キューピッドの矢で射殺した


「天馬くんってさ、最近剣城くんとどうなの?」

「えっ」


部活が始まる前。俺は天馬くんに剣城くんと何かあったんじゃないかと思って、聞いてみた。案の定、何かあったみたいで。笑ってるけど作り笑い。言っとくけど俺には通用しないからね。
二人の間にに入る隙が無いくらいべったりとイチャイチャしてたのに、今や天馬くんだけ隙だらけだ。流石に一人で居たら、俺以外にも気付いた人は居るだろう。

“二人は喧嘩したのか”と。

まあ剣城くんのことだから、天馬くんに勘違いさせるようなことしたんだろうけど。結構不器用だからなー、剣城くん。


「………言いふらさない?」

「当たり前だろー」

「じゃあ言うよ」


天馬くん曰く、どうやらここ最近女の子からのプレゼントが急増、会える時間が短くなった、目を合わせてくれない、女の子とよく話す、天馬くんの知らない顔がある、パスを回してくれない、ちゃんと話してくれない…。
どこぞの恋する乙女だ、と思った。有りがちな話だなー。聞いてて飽きないけどさ。剣城くんにも事情があるんだと思うけど。でも正直、羨ましいよ。そういう良い悩みがあるんだから。


「青春を満喫するなんていいじゃん」

「満喫してないよ〜…」

「思いきって聞いてみればいいのに」

「それが出来たら苦労しないよ」

「フィフスセクターに刃向かってた時はどかどか進んでたのに?」

「それとこれとは話が違うよ!」


あの時の威勢はどこに行ったんだか。なんとかなるさーっていつも言ってるのに、言わないし。ていうか何でもなんとかなるわけないからな?
まあ折角相談してくれてるんだから、俺が繋ぎ止めてあげようかな。このままだと埒があかないし。いつまで経ってもうじうじしてられるんじゃ、練習にも影響出るだろうしな。それにキャプテンだし。

そこで一つ、俺は天馬くんに提案を出した。熱心に聞くのは仲を戻したいがため。良いことだ。だけど本気でやってしまったら破局どころか嫌われてしまうから、程々にね、と付け足す。まあ一種の賭けみたいなものか。
いくら仲間言えど、他人は他人だからな。例え信じていても、他人。

“解った!ありがとう狩屋!”

屈託の無い笑みで言われる。あれだけ落ち込んでたからなあ。仲を戻したいから、元気とか出るもんなのかな。

んで、どうなるかな。思わず本気でやってしまわなければいいんだけど。まあ教える俺はどうかと思うけどな。危険なら言わなきゃいいのに。なんて酷い人間なんだろうか。
ひねくれ者だからしょうがないのかもしれない。


次の日。俺はいつもより少し早めに園を出た。いつもだったら既に天馬くん達がいる時間。その後どうなったのかちょっと気になったから。


「おはようございまーす」

「あ…狩屋」

「どうしたの信助くん。顔真っ青だよ?」

「あれ…狩屋は聞いてないの?」

「何を?」

「天馬達のこと…」


まさか。天馬くん本気でやってしまったんじゃ。抑制するんじゃないかって思ったけど、しな、かったの?
道連れで剣城くんも一緒、に。
嗚呼そうか。俺が心ごと殺したんだ。俺が二人を地獄に突き落とした。

もしかしたら、心だけかもしれないけど。


ロッカーに俺宛の手紙があったけど、見なかった。赤いものが染み込んでて反らしたから。文字も見えたけど、見ないふり。現実を見たくないのは当然だろう。

死んだ後に書けるなんておかしいんだから。





(“幸せになりましたありがとう”)
(“近々地獄へご招待します”)


企画:忘却様に提出




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