018:光と影は同じ場所に


私が久しぶり(10年以上は久しぶりの次元ではない気もするが)にカインさんを見た時に思った事は「あぁこれがカインさんなんだなあ」だった。
私の記憶の中のカインさんはとても頼もしい存在だったけれどどこか寂しそうな印象があった。その印象はどれだけ月日が流れても忘れられなかった。
あの当時の私はまだ幼かったからどうしてセシルさん達がいるのに寂しそうなんだろうとしか思わず、不思議で仕方がなかった。だから一度だけカインさんに直接聞いた事があった。
その時にカインさんが浮かべた表情は困惑と寂しさに満ちた表情だった。その表情を見て私は理由は分からないがこれ以上言ってはいけないと悟り、カインさんの返答を遮って会話を終了させたのだ。
そしてそのままお別れをしてしまって月日が経ち、歳を重ねた今なら分かる。
だからこそ今のカインさんを見ていてほっとするのだ。
「なぁシオン」
私の目の前に立っているカインさんが魔導船の窓の外へとやっていた瞳を私の方へと向ける。
「なんですか?」とその瞳から眼をそらさずに聞けばカインさんは少しの間の後に言葉を紡ぐ。
「昔、お前がした質問の答えをしていなかったと思い出してな」
お前はもう覚えてはいないかもしれないが、と少しだけ苦笑いを浮かべながら言うカインさんに私は小さく笑う。
「覚えていますよ。我ながら酷い質問をしたなって今なら思います」
「そんな事はないさ。…あの時は答えるのに躊躇ってしまったが、今なら答えられる」
青い瞳が真っ直ぐに私を見つめ、言葉を発する…より先に私は口を開く。
「もう答えなら気付いちゃいましたから大丈夫ですよ」
私が言った言葉にカインさんは一瞬だけ虚をつかれたかの様な反応をする。その反応が何だか似合わなくて思わず声を上げて笑ってしまう。
そんなに笑うんじゃない、と少しだけ怒った口調で言うカインさんにこれはまずいかなと思い笑うのをやめる。
「ごめんなさい、なんだかカインさんらしくないなって思っちゃって」
「まったく…答え合わせは良いのか?」
「えぇ。だって合ってる自信がありますもん」
カインさんの横に並び、顔を上げてにっと笑えばカインさんも釣られるように小さく笑う。
「ねぇカインさん。また質問してもいいです?」
再会をしてからずっと聞きたい事があった。今ならそれを聞く事が出来るだろう。
そう思って聞けば「なんだ?」と穏やかな声音が降ってきた。その言葉に後押しをされるように青い瞳を見つめながら言う。
「今は寂しくないですか?」
目の前にいるのは寂しくなくなったカインさんだけど今の私の目には昔のカインさんが映っている。
頼もしいお兄さんみたいで、だけどふとした時に寂しそうにする人。あのカインさんはまだ寂しそうにしているのだろうか。
私の問いにカインさんはそっと目を閉じる。
そして数秒の後にゆっくりと目を開け、何も言わずに小さく微笑む。
その微笑みを浮かべたのは今のカインさんだったけれど私には昔のカインさんのように見えた。









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