Happy Birthday Levi 25/12/2019
19 今日はもうベッドで
ふかふかで 気持ちいい
まだ目を開けるのがもったいなくて
枕にすりすりと頬擦りをし 足を横に伸ばしベッドの感触を堪能する
…あれ?
ここで まどろんでいた意識が完全に覚醒した
私のベッドはお世辞にも「ふかふか」とは言えない
「ゴワゴワ」が最も適している いや、「ゴツゴツ」かも
って、そんなことはどうでも良くて
寝返りをするのもやっとなくらい狭いのだ
こんな風に足を横に伸ばしたら ベッドからはみ出てしまうはずなのに
どこまでもシーツが続いている
恐る恐る目を開けると 案の定
「…どこ、ここ?」
見覚えのない部屋だった
むくりと起き上がると寒さにぶるりと身震いした
そこで初めて自分が裸なことに気が付いた
…最悪な事態になっている気がする
パニックになりそうになるのを耐え
ガンガン痛む頭で、必死に昨日の記憶を辿る
昨日はそう 年に数回の兵団公認の親睦会という名の飲み会だった
毎年 私のような下級兵から幹部まで出席する
兵が気兼ねなく楽しめるように気を使っているのか
無礼講のお祭り騒ぎに付き合ってられないのか(多分後者だ)
幹部の皆さんは顔を出す程度で帰ってしまうのだけれど
食堂で行われる質素なものではあるが
ビールは飲み放題だし、いつもよりちょっとだけ豪華な食事も出されるから
一般兵は皆この会を楽しみにしているのだ
私も例にもれず同期と同じテーブルで楽しんでいたはずだ
その場の雰囲気に流され
確かに飲みすぎていた…気はする…のだけど
その後が全然思い出せない…
ふと気が付くと、いつからだろう
ザァーッと水音がする
どうやら隣の部屋は浴室らしく
誰かがシャワーを浴びているようだ
…つまり、昨日の相手ということになる
次々と同期の顔を思い浮かべては消した
だ、誰であろうと最悪だ…
どうしよう 逃げ出したい…けど
相手が誰だかわからないのも怖い
せめて服を着ようと見回したけど見当たらなかった
左側には浴室
前方のドアは鍵が付いてないのをみると
この部屋全体の出入口ではなさそうだ
続き部屋があるらしい
数人で使っている私の狭い部屋とは大違いだ
同期で個室を与えられている者はいただろうか
いや、そんな者はいない
外に出て何処かに泊ったのだろうか
考えれば考えるほど 不安に飲み込まれそうだ
ベッドの上で膝を抱えて相手が出てくるのを
固唾を飲んで待った
まるで 刑の執行を待っている罪人の気分だ
息が上手くできない
やっぱり逃げ出してしまおうか
前方のドアを見つめていると
「やっと起きたのか。」と声を掛けられた
ギギギッと音がするほど、ぎこちなく振り向けば
「リ、リヴァイ兵長っ?!」
タオルを腰に巻いただけのリヴァイ兵長がいた
余りにも予想外な人物に思わず叫んでしまった
そんな私の態度に「あ?」と眉をしかめ
まだ濡れている髪をガシガシとタオルで拭きながら近づいてきた
「お前まさか、覚えてねぇなんて言わねぇよなぁ?」と
至近距離で凄まれて、肯定出来る強者はいるのだろうか
「ま、まさかぁ。ちゃんと覚えてます…よ…。」
声が上擦ってしまったのは仕方がないと思う
顔を背ける私に
「ほう、じゃあ何でも言うこときくって言ったのも覚えてるよな。」
と、リヴァイ兵長はとんでもない事を言い出した
「え、えぇぇっ?!」と慌てふためいていると
リヴァイ兵長が「ふっ。」と表情を和ませた
あ、笑った
リヴァイ兵長の珍しい表情に呆けていると
「ほら、洗っといてやったぞ。」と私の兵服を渡された
「え、えぇっ!す、すいません!!」
兵長に何やらせてんの、私!!
狼狽える私に
「お前の為じゃねぇ。あのままにしてたら部屋がビール臭くなるだろうが。」
と、素っ気なく言われたのだが
そんなにお酒臭かったかな〜?と思っていたが
そうだ
私、酔っぱらってよろけた同期に頭からビールをぶっかけられたのだ
「ぎゃはは!なまえわりぃ〜、わりぃ〜!!」
大して悪いと思っていない同期の顔がちらつき眉間に皺が寄った
あいつ後で絶対ぶん殴ってやる
それから… それから??
