お前、子どもになんて名前つけるよ?
「あたし、将来子ども産んだら絶対『まなか』って名前つけるの!」
「モナカ?」
「まーなーかー!! モナカも美味しそうでいいけど、それはさすがに可哀想じゃん。イジメの対象になっちゃうよ! まなか、可愛いでしょ?」
休み時間、クラスの女子がそんな会話を繰り広げて盛り上がっているのを一瞥し、オレは目の前にいる友人に声をかけた。
「モナカだって。お前はどうよ?」
つまらなそうに頬杖をついてその女子たちを見ていた友人は、オレに視線を移して真剣な眼差しで即答した。
「オレは『クリリン』だな。栗に林、で、栗林」
至って本気らしい。
「いや、それもう苗字だろ。『くりばやし』だろ」
「えー、人の子どもの名前にケチつけんなよー。んー、じゃあ『弁次板(ベジータ)』?」
「まずドラゴンボールから離れようか。将来のお前の子どもが心配になってきた」
冗談とも思えない本気な表情で答える友人を止めると、オレは頭を抱えた。
将来、コイツと結婚する女がこの名前をつけさせないことを祈るしかない。
ま、とりあえずコイツの苗字が栗林でないことが救いだ。もし栗林なら『栗林栗林』になってしまう。そいつはあんまりだ。
いつ生まれるのかも分からない友人の子どもを心配し始めたオレに、今度は友人のほうから話題を振ってきた。
「そういうお前はなんてつけたいんだよ」
「オレか? 決まってんだろ、『悟空』だよ」
「お前もか!!」
― END ―
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