048:いつの間にか、できていた糸


思えばいろいろな事があった、と今なら振り返る事が出来る。
帝国に故郷を壊滅させられ、流れでリターナーに入り。そして帝国を倒す為の目的がケフカを倒す目的へと変わり。
そして今。ケフカを倒し、世界は破滅から明日へと向かう一歩を踏み出している。
1年ほど前の自分が、まさかこんな事に関わる事など想像など出来なかっただろう。現に今だって夢のお話ではないかと思ったりもする物だ。
けれどそう思っても現実なのである。
そう。すべて現実。何度も言うが現実なのだ。
「現実かぁ……」
「てめぇ人の顔をじろじろ見てなんだ」
ぎろり、と横から睨み付けられるがもはやそんな目つきにも慣れてしまった。それだけの時間をこの目の前の男と過ごしているのだ。
ファルコン内にある大きくて座り心地が良い大きなソファに座っている私達はケフカを倒した後、自由気ままに各地を回っていた。
思えばこれも想像できなかった事である。
「いやぁ、現実は何が起こるか分からないなぁって」
「はぁ?」
「例えばさぁ、過去の私がセッツァーと付き合ってるなんて知ったらすっごく驚くと思うんだよねー」
幼少期に両親に語った未来の旦那様像と彼はとてもかけ離れている。いやでもなんだかんだで優しいという部分はあっているかもしれないが。
私の言葉にセッツァーはくくっと小さく笑うと「だろうな、こんな良い男と付き合ってんだからよ」と言ってのけた。
毎度思うがこういう事をさらりと言ってのけるところには感心をする。
「自分で言わないのー。あのね、私が言った意味はね、小さい頃に両親に語った未来の旦那様像とセッツァーが全然違うって事なわけ」
「ほぉ。そいつは気になるな。言え」
「は!?い、言わないし、ってこらっどさくさに紛れて何してる!」
逃げようとした事を察知されてしまい、思いっきり引き寄せられた。
腰に回されている腕を叩くが放れる気配は全くない。
「言ったら放してやるよ」
「お、覚えてない!もう結構前だから覚えてない!」
「…お前本当に嘘をつくのが苦手だよな」
「ふ、ふんだっ、セッツァーと違って正直に生きてるからですよーだ!」
「へいへい。んで、シオン様の未来の旦那様像っていうのはどういうのなんですかねえ?」
にやにやしながら聞いてくるセッツァー。完璧に逃げ場がない。
これは言うまで放す気はなさそうだ。おとなしく白旗を振るしかない…
「……優しくてかっこ良くて安定した収入を得れる人」
「…おい、最初の部分はさておき最後の部分は待て。お前それ何歳の時に言ったんだよ」
「4歳か5歳の時」
「…どんだけませたガキだ」
「何言ってるの。最後の部分が大事じゃん。金がなきゃ生活出来ないでしょ」
言いながら食費なら魔物を食べれば良いよなあと浮かび、そんな自分の考えに逞しくなったものだと感じる。
私の言い分にセッツァーは呆れを含ませた表情を浮かべている。
ほらほら私の未来の旦那様像とセッツァーはこんなにも違う!だから本当にセッツァーのどこに惚れたのか。いまだに謎である。
「まぁでも最初の部分はあってるよな」
「自分で優しくてかっこいいと言うか」
「こんな優しくてかっこいい奴なんざ、世界中どこを探してもいないぜ?」
「そうさらっと言えるセッツァーが凄いよ」
自信たっぷりに言うセッツァーに今度はこちらが呆れる番だ。
…まぁでも優しい部分はあるとは思うけれど。この男、外見とは裏腹に意外と世話焼きだし何より今まで生きてきた道が関係しているのか人の考えだとかを察知するのがえらい早い。
そのせいで私の気持ちなんてすぐバレてしまい、今に至る訳だが。
「そんなところも惚れた部分なんだろ?」
「自分で言うな!……ま、まぁ、否定はしないけど」
ぷいっと視線を逸らしてぼそりと言えばセッツァーはくつくつと笑う。
…ところで素直に言ったのだから放して貰いたいのだが。
「セッツァー、言ったんだから放してよ」
「気が変わった」
「はぁ!?」
「冗談だ。つかまだ俺の話が終わってねぇぞ」
なにそれ、と口を開こうとした時。くいっと顎を掴まれたかと思えば視界いっぱいに整った顔が広がる。間近で見るとやっぱりかっこいいなぁと思ってしまうのは惚れた弱味だろうか。
「安定した収入っつーのはさておき他の部分なら十分だろ?」
「ま、まぁそうだね。その安定した収入っていうのを何とかしてくれたらもっと嬉しいんだけど」
「安心しろ、その部分はそのうち何とかしてやる」
「その言い分で何をどう安心しろと言うのか」
言っている事が滅茶苦茶である。
飛空艇の整備代もあるしやっぱり安定した収入は欲しいところである。しかし空の上にいるのに安定した収入を得るってどうしたら出来るのだろうか…
「まぁ俺に任せておけ」
「……なんだか安心できないけど一応信じてるからね」
どんな手を考えているのか。にやにやしてる顔からは嫌な予感しかしないがまぁここは信じるしかない。信用は出来る男…である。たぶん。
もしかして私はとんでもない男を好きになってしまったのではないか。一瞬だけそんな言葉が浮かんだが後の祭りである。








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