「おい。」
考え込んでいると、リヴァイ兵長が私を覗き込んでいた
思わぬ距離にのけ反ると
「お前やっぱり覚えてないだろ。」と呆れたように言われてしまった
「え、いや…。」と返答に困っていると
「思い出させてやろうか?」
とにやりと笑うと パサッとその場に押し倒された
上半身裸のリヴァイ兵長のドアップだ
うわぁぁぁぁぁぁぁ、む、無理だ!
慌てて押しのける
兵長は本気じゃなかったようで簡単にどいてくれた
「わ、私、支度もあるので もう部屋に戻ります!」と急いで服を着た
ふわりとリヴァイ兵長と同じ洗剤が香った
「くくくっ。」なんて笑っている兵長を残し 私は部屋を飛び出した
ほ、本当に私 兵長としちゃったのだろうか
あんな経験豊富そうな人に私のお粗末な裸見られたの?!
信じられない
うわぁ 泣きそうだ
…リヴァイ兵長を満足させられたのかな
一抹の不安が過ぎるけれど「最悪」とは思わなかった
覚束ない足取りで廊下を歩いていると
「やあ、おはよう。」と声を掛けられた
顔を上げると、ハンジ分隊長とミケ分隊長がいた
「お、おはようございます!」
2人に対して後ろめたさを感じる必要はないのだけれど
ドギマギしてしまう
「こんなところにいるなんて珍しいね。」
こんな朝早くに幹部の部屋しかない棟にいるんだから当然の疑問だ
なのに、勘ぐられているように感じて
他意はないのにいちいち反応してしまう
近づいてきたハンジ分隊長が「あれ?」と声を上げた
な、何かおかしなところでもあっただろうか
焦る私をよそに
ミケ分隊長の如く クンクンと鼻を動かした
ちなみに彼も隣でやっている!
や、やめてほしい
「シャンプーでも替えた?」なんて言うハンジ分隊長に
「…リヴァイの匂いだ。」ってミケ分隊長が私の代わりに平然と答える
どきりと心臓が跳ねた
洗剤の香りかと思ったのに ミケ分隊長のことだ
きっと リヴァイ兵長の移り香のことを言っているに違いない
「あぁ、そうか。リヴァイと同じシャンプーなんだね。」
ってハンジ分隊長が納得してくれたのに
ミケ分隊長が「リヴァイの匂いだ。」って
2回も言った!! もう黙ってほしい!
これ以上嗅がれてはまずいと 2、3歩後ずさると
ドンッと何かにぶつかった
振り向くと、そこにはリヴァイ兵長
「ベルト忘れていったぞ。」と──
手には確かに 私のベルト
でも、でもこの状況で普通渡さない!!
「へぇー、ベルト…。」「ほぅ…、ベルト。」
互いに呟く2人の分隊長の視線が痛い
絶対にばれた
ニヤニヤの2乗攻撃も兵長にはどこ吹く風のようで
無表情のまま手を 突き出したままだ
仕方なく受け取ると 兵長が一歩踏み出し
耳元で
「今夜も来いよ。」と囁いた
バッとリヴァイ兵長の顔を見やった
こ、この人信じられないー!!
