Happy Birthday Levi 25/12/2019
30 恋だの愛だの冬眠中
【30 恋だの愛だの冬眠中】
(現パロ/片想い)
もう嫌になる。
同僚含め周りの女性社員は結婚ラッシュで寿退社。
もう独身の男性社員はいないのではないかと思うくらいだ。
また、仕事は取引先との商談成立やら決算時期やらで残業の日々を送っている。
このまま恋愛はおろか、結婚出来ず「お局様」と呼ばれる日が来るのではないか…!!?
不安を抱えながら恋だの愛だの冬眠中の私は今日も残業後にアノ店に寄るのだ。
―「Tea’s cafe Levi」
数ヶ月前、寄り道した時ふいに見つけたお店だった。
店主であるリヴァイという名前の男性はそんなに背は高くなく寡黙で口数も少なくやたら笑顔を振りまくタイプではなかったが、艶やかな黒髪で男の色気感がある雰囲気を醸し出しており、とても丁寧な手つきで美味しい紅茶を振舞ってくれるのだ。
味も濃くなく薄くなく飲みやすい温度に調整しており、口から流れていく度、疲れていた心が癒されていく。
値段は安くはないが、美味しい紅茶と彼の来店したお礼とも言える微笑が忘れられなくて、給料日前や金欠時でも節約して通ってしまうのだ。
彼に密かに憧れや恋心?の様なものがあるが、彼女がいるのかどうか等、プライベートな事はほとんど知らない。
聞けないまま私は彼の店に通い続ける。
―チリンチリン。
店のドアを空けると高めのベル音が鳴る。
「いらっしゃい。」
いつものように愛想は良くない。
でも静かで掃除の行き届いている清潔な店内。
「こんばんは。いつものアールグレイを下さい。」
「分かった。」
こんなやり取りの少ない会話だけれども、彼は手際よくカップや茶葉の準備をしてくれる。
その手順を見るのが私は好きだ。
チリンチリン。
またベルが鳴る。
「やっほ〜、リヴァイまた来たよ〜!」
「…またてめぇかクソメガネ。いい加減しつこいぞ。」
「ごめんごめん、でもさ〜これは仕事だから仕方ないよ、それよりこの前の話、考えてくれたかい??」
「…断る。俺はそんなキャッシュレス導入化なんて興味ねぇ。他を当たれ。」
「そんなぁ〜、消費税増税した事だし、売上アップに繋がるいい提案だと思うけどなぁ〜〜。いつまでもキャッシュのみだとお客さん逃げちゃうかもよ〜〜!!?」
「今いる客で充分だ。これ以負担を増やすつもりはねぇよ。」
「まぁ、来週も来るからさ、考えといてよ。ねぇ、お姉さんもそう思うでしょ??あ、申し遅れました、私は〇×ライフスタイル株式会社 飲食領域営業担当 ハンジ・ゾエと申します。」
「ど、どうも初めまして…」
たどたどしくも私たちは名刺交換を行った。
「あ、あの有名な△□株式会社にお勤めで!!?お世話様です。業種は異なりますがもし飲食事業に関わることあればお力になりますので、どうぞよろしくお願いしますね♪」
「オイクソメガネ、営業活動なら他所でやれ。」
「ご挨拶しただけだよ、もう固いんだから〜、なまえ さん、聞いて貰えますか??リヴァイ、彼ってば店のルールも厳しくてお菓子持ち込み厳禁で破ったお客さんを追い出すくらいだしさ〜〜、デザートも録に出ないからね〜〜。」
「ここは紅茶を提供する店だ。意に反する行動されたらそうするしかねぇだろ。」
「ま、また来るよ。でも珍しいよね〜今の時代キャッシュのみで導入に首を縦に降らない店はここくらいのものなんだからさ。営業部長の私の名前が泣くよ。でも、そんな店こそ私の営業力が滾っていくもんよ!!フフフ、フフ……」
「…気持ちわりぃ。さっさと帰れ。」
ハンジと名乗る人はそのまま店を後にした。
「あ、明るくて朗らかな人ですね。」
「毎回店に来ては興味ねぇ話を持ちかけてきやがる、うんざりだ。」
「…私は今のままで全然大丈夫だと思いますよ。紅茶は温かくて美味しいし。雰囲気も良くて好きですよ。…あっ//すみません、私関係ないのに、もう帰ります、ご馳走様でしたっっ!!」
つい口にしてしまい恥ずかしさの余り私は代金を渡して店を出た。
その後、辛うじて彼の声が耳に届いた。
―「また来い」と。
私は嬉しかった。
でもさっき来店したハンジという人とリヴァイさんが親しげ?に話しているのを聞いていて2人の関係性が気になった。
(普段喋らないリヴァイさんが話していたから)
