いつも笑顔をくれる人


ここには不似合いすぎる。



レイムはいつもバカみたいに(実際にバカでしたっけ)笑顔だ。
ほら、今だってアテナと話している時だって笑っている。バカにされているというのに。

「あっ、ランスさん!」

私に気付き、手を振ってくる。返すとでも思っているのでしょうか。
それを無視して2人の横を通り過ぎる。

と、後ろから足音がしてきた。

「ランスさん〜無視しないでくださいよ!」

「貴方に構っていられるほど私は暇ではないのですよ」

「なっ…!ひ、酷いっ。こんなに働く可愛い部下の前でそれは酷いっ…!」

うるさい。
軽く頭を叩いてやると彼女は「ぎゃっ」と短い悲鳴を上げた。

「可愛い?笑わせてくれますね。こんなにバカでアホな部下が可愛いなどと自らのことを言うとは」

「バカでアホ!?つい先日までバカで止まっていたのに…アホまで追加!?」

酷いですよ、ランスさん!

そう言うと1人で騒ぎ始める。あぁ、うるさい。だから貴方はバカなんですよ。人の気も知らないで。
こんなに長く部下を傍に置くのは初めてだ。今までの連中はすぐにやめてしまいましたからね。ですが、この少女(実年齢を知らないので精神年齢で良いでしょう)は違う。いつまでもしつこく近寄ってくる。離してもすぐに近寄ってくるのだからうるさいことこの上ない。
これをバカでアホと呼ばずとして何と言うのでしょうか。

「ランスさん、ランスさん」

「なんですか」

「さっきアテナさまから美味しそうなクッキーを貰ったんです!一緒に食べませんか?」

そんなの知ってますよ。貴方が持っている紙袋から匂いが凄いですからね。
菓子など興味はない。ですが、誘われたのに断るわけにはいきませんね。

「いいですよ。そのかわり、書類整理をやってくださいね」

「ええっ!何でですかっ。ランスさんのお仕事じゃないですか!」

「私の貴重な時間を使って貴方のティータイムに付き合ってあげるのだから当然でしょう」

「うぐっ…そ、そうですよね…分かりました!やります!」

――本当にバカな人だ。
書類整理より私とのティータイムを選ぶなんて。
そこまでして私とお茶を飲みたいのか。

「さっ、早くランスさんの部屋に行きましょう!」

笑顔を見せるとレイムは私の先を歩き出す。

バカでアホで、仕事の効率が悪い部下。けれど彼女を解雇しない理由はきっと彼女に惹かれているからでしょう。










(ランスさん!早く早く!)(笑顔しか取り柄がないですよねぇ、貴方は)









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