きっと耳まで赤くなってしまっているだろう
2人には聞こえただろうか 恐ろしくて顔を見られない
「返事は。」というリヴァイ兵長の言葉に
悲しいかな、体に染み込んだ習慣というものは─
「はいっ!」と勢いよく 敬礼までしてしまった
部屋に戻っても 気が動転していて
朝帰りをした私に、ルームメイトは興味津々だったけれど
彼女たちの言葉も耳に入ってこなかった
「どうしよう どうしよう」だけが、頭をぐるぐるして
何も手につかず 結局朝食を食べ損ねた
────
気だるい午後だ
訓練も一段落したから 紅茶でも飲もうかと思っていたら
ハンジの野郎と出くわした
「やぁ、リヴァイ!今日は随分とご機嫌だねぇ。」とニヤけた面で言ってきた
「何が言いてぇ。」と、こいつには効かないと分かっていたが
心底ウザそうに顔を顰めてやった
案の定 気にも留めずに
「別にぃ。ただあの子のお陰かなと思って。」と視線で促されれば
その先に 立体機動の訓練中のなまえがいた
相変わらず 危なっかしい
あいつと初めて会ったのは
俺が指導官として新兵の訓練をする時だった
数人いた指導官が匙を投げるほど あいつはどうしようもなかった
「向いていない」「辞めちまえ」
俺も同意見だったがぼろ糞に言われても
食らいついてくる根性は気に入った
結局 付きっきりで教えてやっても
「まぁマシになった。」程度にしかならなかったのだが
それ以来 見かけると
「調子はどうだ?」と声を掛けるようになっていた
最初はそれだけだったはずだ
いつだったか
リヴァイ班の連中も総動員して 慌ただしく働いている時だ
食堂前でのんきな顔をしているあいつを見かけた
そのアホ面に苛立った俺は、完全に八つ当たりだが
「どうせ暇だろう。ちょっと手伝え。」となまえの腕を掴んだ
なまえは必至な形相で
「私、暇じゃありませんっ!これからお昼食べるんです!!」と訴えてきやがった
隣で友人らしい女が「ひぃっ!」と息を呑むのがわかった
そりゃそうだろう
上官の命令に「飯を食うから」って断るバカがどこにいる
まぁ俺に対して 物怖じしない態度も気に入っているのだが
まだブンブンッと頭を振って拒否しているなまえを
執務室まで引きずって行った
他の幹部への使いくらい出来るだろうと思っていたが
生憎 他の連中は出払っていた
仕方なく書類の整理を任せたが その出来に驚いた
要領よく作業も正確だ
ついつい次から次へと任せていると
思っていたより時間が経っていた
昼飯を食べている余裕はないだろう
なまえも気が付いたようで絶望的な顔をしている
思わず笑いそうになったが
本当に飯抜きにする気はなかったので、申し訳なく思い
そう言えば貰い物の菓子があったなと 引き出しを開けた
「貰い物で悪いが、今日はこれで勘弁してくれ。
後でなんか美味いもん食わしてやるから。」と小さな缶を差し出した
なまえは顔を上げると
「えぇっ?!いいんですか!!」と興奮で頬を染めて飛びついてきた
嗜好品はなかなか高値で
一般兵のこいつにはなかなか口に出来ないだろうが
ここまで喜ぶとは思っていなかった
「ここで食べていいですか?」というので
俺の責任でもあるから、「溢すなよ。」と許可した
まだ封を開けていなかったそれを丁寧に剥がし蓋を開けた
様々な焼き菓子が入っていたようで
「うわぁ、どれにしようかな。」と目を輝かせている様はまるで子供のようだ
くるくる変わるあいつの表情を見ていると飽きない
噛みしめるように一つを食べ終わると
うっとりしながら缶を閉じた
「有難うございました。」と俺に返そうとするものだから
「おいおいおい、1枚だけなんてケチくせぇ事言わねぇよ。」
全部持って行けという俺に、元々デカい目をこれでもかと見開いた
「え、えぇ?!これすっごい高いんですよ!いいんですか?!
後で返せって言っても返しませんよ!」
そんなこと言わねぇよ。もう行けとしっしっと手を振って示すと
缶を宝物のように抱えて、一礼をして出ていった
それからというもの
事あるごとにあいつに手伝わせるようになった
もちろん貰い物と称して 礼の菓子を用意して─
何度かやると「兵長もどうですか?」と俺に勧めてくるようになった
ひとつ摘まんで「あとはお前が食え。」というと
じゃぁもう1つだけ、と言って後は大切そうにしまった
「いつでも買ってきてやるから そんなチマチマ食うな。」と
危うく口を滑らせそうになった
仕事の後に なまえが紅茶を淹れ
俺が用意した菓子を2人で食べるのが習慣になった
いつの間にか なまえとのティータイムを楽しみにしている俺がいた
「あ、危ないっ!!」
というハンジの声に我に返った
見れば、アンカーが抜け 落ちていくなまえが見えた
何やってんだ、あのバカッ!!!