「2人は付き合っていて、もしかして恋人同士!??」という事を。
それから暫く、給料日だったので、私はまた彼の居る店に寄った。
彼は何も聞かず、私のいつも飲むアールグレイを出してくれた。
お客は私しかおらず、一層静かな雰囲気を出していた。
すると彼が口を開いた。
「…お前は付き合ってる男はいるのか?」
まさかの彼の質問だった。
もちろんいない。
でも、あの出来事が気になって即答出来なかった。
私はリヴァイさんとハンジさんは付き合ってるだろうという憶測にとらわれ、こういう発言をしてしまったのだ。
「…あ、はい、一応います…。もちろんリヴァイさんも…いらっしゃるんですよね?(ハンジさんが)」
嘘なのについ口にしてしまった。
少しの間沈黙が流れたが、
「…あぁ、まぁな。最近忙しくて会えてねぇがな。」
ほらやっぱり。
こんな素敵な人に恋人なんていない訳がない。
涙をこらえながら私はこう返した。
「駄目ですよ、たまには会ってあげないと。女の子は寂しがっちゃうんですから。」
「あぁ……」
「じゃ、私帰ります。ご馳走様でした。」
彼は何も言わないままで、お金を置いて私は店を後にした。
チリンチリンとなるベルの音が悲しく感じた。
「…そうだよね、いるに決まってるよね。そんな人に片想いなんかして私馬鹿みたい。」
涙が止まらず小石を蹴りながら私は自宅へ帰った。
冷たい空気が余計私の心を寒くした感じがした。
それから1ヶ月後、仕事も落ち着き時間もとれた頃、あの店の事を思い出した。彼は元気にやってて、彼女と幸せにしているだろうか。
今日このまま帰るよりも立ち寄ってみようと思った。
これを最後にしようと―。
チリンチリン。
前と変わらず音が鳴る。
音色を聞くのは今回で最後になるだろう。
「いらっしゃい。…!お前か……。」
彼は一瞬驚きを見せた表情をした気がするがまたいつもの無表情に戻った。
「あ、お久しぶりです…。」
「暫く来ねぇと思ってたが……。元気にしてたか?」
「はい、仕事忙しかったんですが、最近落ち着いたので、寄ってみようかなと。」
「…そうか。元気ならまぁ良かった。いつものでいいか?」
「はい、ありがとうございます。」
コポコポ…。
いつも飲むアールグレイを丁寧に注ぎ、そっと提供してくれた。
「…頂きます。」
最後になる一杯を口に含もうとする。しかし、何故か私は飲む事は出来なかった。
嘘をついてしまったこと、また、彼とハンジさんが付き合ってるという疑惑が気になって仕方ないのだ。
考えているうち、私は涙がポロポロと出てしまった。
「う、うぅ……」
「オイ、どうした?」
彼が私の泣き顔を見て困惑する。それもそうだ。店に来て泣く意味なんて分からないだろう。
私はもう二度と来ないという覚悟を決めて口を開いた。
「…ごめんなさいリヴァイさん、私、嘘ついてました…。」
「嘘?」
「はい。私この前リヴァイさんとハンジさんが仲良さそうにお話されてるの見て「2人は付き合ってるんだ」って思っちゃって……。それが辛くてだから付き合ってるって嘘ついちゃったんです。リヴァイさんみたいな素敵な人に恋人なんていないはずないって思ったんです…。リヴァイさんも恋人がいるって事でもうきっぱり忘れようと、今日で来るのやめようと思って来たんです。でもせめて嘘ついた事をお詫びしたくて……。ううっ、ごめんなさい。もう来ないので心配しないで下さい。お釣りはいりません。どうか彼女さんとお幸せに……。」
ああ、恥ずかしい。鼻水や涙で顔がグチャグチャになってるだろう。きっと彼は嘘をつかれて怒ってるに違いない。
顔を隠しながら私は財布から千円を出してさっさとその場を立ち去ろうとした。
千円をカウンターに置き、帰ろうと踵を返した。
「(さようなら―。)」
すると置いた手を彼の手が掴んだ。
「…待て。帰るな。」
「は、離して下さいぃぃ…。」
これ以上みっともない姿を見られたくなかった。
「…すまない、俺も嘘をついていた。」
「…えっ?!」
「お前と同じでいねぇのに、女がいるって事をだ。お前に男がいるって聞いた途端、言いづらくてあんな嘘をついた。それからおまえが来なくなって、とんでもない事を言ったんじゃねぇかと心配になったが、今日お前が来てくれて俺は安心した。まさかお前が俺と同じ嘘をついていたとは思わなかった。でもお前の気持ちを聞けてよかった。今まで辛い思いをさせてしまってすまなかった。ハンジとは仕事上の付き合いでそれ以上の関係はねぇよ。」
