染まるシロ

※『僕が初めて知る白』の続きです

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「ジル!」


小走りで走ってくる黒髪の青年。
私は読んでいた本から顔を上げた。


「怪我の具合はどうだ?」

「ああ、だいぶ良くなった」


私は包帯の巻いてある羽根を少しだけ広げてみせた。
前よりは身体の包帯も外れてきた。
奴はそうか、と笑った。
私は今、種族関係なく見てくれるという医者のいる村で療養中だ。
軍に逆らい、怪我を負っている私をたまたま出会った青年が連れて来てくれた。
神族と人間の戦争が続いてる今、ここは貴重な場所だ。
出会った時とは違い、奴はちゃんと笑うようになった。


「エンデ、この人か?」

「わぁ、綺麗な髪の色ですね」


後ろから二人の青年が現れた。
一人は茶髪で、もう一人は青みがかった髪で背中には私と同じ羽根が生えていた。
私は驚き、二人を凝視してしまった。


「この人達は…?」

「こいつらは俺らと同じ戦争に嫌気がさした奴らだ。今、こいつらのような奴らと村や町の救助活動してんだ」

「そういう事だ。同じ神族さん」

「他にも仲間は大勢いるんですよ」

「今は各地に散らばってるけどな。俺らはここの手伝いに来たってわけ」


笑い合う三人を見て思った。
神も愚かだ、種族が違ってもわかりあえるというのに…、悲しい人だ。


「おい、兄ちゃん達!ちょっと手伝ってくれ」

「今行きます!」


手伝いに行く仲間の後を追おうとしたエンデだが、私の方を振り返った。


「後でまた来るからな」

「…ここに来るのか?」

「当たり前だろ、お前は友なんだから」

「私に剣を向け、髪を斬ったのにか」


前より大分短くなった髪を掴む。
腰まであった髪は今は肩にかかる程度になってしまった。


「う…、うるさいな!とにかくまた来るから!」


言い捨てるように言葉を残した背中を見つめる。
遠ざかる背中に出会った頃を思い出す。
戦場のあの張り詰めた空気は、もう纏っていない。




染まるシロ
(白以外の色が、私を包む。あいつが白以外に染め上げる)









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