俺は一目散に駆け出した
後ろでハンジが何か叫んでいたが知ったこっちゃない
もう既に人だかりが出来ていたが
それを押しのけてなまえの傍へ寄った
幸い枝がクッションになったようで
擦り傷はあるものの 大した怪我はなさそうだ
「バカ野郎っ!!」と怒鳴りつけると
「すいません…。」と小さな声が返ってきた
「まぁまぁ、そのくらいにして。」と
少し遅れて来たハンジが割って入った
一応 診てもらった方がいいと
医務室の外で待っていると ドアからハンジが顔を覗かせた
「心配ないよ、大丈夫。
ただ、あの子に何か食べさせてあげなよ。」というハンジに
「あぁ?」と怪訝そうに後ろで縮こまるなまえを見た
一般の食堂はもうやっている時間ではないから
幹部棟にある食堂に連れてきた
不規則な幹部の為にいつでも食べられるようになっている
出てきた食事に遠慮するなまえを
顎をしゃくって 食べるように促す
聞けば、朝昼と飯を食っていないらしい
それで厳しい訓練をすれば そりゃ貧血にもなるだろう
朝は俺にも少しは責任があるとして…
訓練の成績が思わしくないからと懲罰として昼を食えなかったと言う
「飯抜き」なんてもんは珍しい事じゃねぇが
こいつは よくそれを食らうらしい
なまえが努力していないとは思わない
ただ 努力じゃどうにもならない資質というもんが
こいつには 圧倒的に足りない
「お前何で兵士になったんだ?」
前々から疑問に思っていたことだ
言いづらそうに、口ごもった後
「食いっぱぐれないと思って。」と言いやがった
「あ?」と言った俺に叱られると思ったのか
「すいません。」と益々体を小さくした
「私、孤児院で育ったんです。
皆優しかったんですけど、貧しくていつもお腹が空いてて。
でも私より小さい子もたくさんいたし、
早く自立しなきゃいけなかったんです。
何の取り柄もない私でも置いてくれるかなっと思って…。」
俺も大層な理由を掲げて兵士をしているわけじゃない
どんな理由だろうと、それを責める気はないが
「じゃぁ、食えりゃ何でもいいってわけか?」
と、いう質問に俺の顔色を窺うように見てきた
安心させるように 別に怒ってるわけじゃねぇ。と言うと
「…そう言われちゃうと身も蓋もないんですが。まぁ、そうですね…。」と頬を掻いた
そんな理由で毎日ボロボロになっていたっていうのか
しかも食いっぱぐれてるじゃねぇか
丁度良いところにエルヴィンが通りかかった
「おい、エルヴィン。この前の話はどうなっている?」
直ぐになんのことか合点がいったやつは
「お前が断ってきたから保留のままだが、やはり私は効率を考えて
補佐官は必要だと「おれの補佐官は今日からこいつだ。」
話を遮るように言った
隣で「へ?」なんて間抜けな声が聞こえたが無視した
以前エルヴィンから
補佐官をつけるように言われたことがあった
確かに事務処理にリヴァイ班の連中まで訓練時間を削られている状況は改善すべきだ
だが、頭に浮かんだあいつを補佐官に推すには気が引けた
補佐官は秘書のようなものだから
訓練なんてしている暇はなくなるだろう
あれだけ必死にやっているのだから
なにか胸に秘めるものがあるのだろう、と思っていた
だが、そうじゃないなら話は別だ
────
もう話は終わったというように、私から今度は隣にいる兵士に向き直った
「お前は食い終わったら、今日はもう部屋に戻っていい。」
俺はお前の上官に話をつけてくる。とリヴァイは立ち去った
その背中を呆然と見ている彼女は確かなまえといった筈だ
リヴァイのお気に入りだ
いつの頃からか リヴァイは街に用事がある度に
菓子店に訪れるようになった
しかも毎回随分と可愛らしいものを選ぶものだから
幹部連中で様々な噂が飛び交った
中には「意外と少女趣味だった」なんてものまであった
その頃からリヴァイの使いとして
彼女が幹部の執務室によく訪れるようになり
あぁ、彼女のためなのだと皆納得したのだ
幹部たちからの評判も上々で補佐官になっても皆と上手くやれるだろう
そう思いながら私は食堂を後にした
────
あの後リヴァイ兵長はすぐに戻ってきた
