秘密もほどほどに


秘密秘密!



「失礼しまーす」

「あら、いらっしゃい」

部屋に入るとアテナさまがソファに座ってティータイム中だった。

「こんにちは、アテナさま!」

そう言えば、アテナさまも「こんにちは」と返してくれた。
今日はアテナさまに一緒にお茶をしようと誘われたのだ。
書類整理というボス戦を退け、私はここに来た。

「お仕事はいいの?」

「バッチリ片付けてきました!」

そう、とアテナさまは言うと私に向かいのソファに座るよう促した。

頷いて私はソファに腰を下ろした(おおう、すごくふかふかしてる…!)

「そんなにソファが気に入ったの、レイム」

「えっ、な、なんで分かったんですか!?」

「顔に出ているわよ」

マジか。あああっ、なんてこったい!アホな一面を見せてしまった!

「貴方は見ていて飽きないわね」

アテナさまが微笑みながら花形のクッキーを摘まんだ。
それは誉め言葉なのかな。

「あ、ありがとうございます!」

ぺこ、と頭を下げるとアテナさまはふふっ、と笑った。

「やっぱり変わっているわ」

「なっ…!変わってませんよ!」

むすっ、と言い返すとアテナさまは笑いながら「ごめんなさいね」と謝った。

「ところでアテナさま。今日はどうして私を呼んだのですか?」

「深い意味はないわよ。ただ、貴方と話をしたかっただけ」

私と話?したっぱの私が幹部のアテナさまとお話が出来るとは…!

「付き合ってくれるかしら」

「も、もちろんですよ!私で良ければ!」

やっほーい!アテナさまとお話!テンションが上がってきた…!
あの憧れのアテナさまと話が出来るとは…嬉しいなぁ!

「うふふ、やっぱり貴方は可愛いわね」

アテナさまが呟いた言葉は今の私には聞こえていなかった。



「お兄さんがいるのね」

「そうなんですよ。最近は滅多に家に帰ってこないみたいですけどね」

「お兄さんもトレーナーなのかしら」

「はい。ドラゴンタイプばっかり持ってますよ。うざいぐらいに」

「ふふっ、フスベシティはドラゴンと密接だものね」

「そうですけど…氷技でイチコロですよ」

兄の姿を思い浮かべ…あれ、どんな姿だっけ。
マントしか出てこないぞ。えーっと、兄さん兄さん…あぁ、思い出した。よし、一件落着。
クッキーを摘まみ、口の中へと入れる。
んーっ、美味しい!口の中でとろける甘味!疲れた体には甘いものが一番。

「ところでレイム」

「なんですか?」

「ランスの秘密、知りたくない?」

「ランスさんの秘密!?」

思わず身を乗り出すとアテナさまは苦笑しながら頷いた。

知りたい知りたい知りたい!あの人の秘密!もしかしたら弱味を握れるかもしれない!

「教えてください、アテナさま!」

「いいわよ。でも本人には内緒よ」

「いえーっす!」

「――実はね、ランスは好きな女の子がいるのよ」

なっ、なななんだってぇぇぇ!?
あの人が好いている女の子だと!?うわっ、あり得ない!あり得ないーっ!

「ほ、本当ですか!?」

「えぇ。見ていてすぐに分かるもの」

「うわぁ…凄いことを聞いてしまった…で、どういう子なんですか?」

私が聞くとアテナさまは妖艶に笑って「そうねぇ」と言葉を続けた。

「鈍感で仕事熱心な子かしら」

「ふむふむ…」

「あと、よくランスと一緒にいるわね」

へぇ〜なかなか可愛い子みたいだな。というか典型的な良い子のような感じだ。って、ランスさんってそういう子が好みなのか…

「あのランスさんが好きっていうことはよっぽど良い子なんですね」

「…えぇ、そうね」

若干の間を開けて言うアテナさま。

「本当に鈍感なのね」

ぽつりと呟かれた言葉に私は「え?」と首をかしげた。

「何か言いましたか?」

「なんでもないわ。それよりも、この話は絶対にランスには話してはいけないわよ?」

「りょーかいです!貴重なお話、ありがとうございました!」

むふふふっ…ランスさんの好きな子…!絶対に探してみせるわ。そしてあの人にぎゃふんと言わせてやるんだから!

そう決心する私を見てアテナさまがため息を洩らしたのは勿論私が知るよしもなかった。








(おや、アテナ。随分と疲れた表情をしてますね)(ランス…あの子、鈍感過ぎるわ)









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