかいを出してきた。いや、ちょっかいと言うよりはいじめと言う方が正しかった。髪を引っ張られたり、持ち物を取られたり、背後から突然驚かせられたり………、当時の彼は口が悪いだけじゃなくとにかくやんちゃ盛りだった。涙で顔を濡らしながら帰宅した事も珍しくなかった。
そんな彼に人生の転機が訪れたのは小学校の卒業式の直後だった。
「なまえ。俺はな、ずっとお前に言いたかったことがある。まず長い間酷い事して悪かった。でもそれはお前が好きだったけど、どうしても言葉で上手く言えなかったからこうするしかなかったんだ。それと…、俺はアメリカに行くことになった。野球の腕を磨くためにな。だから暫くなまえには会えないかもしれねぇ」
「…そう、私はようやくあんたと離ればなれになれて清々してるよ。ほんと最後の最後まで人騒がせなんだから」
リヴァイの将来の夢はプロ野球選手。大人になった今腐れ縁だった幼馴染の夢が叶って悔しいのか喜ばしいのかわからず、私は複雑な気分だった。
―数ヶ月後、その日の仕事終わりは一人酒を楽しもうと繁華街の地下のバーへと足を運んだ。スタッフに案内されて座った席の隣を見て、私はハッとした。
「!!リヴァイ、なの…?」
「当たり前だ。他の誰でもねぇよ」
「それにしても驚いたよ。まさか本当に野球選手になってたなんて」
「俺が決めたことだ。お前に口出しされる筋合いはない」
「む…、相変わらずかわいくない奴…。ところでアメリカにいた間何してたの?」
「まぁ色々あってな、なまえには関係のないことだがな」
聞くと彼は小学校卒業後中学・高校はアメリカのインターナショナルスクールに通い、首席で卒業後はいつの間にか帰国してアルバイトもこなしつつ大学に通いながら野球と学業を両立させていたという。
「それとこれ俺の連絡先と家の地図だ。何かあったらそいつを頼りにすれば良い。お前の連絡先も教えてくれないか?」
そう言って自分の携帯番号とメールアドレス、手書きの地図が書かれたメモを私のグラスの横に置いた。地図の上に書いているアドレスはさしずめ自身のSNSのページだろう。
私も自分の携帯番号とアドレスが表示されたスマホ画面を彼に見せると、その場で番号を登録してくれた。
ここで私達は初めて互いの連絡先を交換した。
「それと来月の25日は暇か?出来ればその日は空けといて欲しいのだが」
「うん、でもクリスマスと何の関係があるの?」
「長くなるだろうからその時話す」
そして約束の日、イヴが明けたクリスマス当日の街は少し静かな雰囲気だった。
それでも嬉しそうに見つめ合っているカップルがちらほらいる。
私はリヴァイの家に向かう途中輸入雑貨の店で彼に渡す物を適当に買っていった。いくら昔嫌いだった異性の家とはいえ手ぶらで来るのも失礼な気がしたからだ。
リヴァイの自宅は都心部から少し離れたマンションの一室だった。プロ1年目の新人とはいえさすがは一流アスリート、こんな立派な城が持てて羨ましい。
「やっと来たか」
「うん、メリークリスマス。あとこれ行く途中で買ってきたの。受け取って」
リヴァイは受け取った紙袋を開けて思わず息を呑む。それもそのはず、中身は英国産紅茶の詰め合わせ。リヴァイは紅茶が大好物だったらしい。
「なまえよ、お前俺の好物を知っいてたのか?」
「違うの。手ぶらで来るのもなんだから、何か買ってこうと買い物してたら目についた物を選んできた。それとも迷惑だったかな…」
「………」
リヴァイは一旦手に持った紅茶の箱から視線を離して、私に向かい直した。
「おいなまえ、今日はクリスマスの他に何の日か知ってるか?お前はとっくに忘れてるだろうが、今日は俺の誕生日でもあるんだ」
「へぇ…、今更だけど誕生日おめでとう。それとあの時の告白だけどさ、私本当は嬉しかったんだよ。なのに突然アメリカに行くとか言い出したからびっくりしちゃって。あの頃は今までの事もあって私も意固地になってたけど…」
きっと今だったら素直に好きだって言える、そう言葉を続けようとしたが突然リヴァイに口を塞がれた。唇に触れた彼のそれは乾燥した空気のせいか少しカサついていたが、初めて味わった高揚感に胸が高鳴った。
「……突然どうしたの?」
「やっと受け入れる気になったようだな。お互い10年も経つとこうも違ってくるとはな」
口が悪く不器用だが好きな事にはのめり込みやすく根は一途な彼。結局海を渡ってからも、帰国してプロ入りしてからも、私への気持ちは変わることはなかったのだ。
きっと私のことを忘れようにも忘れられず思い悩んだ事もあっただろう。
そして今日、ちぐはぐだった二人の仲は彼の誕生日を機に修復されたのだ。
「今年はダメだったが来年こそはなまえやチームに恥じない活躍をして、必ず優勝してお前にもチャンピオンフラッグを見せてやる。なまえの事は野球と同じくらい大事だからな」
「バカ…、せめてこんな時ぐらい私が一番大事だって言ってよ。でもせっかく夢が叶ったんだから来年も頼むよ」
最初の別れから10年、今度は二人ともこれまでと違うかたちで新たなスタートをきれそうな気がした。
end
後書きも兼ねて一言。まず久しぶりに夢書きにトライしてみたのですが、25,000文字の字数制限に加えて相変わらずストーリー構成と文章に表すのに悪戦苦闘しましたが書いている間非常に楽しかったです♪(^^) もちろんリヴァイさんへの愛も1字1字まんべんなく詰め込みました♪きゃー///
(*ノ▽ノ*)
そんなわけで(自分含む)ファンや兵長に喜んでいただけば嬉しいです♪
縁さん、素敵な企画をありがとうございました!
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