引継ぎも特になく、明日から兵長の執務室に来るように言われた
今日は色んなことがありすぎた
なんだか現実味がなくて、此方が夢なんじゃないかと思えてくる
シャワーでも浴びて頭をスッキリさせようと浴場へ向かった
まだ早い時間だから人も居らず ゆっくり入れそうだ
服を脱ぎ、シャワーを頭から浴びた瞬間
突然のフラッシュバック
流れるシャワーの音と 体を這う手の感触
そして私を見つめるリヴァイ兵長の熱のこもった瞳
思わずへたりこんでしまった
全て思い出した
「今夜も来いよ。」
リヴァイ兵長のあの言葉は本気だろうか
からかわれただけかもしれないと
兵長の部屋に突っ立ったまま動けないでいる
私は何故ここにいるのだろう
兵長に抱かれたいと思っているのだろうか
…やっぱり帰ろうと踵を返そうとしたときだ
いつまでそこでそうしているつもりだ。と
呆れ顔の兵長が顔を見せた
ドアを大きく開き、私を招き入れた兵長は
どうしていいかわからず突っ立ったままの私を置き去りに
どかりとソファに座った
そして、私を見ると
「脱げ。」と一言言い放った
困惑した表情でリヴァイ兵長を見詰めても
無言で早くしろと促されるだけだった
観念して恐る恐るジャケットを脱ぐ
シャツに手をかけたが震える指先では上手くいかない
────
はぁっ。とため息をついた
なまえは叱責されるのかとビクリと体を震わせたが
怯えるなまえの様子を見ていると
酷く冷酷なことをしているようで 自分に対して出たため息だった
「リヴァイへいちょぉーー!」
お祭り騒ぎと化している食堂を後にして
部屋に戻ろうと廊下を歩いている時だ
気の抜けた声に呼び止められた
振り返ってぎょっとした
ずぶ濡れのなまえが走り寄ってきた
近づいて来て分かったが それは水ではなくビールらしかった
酷く酒臭い
少し距離を取りながら「どうした。」と問えば
同期に酒をぶっかけられたと言う
そりゃ気の毒にと思っていたら
「兵長の部屋の浴室使わせてください!」
と、きたもんだ
「幹部の人たちは自分の部屋に浴室あるっていうじゃないですか。
お願いしますっ!一般の浴場はもう閉まっているし。
朝までこのままなんて嫌なんですー!」
こんな時間に男の部屋に来て しかも浴室を使わせろ、だと
「ちゃんと綺麗に使いますし、掃除もします!」
渋っている俺になまえは見当違いなことを言ってきた
しかも
「何でも言うこと聞きますからっ!」と
とどめの一言だ
「そんなセリフは男に言うもんじゃねぇ。」
特に俺に対してはな。と心の中で付け加えるが
切羽詰まっているからか ろくに聞いちゃいねぇ
このままにしておくわけにもいかねぇから
仕方なく使わせてやることにした
ザァーッと水音がしていたが
ガタンッ!!と結構な大きさの音がした
「おい。」
ドアから遠慮がちに声を掛けるが返事がない
しばらく待ったが しーんと静まり返っていることに
不安を覚え 意を決して扉を開いた
うずくまるなまえを見つけて濡れるのも構わず
慌てて抱き起こした
「いったぁ〜。」と頭をさする様子から
どうやら酔っぱらってふらつき 転んだらしい
「大丈夫か?」と、極力体を見ないように視線を外しながら問えば
「あ〜兵長もびしょ濡れじゃないですかぁ。
一緒に入りましょー。」と俺のシャツのボタンを外し始めた
「お、おいっ!」
制しようと、手を掴めば
上気した頬に潤んだ瞳で にっこり笑うなまえと目が合った
必死にかき集めていた理性が 吹き飛んだ
「どうなっても知らねぇからな。」と
首筋に噛みついた──
昨日は俺をあんなに翻弄したくせに
「今日は随分違うじゃねぇか。」となまえの腕を引っ張り
早速寝室のドアを開けた
部屋に来るかは 賭けだったが
自ら俺の元へ来るのなら 遠慮はしない
がっついて まるでガキのようで情けないが
今日はもうベッドで なまえを味わいつくすとしよう
ベッドに押し倒すと
恥じらうさまは処女のようで 流石に戸惑ったが
悪いな、今更逃がす気はない──
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