夢か現実かはっきりさせて


まさか、こんな日が来ようとは。そんな事を思ってしまう程、今の私は動揺をしていた。というか感動?いやとりあえず凄い感情を揺さぶられていた。
何故なら、人に仕事を押し付けまくる、あの上司ことランスさんが、
「み、自ら仕事をしている…っ!」
いつも通りの時間にランスさんの部屋へと来てみればなんとランスさんは自身の机の上に仕事を広げ(普段ならそこにいるのは私だ!)ていたのだ。
思わずこれは夢か!と思ってしまったがそんな事はなかった。えっなにこれどうしたのランスさん!?いや待て目の前にいるのは本当にランスさんなのか?もしかして変装したラムダ様では…!?
「そこの馬鹿、顔と口に出てますよ」
……ランスさんですな。うん、こんな事を言うのはランスさんしかいない。
というかずっと書類に目を通しているのになんで顔に出てるとかわかるんだエスパーなの?ねぇ?
「ら、ランスさん、どうしたんですか!何かあったんですか!」
「は?減給されたいんですか貴方」
「嘘ですすいません申し訳ございませんでした」
まずい、ここで不機嫌になられて仕事を丸投げされたら私が困る。過労死する!!その未来だけは避けねば…!
決意を胸に秘めながら私は仕事をしている(夢じゃない!)ランスさんに近づいた。
うん、やっぱりその場所にいるのは私じゃなくてランスさんの方がぴったりだ。高級そうな椅子に似合うのは貧乏な私じゃないし、きっとその方が椅子も喜ぶ……じ、自分で言って悲しくなってきた…。
「今日の書類はすべて私がやります。貴方は適当に何かしていなさい」
「へ……!?」
まじっすか。えっちょっとこれ本当に夢じゃないのあのランスさんが!?
思わずぴしりと氷漬けにされてしまったかのように固まる私。そんな私に気づいたのか、ランスさんが書類から顔を上げ――思いっきり舌打ちをし、死の宣告を繰り出した。
「減給」
「やああああああ!?ま、待って、落ち着いてください、ランスさん!!!」
「落ち着くも何も一人で馬鹿のように…あぁ馬鹿か…騒いでいるのは貴方だけですけど」
「馬鹿って何回言うんですか!酷いです!減給も酷い!」
「されたくなければさっさと働きなさい」
「うっ…りょ、了解です!でっでも何すればいいんですか!」
「自分で考える脳もないんですか。はぁ」
思いっきり人を馬鹿にする対応を向けられたがだってしょうがないじゃないですか。
いやだってね、いつも私がしてた仕事って今貴方がしている書類いじりなんですよ。それ以外でやれって部屋の掃除とかしか浮かばないんですが!?
あっいや待てよ、これはよくある会社の秘書的なポジションになって「お仕事お手伝いしますよ!」ってやればいいのか?そうか、これだ!
「ランスさん!お手伝いしますよ!」
「効率が下がるので却下」
「なんで!?!?」
即答ですか!えっなんで!?というかこの人今効率下がるって言ったな!?酷い!あっいつものことか。
「ら、ランスさぁ〜ん……」
今まで過労死をするのでは?と思うレベルで働かされていたというのに、仕事を減らされたらこれである…わ、私、訓練されてる…
自分でも情けない声が出たと思うがもうしょうがない。ランスさんお仕事くださいお願いしますよぉ。そんな意味を込めて再度ランスさんを呼べばまた舌打ちをされた。
ちなみにさっきから舌打ちばっかりしてるの、たぶん私が仕事の邪魔だという意味だろう。酷い。
「ええい、うるさいですね。分かりましたよ、あの書類をやりなさい」
そう言いながら指で示したのは別の机の上に山積みになってる書類だ。
おぉ…し、仕事だ…!なんだか胸の奥がじんわりと温かく…うっ!
「分かりました!ぱぱっと片付けますね!」
そう言った私の顔は自分でも分かるくらいかつてない程輝いていたのであった。



「……っていう恐ろしい夢を見たんです…」
「ふむ…で、どこら辺が恐ろしいんですかね?」
「ランスさんが仕事をしているとこrいだだだだ嘘ですよすいませんんんん!!叩かないでぇ!!!」
「夢のように減給をしましょうか」
「やめて!!!!!」










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