すべての原因は君にあり


さて、誰のせい?



――やってしまった。
目の前で起こった惨劇に私は固まっていた。

久しぶりにランスさんが自ら書類整理をやると言い出し(明日は槍が降るかもしれない…)たのは今から30分くらい前。
その間に私はアポロさまの部屋に書類を届け、つい先程ランスさんの部屋に帰ってきた。

珍しく(ここ強調)黙々と作業をやっていたので、ここは気をきかせて珈琲でも淹れてあげよっかなぁ、と部屋にある台所にそろーりと行き、珈琲を淹れようとランスさんのカップを手にした時に悲劇は起こった。

「…まずいなぁ…うん、ヤバいな、これは…」

床に散らばるカップの残骸――破片。
……うん、まずいね。とんでもないことをしてしまったね、私。
このカップはランスさんのお気に入りだったヤツだ。
……まずい。とにかくまずい。さっきから冷や汗が止まらない。
と、とりあえず破片を拾うか…

「よ、よし、ランスさんにバレないようにしんちょ「おや、何をしているのですか」

……。
………おおう。後ろから随分聞き慣れた声がしたぞ。
がくがくとさながらロボットのような動作で後ろを見るとやっぱりいた。

「ラ、ランスさん…!」

「何やら台所の方から愉快な音がしましたので見に来てみたのですが」

そう言うとランスさんは床の惨劇を見て、大袈裟な素振りをした。

「私の大事な大事なカップを割ってしまったのですねぇ」

大事な、という言葉を強調してくる。
うぐっ…否定はしないけど!なんか言い方がっ…!

「す、すいません…」

「まぁ、割ってしまったのは仕方がありませんね。直せとは言いませんよ」

私は優しいですから、と続けるランスさん。…全国の優しい人に謝ってください。

「おや、不満そうな表情ですね。――あぁ、何か罰を受けたいのですか」

「はぁっ!?な、何を言ってるんですか、貴方は!?」

「分かりました。では罰を与えましょう」

「ちがぁぁぁう!!私はMじゃないんですけど!?」

「そうですね…書類整理…はいつもですからね」

ふむ、と腕を組んで考え始めるランスさん。
ま、ままま待てー!誰が罰を受けると言った!?

「ランスさん!そんなくだらないことに頭を使うより、別のことに使って下さいよ!」

「ふむ…そうですねぇ」

「人の話を聞いてくださいよ!?」

「決めました。この部屋をすぐ…30分以内に綺麗にしなさい」

「うわぁ!?書類整理より難易度高い罰ですね!?」

「ふふっ、そんなに喜ばれるとこちらまで嬉しくなりますよ、レイム」

「喜んでません!!」

30分以内とか鬼畜過ぎる!この部屋がどれだけ広いと思っているんだ!?

頼みましたよ、と言い残して去っていくランスさんの背にあっかんべーをして(我ながら幼いなぁ…)、床を見る。

とりあえずカップの破片を集めるか…
しゃがみこみ、破片を広いながらどのような順番で掃除をするか、半分泣きながら考えを巡らせた。










(おや、まだ終わっていないのですか?)(30分で終わりませんから!?)









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