苛立ちを隠しきれません


ご機嫌が悪いのはなぜ?



……気まずい。
目の前からくる視線が痛い。痛すぎる。ついでに正座をしっぱなしなので足も痛い。

「あのぉ、ランスさん?」

恐る恐る顔を上げると明らかにご機嫌斜めのランスさんと目が合った。
ふかふかのソファに足を組んで座っているランスさんが「うるさい」と無言で言葉を飛ばしてきた。

おおう…!凄く怒っているぞ。顔から目を背け、私は考える。
部屋に呼ばれるや、問答無用で正座をさせられて10分ぐらい。
私、何かしたかなぁ…自分じゃあ何もしていないと思っているんだけど…
あっ!もしかしてこの間こっそりランスさんのお気に入りのお菓子つまみ食いしたのバレたとか!?
…いやいや。ランスさんはそんなに心が狭いわけ…あるな。
ひゃあ…どうしよう…!

「レイム。またバカなことを考えていますね」

心の底からうんざりとした声がし、私はそちらを見た。

「まったく。貴方という人は分かりやすい」

「だ、だから!バカバカ言わないでくださいよー!」

なんだよ、この人!人がせっかくあまり使わない頭を使って不機嫌な理由を探しているというのに…!
相変わらず腹がたつ!

「バカをバカと言わずとしてなんと言うのですか」

「いだっ!」

急所にあたった!…じゃなくて!痛いんだけど!
突然ランスさんが私のおでこにデコピンをしてきた。痛すぎる。

両手で押さえながら私は思いっきりランスさんを睨み付けた。

当の本人は何事もなかったような表情をしていたのは言うまでもないが。

「突然何をするんですか、貴方は!?」

「刺激を与えればその使われていない脳みそも活性化するかと思いましてね。どうです?」

「何も変わりませんよ!てか、変わるわけないから!?」

「それは残念ですねぇ。お役にたてなくて申し訳ございません」

わざとらしく詫びるランスさん。
こ、このっ…!どうしてこの人はこんなにも最悪なんだ…!

「で、その脳みそで答えは分かりましたか」

「……」

返す言葉もございません。
ランスさんの考えていることなんて分かるかっ!
ううーっ、唸ってやるとランスさんは勝ち誇った笑みを浮かべた。

「やはり分かりませんでしたか」

「わ、分かる訳ないじゃないですかっ!」

「貴方は私の部下でしょう?分からなければいけないのですよ」

「意味がわからないですよ!?」

「…貴方はどこまで鈍感なのですか」

ふぅ、と息をつくランスさん。
鈍感?何が鈍感なんだ…?
ランスさんの不機嫌の理由が分からないからかな。それだったら分かる訳がない。私とランスさんは上司と部下。それ以上の関係じゃない…ん?それ以上の関係ってなんだ?
自分で考えておきながら…うーむ…

「こら。私を放置するとはいい度胸ですね」

「うはぁい!?す、すいません!」

「なんだかくだらなくなってきました」

すっ、とソファからランスさんは立ち上がると部屋のドアに向かって歩き出す。ドアが開いたところで私は慌てて話しかけた。

「ちょ、ランスさん!?」

「出掛けてきます。まったく、自分がバカみたいですよ…」

そう言葉を残し、ドアが勢いよく閉められた。

……一体なんだったんだ。

「意味わからない…」

じんじんと痺れる両足を楽にさせて私は呟いた。









(意味わからないーっ!)(嫉妬、とは…我ながらバカだと思いますよ)









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