「……リヴァイさんひどいいぃ………。でも良かった……。」
「それはお前もお互い様だろ。まぁ……誤解が解けて良かった。」
「うっうっ、ぐすっぐすっ……」
「チッ、汚ぇな。…ったく涙と鼻水で顔がグチャグチャじゃねぇか。ホラ、これで拭け。」
リヴァイさんは安心した表情でそっと私にハンカチを差し出してくれた。
綺麗で清潔なハンカチ。
私は堪らず涙を拭き、鼻をかんでしまった。
リヴァイさんは呆れながらも親が子どもにするように優しく私の頭を撫でてくれた。
落ち着いた頃、リヴァイさんは出入口に向かい、そこの鍵をかけた。
「あ、あの、リヴァイさん…!!?」
「…今日は店じまいだ。お互いの空白の期間を穴埋めする為にな。」
こうして私たちはこの1ヶ月間のお互いの状況について語り合った。
蟠りが解けてなんでも話し合えて楽しい時間を過ごした。
どのくらいの時間が経ったのだろう。
話しているうち、ふとスマホを見たら10時近くになっている事に気づいた。
「うわっ!もうこんな時間になっちゃった!!ご、ごめんなさいっ!!」
「いや、気にしなくていい。俺の方こそ遅い時間まで付き合わせて悪かったな…。外は寒いし夜道は危ねぇからタクシー手配してやる、待ってろ。」
「あ、すみません…。」
私は申し訳なく思ったが確かに彼の言う通り真っ暗な寒空で危険だ。
ここは彼の指示に従うのが真っ当だろう。
暫くしてタクシーが到着した。
帰り支度を整えた私は彼と共に外を出た。
「あの、今日はありがとうございました。あと色々ご迷惑かけてすみませんでした…。」
「もう気にしなくていい。それより気をつけて帰れよ。また店に来い。待ってる。」
タクシーに乗った私に彼はガラス越しからお札を渡して来た。
「…タクシー代だ。使え。」
「そ、そんな困りますっ!お邪魔しておいて受け取れませんよっっ!!」
「誘ったのは俺なんだから払うのは当然だろ?いいから受け取れ。あと寒いからコレ羽織っておけ。」
と、フワリと着用していたマフラーを私の首に巻いてくれた。
「温かいです。ありがとうございます……。」
最後に彼は1枚のメモ用紙をそっと私に手渡した。
「俺の連絡先だ。返事は遅くなるだろうがいつでも連絡しろ。いずれ2人で食事でも。まぁお前さえ良ければだが。」
「あ、行きたいです!是非!!後で連絡しますんでっ!!」
「ああ、おやすみ。またな。」
「お、おやすみなさい。」
私たちは挨拶を交わし店を後にした。
「いや〜聞かせてもらったけどいいねぇ、恋っていうのはねぇ〜〜♪」
「もう、からかわないで下さいよ、全然そんなことないんですから///」
「いや、お嬢さん、聞いてたけど、彼はいいよ。きちんと女性の扱いも見事だし、気遣いもバッチリだ。きっと大事にしてくれると思うよ。おじさんが保証する。うん!」
タクシーの運転手さんに茶化されながらも私は彼の温もりのマフラーに身を包まれながら、彼の連絡先の書かれたメモ用紙を見つめる。
「(今日はきっと忘れられない思い出になるだろうな……)」
そんな期待の中、私は自宅までの時間を目を瞑って待つ事にした。
―後日、彼から日曜のデートの誘いが来た。(お店が日曜のみ休日の為)
リヴァイさんとデートが出来る喜びで心がウキウキした。
周りの恋バナを聞かされても不快にはならなくなった。
ハンジさんから聞いたのだが、
彼は超一流大学卒業後、超一流企業に就職し、多大な成果を上げたそうで、「やりたい事を達成した」という理由で会社を早期退職し、その資金で自分の好きな紅茶専門店を開いたのだそう。
凡人の私にとってはスケールが大きすぎるが、これからも私は彼の紅茶が好きなのでずっと彼の紅茶を飲み続けていきたいと思う。
しかも初デートの日は彼の誕生日の12月25日との事。
片想い中の彼と甘いクリスマスと誕生日を過ごせる様に
どんな服にしようか、
どんなデートプランにしようか、どんな誕生日プレゼントを選ぼうか、恋だの愛だの冬眠中から早くも目覚めるのは時間の問題だろう。
【終わり】
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