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「鯉伴さん」
「おー、若菜。七夕飾り出来たぜ」
「まぁ素敵」
「ぼくとお父さんで飾ったんだよ!」
「上手に出来たわね昼〜お母さんびっくりしちゃった」
ぱたぱたと駆けてきた昼を抱っこして、思いきり抱きしめてやる。たしかに細くシンプルすぎた笹竹は見事にカラフルに彩られ、組員たちの願い事もしっかりと結ばれていた。
「あとは夜のだけね」
繋いでいた夜の手に少しだけ力がこもった。見上げてきた鯉伴そっくりの息子に頷いてやると頷き返して手を離す。
「何だよ、2人だけでそんな合図〜。ん?どうしたんだ夜」
「お父さん」
「え……っ!?」
さくさくと草を踏みしめ前に立った息子からまさかの言葉を聞いて鯉伴は一瞬耳を疑った。
「夜、いま」
「父さん、短冊結ぶから肩車してくれ」
「!!」
鯉伴が悶絶しながら夜と自分を交互に見やる。喜びと驚きで見開かれた目が“何があったんだ?”と訴えているのが面白くて、若菜は声をあげて笑った。
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「何でだよ」
「だめ、親父は見るな」
「しかも親父に戻ってるしよ」
無事短冊を飾り終えた夜は抱っこされたまま鯉伴の両目を塞いでいた。これでは短冊どころか前すら見えない。
「若菜ぁ〜夜を退かしてくれ」
「母さんだめ」
「だめですって。ごめんなさい鯉伴さん」
「お前夫より息子をとるのか」
「だって約束したんですもの」
ふふふ、と笑い声をあげて笹竹と桜を見上げる。
「お母さん、夜は何をお願いしたの?」
「夜はね…」
後に三代目を継いだリクオは七夕が来る度にこの頃の会話をふと思い出すようになる。
父と母と、兄弟と。
共に笹竹を見上げつつ子供ながらに願った夢をいつか叶えてやると心に誓った日。
――お父さんみたいに強くなれますように。
その広い背中はまだ追い越せそうになくて、今年も密かに短冊に思いを綴ってみる。
了
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可愛い二代目親子大好きです!でもやっぱり切なくなっちゃいます。鯉伴はいつまでもリクオの憧れだったらいいな。
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