ネコとヒト

 
「クーロぉー!」


わんわん泣きながら俺の身体をぎゅうぎゅうと抱く。
その力が半端なく強いから俺は苦しい…というか死ぬ!圧迫死する!


「離せ!」

「クーロぉ」


身をよじればさっき以上の力で抱き着いてくる。
周りの人はそんな俺達を何事かとじろじろ見ながらも、係わり合いたくないのだろう。キレイに避けていく。

それもそうだ。大声をあげながら大柄な男が、涙を流しながら猫を抱きしめているんだから。


「離せって、言ってんだろ…!」

「ぎゃあぁぁー!」


やつの頬に三本の線が出来た。






「ごめんね」


謝ったのはクロじゃなくて僕だ。
さっきからクロのご機嫌は斜めで尻尾がイライラとした揺れかただ。


「お前は、俺を殺す気なのか?」

「そんなことないよ!」


僕には全然そんな気なんてこれっぽっちもない。
あるわけがない。


「親友だよ、僕たち」

「だったら力を加減しろ!俺にはお前みたいな人の力は強すぎるんだよ」


そうどなるクロ。もともと僕も猫だった。
よくあるじゃん?化け猫だとか猫又とか。
そんな感じ。ちなみに僕は三毛猫。

猫のクロにとって今は人の姿をしている僕の力は強いみたいだ。


「それで?何かあったんじゃないのか。あんな公衆の前で泣きついてきたんだから」

「それがね、道端で犬に吠えられて」


そう、僕が道を歩いてたら散歩している人とすれ違った。
その人は犬の散歩をしていたんだけど、その犬が僕を見た途端に吠えだしたんだ。


「僕、ビックリして走って逃げたらクロを見つけて…」


安心したら泣いちゃった。なんて笑ったらクロがぼそりと呟いた。


「犬?」

「そう!チワワの女の子」

「この、馬鹿やろー!」

「に゙やゃぁ−!」




……僕の頬に六本の赤い線が出来ました。


 




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