想像するのはどんな未来?
コガネシティのデパートに来ました。
お財布の中を確認する。…よし、結構あるな。
昨日給料が出たばかりだからな…あんまり使いすぎないように注意しないと。
「貴方の財布の中は可哀想なくらい空っぽですね」
「ぎゃあ!」
突然この世で最も鬼畜な上司が私の財布の中身を覗いてきた。ちなみに本日の私たちは一般市民に変装中(自分で言うのも悲しいなぁ…)。ランスさんの私服なんてそうそう見れないよ!プレミアム級…だと思う。
…と、それは置いておいて。
この人…私の財布を勝手に見て、空っぽって言ったよね?くはぁぁ、ムカつく…!
「い、いっぱい入っていますよ、これでも!」
「これは失礼。貴方と私の金銭感覚が違っていたのですね」
「……」
遠回しに嫌味を言われたよね。
しかし!せっかくの久しぶりのデパートでの買い物だ!ランスさんなんて気にしてはいけない。気にしてはいけな…
――ん?
「あれ、なんでランスさんいるんですか」
確かラジオ塔にいるラムダさまに話があったのでは。
……あれ?
「ラムダとの話はもう終わりましたよ」
「あぁ、そうなんですか」
「で、貴方との待ち合わせ場所にいったらいなかったのでここに来たわけです」
「…あ」
慌てて腕時計を見たら待ち合わせ時間をとっくに回っていた。
…しまったぁぁぁ!!
「あのぉ、ランスさん?」
「なんですか」
「怒って…ます?」
「えぇ、当然。今すぐ私に土下座をしてもらいたいくらいに」
不気味な程のスマイルのランスさんに私は思わず後ずさった。
ひぃっ!こわい怖い恐いコワイ――!!
今まで生きてきた中で一番身の危険を感じているよ、私!?
「ごめんなさいごめんなさいごめんなさい!」
何回も頭を下げながら謝罪を口にする。周りの人たちが訝しげに私を見ているのなんて知らん!
あぁ、どうしよう!このままでは私の首が飛ぶのでは。いやいやいや、それは困る。今やめれば実家に迷惑が…!只でさえ兄さんの収入が少なくて生活がヤバイというのに。てかさ、兄さん何してんの!?副業くらい就いてもいいと思うんだ!リーグ協会の人に言えよ!なんで私ばっかりこんなに苦労しなきゃいけないわけ!?
「レイム。また貴方はバカなことを考えていますね」
呆れたランスさんの声に私は心の中での兄の愚痴をこぼすのをやめる。
そうだ。今はランスさんだ。と、とりあえずお願いしなければ…!
「ランスさん!お願いです、首にしないでくださいよ―っ!」
「……は?」
あのやり取りから10分後。
私はなぜかランスさんと一緒にデパートで買い物中です。
あれ、どうしてこうなったんだっけ…?
「レイム、前」
「うおおっと」
目の前の段差に気がつかなかった。危ない危ない。
ランスさんが手を引っ張ってくれなかったら転んでいたよ。
「どうもです、ランスさん」
「前を見て歩いてくださいよ。貴方が転んだら恥をかくのは近くにいる私なのですから」
…一瞬だけランスさんの優しさに感動をした私がバカだった。
「それよりも、何も買わないんですか」
「…う、うるさいですっ。お金のことを考えると無闇に使えないんです!」
「最悪な客ですね」
わ、私だって新しい服とか買いたいよ!けどね、お値段を見るとダメなんだよ…デパートは高い…。
「ランスさんには分かりませんよ。貧乏人の気持ちが…」
「えぇ、分かりませんね」
「……」
あれ…ここって即答するところじゃないよね。
うぅっ、どこまでも冷たい上司である。
しかし、せっかく給料が入ったのだ。何か買いたいものである。
辺りをきょろきょろと見回す。えーっと、安い店はないかなぁ…
「レイム」
「なんですか」
「小腹がすきました。何か奢りなさい」
「自分で買ってくださいよ!私、お金ないってさっき言いましたよね!?」
後ろを振り返ってランスさんに早口で抗議をする。
こ、この人は…どこまで人をおちょくるんだ!?
「日頃お世話になっている上司に何も奢れないと」
「自分で言うなぁぁ!」
「仕方がありません。自分で買ってきますよ」
やれやれ、といった表情でランスさんは来た道を戻り始めた。
「あぁ、そうでした」
くるり、とこちらを振り返ってランスさんは私を見た。
「あそこのベンチで待っていてくださいよ。迷子になられては困りますから」
私は子供かぁぁ!
去っていくランスさんに私は心の中で思いっきり叫んだのであった。
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